トップ ニュース シドニー・ボンダイビーチ銃撃テロ要点整理 犯人親子の正体とユダヤ人標的の理由、銃を奪った「英雄」
シドニー・ボンダイビーチ銃撃テロ要点整理 犯人親子の正体とユダヤ人標的の理由、銃を奪った「英雄」 2025年12月14日、NFLのニューイングランド・ペイトリオッツ対バッファロー・ビルズ戦の前に、ブラウン大学とオーストラリア・シドニー(ボンダイビーチ)の銃撃事件の犠牲者を悼み、会場全体で黙とうが行われた。(AP通信)
オーストラリアのシドニーにあるボンダイビーチで発生した無差別殺人事件は、同国にとって過去30年近くで最も死傷者の多い銃撃事件となっただけでなく、ユダヤ人コミュニティを明確に標的とした「テロ攻撃」でもあった。多文化主義と厳格な銃規制を誇ってきたオーストラリア社会は、ボンダイビーチに残された血痕とともに、今、厳しい問いに直面している。欧米メディアの間では、「イスラム過激主義が再び台頭するのではないか」との懸念も広がっている。
シドニーのボンダイビーチは、金色の砂浜、日焼けしたサーファー、日焼け止めと海風の匂いが漂う、オーストラリアのライフスタイルを象徴する「絵はがきの風景」として知られてきた。しかし、12月14日の夕刻、その風景は鮮血に染まり一変する。数千人が海沿いの公園に集まり、ユダヤ教の祝祭「ハヌカ(Hanukkah)」初日の点灯式を迎えようとしていたその瞬間、祝祭の場は一転して「処刑場」と化した。
オーストラリア当局はこの事件を「テロ攻撃」と認定し、少なくとも15人が死亡、36人以上が負傷したと発表した。翌15日、国内では半旗が掲げられ、国全体が哀悼に包まれた。この事件は、1996年に発生したタスマニア州ポートアーサー銃乱射事件以来、最も深刻な大量殺戮となっている。
2025年12月14日、シドニーのボンダイビーチで銃撃事件が発生し、救急隊員が負傷者を担架で搬送した。(AP通信)
祝祭が地獄に変わるまでの数分間 14日午後、「海辺のハヌカ(Chanukah by the Sea)」と名付けられたイベントは、和やかな雰囲気の中で進行していた。会場には巨大な燭台が設置され、無料のドーナツを配る屋台や、子ども向けのフェイスペイントを楽しむ家族連れの姿も見られた。地元のユダヤ人社会にとって、この日は「闇の中で光を見出す」ことを象徴する、奇跡と生存を祝う大切な時間だった。
しかし、午後6時47分、黒い服を着た2人の男が会場近くに姿を現す。目撃者がオーストラリアのスカイ・ニュースに語ったところによると、犯人は単に銃を乱射したのではなく、逃げ場のない人々を繰り返し狙い定めるように発砲していたという。「人を的にするように、狙って撃っていた」と証言する声もあるほどだ。
2025年12月14日、シドニーのボンダイビーチで銃撃事件が発生し、警察が直ちに現場周辺を封鎖した。(AP通信) 瞬時に現場は混乱に陥った。オーストラリア・ユダヤ人協会が公開した映像には、銃声が響く中、人々が四散して逃げ惑い、血を流して地面に倒れる姿が記録されている。犠牲者の中で最年少だったのは10歳の少女で、救急車が到着する前に命を落とした。
犯人の正体と見過ごされた警告サイン 警察は現場周辺で容疑者の車両を発見し、車内から複数の簡易爆発装置(IED)を確認した。爆発物処理班が14日夜に緊急対応にあたり、当局は「構造は簡易だが、破壊力は十分にあった」と説明している。もし警察の初動が遅れていた、あるいは爆発が起きていれば、被害は想像を絶する規模に拡大していた可能性がある。
2025年12月15日、シドニーのボンダイビーチで銃撃事件が発生した後、現場を訪れた人々が追悼した。(AP通信) オーストラリア安全保障情報機構(ASIO)のマイク・バージェス長官は記者会見で、容疑者の一人が過去に情報機関の監視対象になっていたことを認めた。ただし当時は「差し迫った脅威」とは評価されていなかったという。2023年10月7日のハマスによるイスラエル奇襲以降、国内で反ユダヤ感情が急速に広がっていた中、情報当局のこの判断ミスは、今後の検証と責任追及の焦点となりそうだ。
銃を奪ったムスリムの「英雄」は誰か オーストラリア放送協会(ABC)の映像や現場証言によれば、銃声が響く中、全員が逃げ惑ったわけではない。地元で果物店を営むアフマド・アル=アフマド氏が、混乱の最中、車の陰から飛び出し、銃撃犯の一人に体当たりしてライフルを奪い取った。
