トランプ関税は違法か 最高裁判断次第で1000億ドル返還の可能性も

2025-12-17 14:26
2025年12月8日、米国のドナルド・トランプ氏がワシントンのホワイトハウスで発言した。(AP通信)
2025年12月8日、米国のドナルド・トランプ氏がワシントンのホワイトハウスで発言した。(AP通信)

米連邦最高裁は11月から、「ラーニング・リソーシズ対トランプ訴訟(Learning Resources v. Trump)」の審理を開始しており、近く判断を示す見通しだ。この裁判は、トランプ氏が1977年の国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に発動してきた一連の関税措置が、法律および憲法に適合するかどうかを問うもので、結論次第では米国の関税政策全体に重大な影響を及ぼす。

もしトランプ氏の象徴的な関税政策が違法と判断されれば、その波紋は極めて大きい。米政府はこれまでに徴収した約1,000億ドル規模の関税収入を返還する必要に迫られる可能性があり、トランプ政権下で構築された新たな関税体系そのものが崩れることになる。ただし、仮にIEEPAに基づく関税が否定されても、政権側は別の法的根拠を用いて、現行とほぼ同水準の関税収入を確保する余地を残している。米誌『フォーリン・ポリシー』は、司法による一定の歯止めがかかれば、トランプ氏が恣意的に関税を上下させる余地は狭まり、輸入品への過度な追加関税を防ぐ効果はあると分析している。

最高裁が政府敗訴の判断を下した場合、直接影響を受けるのは大きく二つの関税だ。一つは今年4月に初めて導入された「相互関税」、もう一つはカナダ、メキシコ、中国に対して課された追加関税で、フェンタニル密輸や不法移民問題への対応を迫る目的で用いられてきた。さらに、判決文の内容次第では、IEEPAを根拠に課されてきた他の関税にも影響が及ぶ可能性がある。たとえば、ブラジル前大統領ボルソナロ氏のクーデター関与を擁護したとしてブラジルに科した関税や、インドがロシア産原油を輸入したことへの制裁関税などがそれに当たる。IEEPAに基づく関税率は10%から50%まで幅があり、ブラジルとインドにはいずれも50%が適用されているが、多くの国に対する関税は15%以下にとどまっている。

仮にIEEPA関税が撤回されたとしても、他の法律に基づく関税措置は引き続き有効であり、過去数十年の水準と比べれば、米国の平均的な輸入関税は依然として高い水準にある。

トランプ政権の第1期では、1974年通商法301条(Trade Act of 1974)に基づき、中国からの輸入品のおよそ3分の2に25%前後の追加関税が課された。後任のバイデン政権もこの枠組みを大筋で維持し、中国製電気自動車に100%の関税を課すなど、さらなる上乗せを行ってきた。こうした301条関税の多くは現在も存続しており、中国からの輸入品には実質的に50%前後の高関税がかかっている。

たとえ今回の訴訟でトランプ氏が敗訴したとしても、1962年通商拡大法232条(Trade Expansion Act of 1962)という別のカードが残されている。同条は、商務省の調査を経て「国家安全保障を脅かす」と判断された製品に対し、大統領が制限措置を課す権限を認めている。近年、この「国安関税」の対象は大幅に拡大され、自動車や自動車部品、銅、木材、さらには洗濯機や冷蔵庫といった鉄鋼・アルミ製品まで含まれるようになった。今後は半導体や医薬品、重要鉱物なども対象になると見込まれている。実際には、これらの輸入品が米国の国家安全保障を脅かすとは言い難いが、裁判所は政府の主張をほぼ全面的に受け入れてきた経緯がある。議会も大統領権限の制限を試みてきたが、いずれも実現していない。

2025年のデータによれば、通商拡大法232条に基づく関税収入は、IEEPAに基づく関税収入とほぼ同規模に達している。米大統領経済諮問委員会(CEA)のケビン・ハセット委員長は、仮に最高裁がIEEPAの解釈を退けたとしても、トランプ氏はなお他の保護主義的手段を動員できると指摘する。たとえば『1974年通商法122条』は、大統領に最大15%の輸入付加税や輸入枠の設定、あるいはその併用を認めており、これを用いればトランプ氏が問題視する貿易赤字の「穴埋め」が可能だという。122条を適用すれば、15%を超える関税は15%に引き下げられるものの、IEEPA関税の約7割に相当する税収を確保できる計算になる。

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