ニューサウスウェールズ州のクリス・ミンズ州首相は「彼は疑いなく真の英雄だ。彼の勇気が、多くの命を救った」と語っている。アル=アフマド氏自身も格闘の最中に銃弾を受け負傷したが、彼の行動は、単純な民族・宗教対立の物語を打ち破った。ムスリムの背景を持つ一般市民が、テロの現場でユダヤ人の隣人を救ったのだ。
広がる反ユダヤ主義の影 アンソニー・アルバニージー首相は事件後の声明で、今回の銃撃を「オーストラリアのユダヤ人を狙ったテロ攻撃」と位置づけ、「ユダヤ人への攻撃は、すべてのオーストラリア人への攻撃だ」と強調した。
一方、シンクタンク「独立研究センター(CIS)」のピーター・クルティ氏は、米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』への寄稿で、「この悲劇は突発的なものではなく、長年の放置の結果だ」と指摘した。ガザ戦争の勃発以降、国内ではユダヤ人コミュニティへの脅迫が相次ぎ、シナゴーグへの放火やユダヤ系商店の焼き打ちが発生してきたという。
2025年12月15日、ボンダイビーチ銃撃事件の翌日、オーストラリアのアルバニージー首相が現場で献花し、警察から説明を受けた。(AP通信) オーストラリア政府は今年8月、イランが背後で関与したとされる放火事件を受け、異例の措置としてイラン大使を国外追放した。しかし、多くのユダヤ系指導者は、日常的な反ユダヤ主義(Antisemitism)への政府対応は依然として不十分だと感じている。イスラエルのギデオン・サアル外相氏も「この銃撃は、過去2年間にわたり反ユダヤ主義が蔓延してきた必然的な結果だ。数多くの警告を受け取ってきたオーストラリア政府は、今こそ目を覚ますべきだ」と厳しく批判している。
(関連記事:
米国の仲介空転か タイ・カンボジア国境衝突激化、トランプ氏の停戦アピールと食い違い
|
関連記事をもっと読む
)
英誌『エコノミスト』は、ボンダイビーチに響いた銃声が、1996年のタスマニア州ポートアーサー銃乱射事件という国民的トラウマを呼び起こしたと指摘する。あの事件を受け、オーストラリアは世界でも最も厳しい銃の買い上げ・規制制度(NFA)を導入し、政府は数十万丁の銃を回収した。
それでもなお、近年の登録銃の総数は1996年当時を上回っているとの指摘がある。今回の事件で、犯人が合法的に6丁もの銃を所持していた事実は、銃規制のあり方をめぐる新たな激しい議論を呼ぶことは避けられない。
2025年12月14日、シドニーのボンダイビーチで銃撃事件が発生し、警察が直ちに現場周辺を封鎖した。(AP通信)
イスラム過激主義は再燃するのか 『ウォール・ストリート・ジャーナル』の社説は、直近24時間だけでも世界各地で流血事件が相次いだことを指摘した。シリアでは「イスラム国(ISIS)」の戦闘員が治安部隊を攻撃し、米国人3人が死亡。米ロードアイランド州のブラウン大学では銃撃事件で学生2人が命を落とした。さらに、ドイツではクリスマスマーケット襲撃を計画したとして5人が逮捕され、米カリフォルニア州でもユダヤ人住宅が銃撃されるなど、テロや関連事件が多発している。
オーストラリアのムスリム指導者である全国イマーム評議会(ANIC)は声明でボンダイビーチの暴力を強く非難したが、多文化社会の表層の下で、地政学的対立がもたらす憎悪が静かに浸透している現実も否定できない。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、「世界的な対テロ戦争は終わったかもしれないが、一般市民を標的とするテロとの戦いは終わっていない」と警鐘を鳴らす。中東に駐留する米兵、欧州に暮らすキリスト教徒、そしてオーストラリアのユダヤ人まで、標的は世界中に広がっているという指摘は、今回の惨劇が決して孤立した事件ではないことを示唆している。
2025年12月15日、シドニーのボンダイビーチで銃撃事件が発生した後、現場を訪れた人々が追悼の花を手向けた。(AP通信) 更多新聞請搜尋🔍風傳媒日文版
最新ニュース
G7+ウクライナのエネルギー部門支援で閣僚級会合 国光彩乃外務大臣政務官が出席 日本外務省は12月12日、国光彩乃外務大臣政務官が「G7+ウクライナ・エネルギー部門支援に関する閣僚級会合」に出席したと発表した。同会合には、G7各国のほか、ウクライナ、欧州諸国、国際機関の代表が参加した。会合では、ウクライナにおけるエネルギー・インフラの維持および復旧を巡る課題について意見交換が行われ、各国の取り組み状況が共有された。参加国は、ウクライナの......
鳥取県、カニと名湯を楽しむ1泊2日のモデルコースを公開 「蟹取県」ならではの冬の魅力を発信 水揚げ量・消費量ともに日本一の「蟹取県」で1泊2日の旅鳥取県は、鳥取砂丘や名峰・大山などの雄大な自然に加え、冬の味覚の王者「松葉がに」や「鳥取和牛」といった美食、歴史情緒あふれる街並みや自然が育む名湯が数多く点在する地域として知られている。カニの水揚げ量や消費量が日本一であることから自らを「蟹取県」と名乗り、秋から冬にかけてカニを目当てに多くの観光客が訪れて......
米国の仲介空転か タイ・カンボジア国境衝突激化、トランプ氏の停戦アピールと食い違い ドナルド・トランプ米大統領は、タイとカンボジアの国境衝突をめぐり「仲介に成功し、数週間に及ぶ対立が停戦で合意した」と対外的にアピールした。だが、ホワイトハウスがその成果を意気揚々と発表して間もなく、タイのアヌティン首相がこれを事実上打ち消す形で、米国に強烈な平手打ちを食らわせた。アヌティン氏は13日午前、SNSを通じて軍事行動の継続を誓うとともに、脅威を排除......
「台湾有事」発言の余波か 岩崎茂氏の台湾・行政院政務顧問起用めぐり中国が制裁 高市早苗首相が国会で「台湾有事」に関連する発言を行ったことを受け、中国が強く反発して複数の対抗措置を取った。台湾メディアはこのほど、中国が圧力をかけ、日本の前統合幕僚長である岩崎茂氏を台湾・行政院の政務顧問から外すよう求めたものの、岩崎氏は引き続き台湾側の政務に関する相談相手を務める意向だと報じた。これについて中国外交部は15日、岩崎氏に対する反制措置を発表......
徐和謙の視点:トランプ文書が示す「世界観」と台湾海峡の行方 2025年初めに再び政権の座に就いたドナルド・トランプ氏は、かつてこう語っている。「第1期は、この国を運営しながら、生き延びることに必死だった。だが第2期は、この国だけでなく、世界を運営することになる」。米東部時間12月4日深夜に公表された、トランプ第2期政権の国家安全保障戦略文書は、まさにその言葉を体現する文書だと言える。米国の国家機構を完全に掌握したトラ......
舞台裏》「秘書費」をめぐり批判噴出 台湾・立法院法案を動かした2人の存在 台湾・国民党の立法院党団は最近、立法院委員(国会議員)に支給される「助理費」(議員秘書・アシスタントの人件費としての公費)をめぐり、流用や不正使用に対する刑事責任を軽くする方向の「除罪化」法案を、陳玉珍氏名義で提出した。これが世論の反発に火をつけ、現職の立委秘書(アシスタント)側からも強い批判が噴き出している。助理費を本来の人件費という枠から外し、実質的に「......
GPT-5.2登場!インスタント/シンキング/プロの3種類、年齢検知と成人モードの違いは? OpenAIがGPT-5.2を正式発表し、ChatGPTが新しい段階に入ったと宣言した。このモデルの調整方向は、専門的な知識作業、複数ステップの推論タスク、企業向けAIエージェントプロセスの需要に明確に照準を合わせている。外部は、この更新を速度と品質の二重競争と解釈し、Google Gemini 3が強力に進む中で技術で先行する位置に戻る意図だとしている。公......
中国が「琉球未定論」を提起、高市早苗首相に反論? 東大教授が沖縄の日本帰属を強調 高市早苗首相は、11月初めに国会で「台湾有事」に関する質問に答える際、「日本はそれを存立危機事態と見なし、集団的自衛権を行使する可能性がある」と発言し、これが日本の軍事介入を示唆していると受け取られ、北京から強い反発を受けた。この発言を受けて、中国は外交戦や経済戦を強化し、さらに「琉球地位未定論」を提起。これは沖縄が日本に属している法的根拠がないという主張で......
7年半で依頼7000件超、「ただ一緒にいる」サービスの実像 森本祥司氏が見た現代日本の孤独 日本外国特派員協会(FCCJ)の図書委員会は11月12日、著書『レンタルなんもしない人のなんもしなかった話』などで知られる森本祥司氏を招いた「ブックブレイク」を開催し、森本氏は「何もしない」という特異なサービスの活動実態や背景にある日本社会の孤独について語りました。イベントの冒頭、司会のハルドゥン・アザリ氏は、森本氏の活動が2020年にテレビドラマ化され国際......
「東京は令和、地方は江戸時代」若年女性が地方を離れる本当の理由とは 「江戸時代」のままの地方と、現代女性のギャップ冒頭、山本氏は現在の地方と都市部の意識差を「東京が令和だったら、地方は江戸時代」という鮮烈な言葉で表現した。現代の女性たちが仕事と家庭の両立やキャリア形成を望んでいるにもかかわらず、地方には依然として「男は仕事、女は家庭」という旧態依然とした価値観が根強く残っている。この意識の乖離こそが、若年女性が地方を見限る根......
米軍、ベネズエラ沖でタンカー押収 トランプ氏、マドゥロ政権にさらなる圧力を予告 米国のトランプ大統領は、米軍が10日にベネズエラ沖で「非常に大きな」石油タンカーを押収したことを報告した。この行動は、ベネズエラのマドゥロ大統領に対する米国の圧力をさらに強化するもので、石油に大きく依存するベネズエラ経済に深刻な影響を及ぼすこととなった。航運情報によると、現在、米国の制裁対象となっている30隻以上の油槽船がベネズエラ沖に停泊しており、これらの......
キヤノン、中国生産から撤退 「史上最高水準」の退職補償が注目集める 日本の大手メーカー、キヤノン(Canon)が中国の生産ラインから撤退するという驚きのニュースが伝えられた。広東省のキヤノン中山プリンター工場が2025年11月21日に正式に閉鎖され、このニュースはすぐに中国のSNSで話題になった。しかし、注目を集めたのは工場の閉鎖そのものではなく、キヤノンが提示した「史上最高の補償金」だった。約1400人の従業員が笑顔で退職......
福島第一原発の廃炉、本格デブリ取り出しまで「12~15年」 保管場所不足に強い懸念 原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)の更田豊志・廃炉総括監は10日、日本記者クラブで会見を行い、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉進捗について語った。更田氏は、燃料デブリの本格的な取り出しに向けた準備工程に「12年から15年かかる」との見通しが東京電力から示されていることに触れ、取り出した廃棄物の保管場所が敷地内で不足する可能性など、今後の課題について強......
鎌倉・建長寺で光とアートが交差 企画展「わたしの輪郭が、やわらかくなる。」12月開催 株式会社ヘラルボニーは、ARu inc.と協働し、東アジア文化都市 2025 鎌倉市実行委員会が主催する企画展「わたしの輪郭が、やわらかくなる。」の企画・運営を担当する。本企画展は、12 月 12 日(金)から 12 月 16 日(火)までの 5 日間催され、歴史的建造物である建長寺 応真閣を舞台に、作家たちの作品と光のインスタレーションが静かに交わり、来場......
TSMC熊本第2工場で「工事停止」 重機撤去の背景にAI需要シフトか 熊本県菊陽町で建設が進む台湾積体電路製造(TSMC)の熊本第2工場は、今年10月に契約締結と着工を完了し、2027年12月の量産開始を予定していた。工場はAIなど高度アプリケーション向けの6ナノメートル製造に特化する計画だった。しかし、『日経アジア(Nikkei Asia)』の報道によれば、同工場の建設工事が最近になって突如停止し、大型建設機材がほぼ撤去され......