技能実習制度を廃止、新たに「育成就労」創設へ 人材確保と永住・家族帯同も視野に、外国人受け入れ政策を転換

政府は技能実習制度を廃止し、転籍制限の緩和や永住への道筋を明確化した「育成就労制度」を創設することで、長期的な人材の育成と確保を目指します 。(写真/厚生労働省提供)
政府は技能実習制度を廃止し、転籍制限の緩和や永住への道筋を明確化した「育成就労制度」を創設することで、長期的な人材の育成と確保を目指します 。(写真/厚生労働省提供)

出入国在留管理庁および厚生労働省の資料によると、日本政府は現行の「技能実習制度」を廃止し、新たに「育成就労制度」を創設する方針を固めた。

日本の総人口に占める在留外国人の割合が上昇を続ける中、令和5年末時点で在留外国人数は約341万人に達し、令和6年末には約376万人まで増加すると見込まれている。こうした状況下で、政府は経済社会の活性化や国際化を図る観点から、専門的・技術的分野の外国人労働者をより積極的に受け入れる必要性を強調しており、新制度は従来の名目であった「国際貢献」から、実質的な「人材育成および人材確保」へと目的を抜本的に見直すものである。

新設される「育成就労制度」は、未熟練労働者を3年間で一定の技能水準まで育成することを目的としている。従来の技能実習制度では、技能実習2号終了後のキャリアパスが不明瞭であり、「帰国」が制度上の原則とされていたが、新制度では「特定技能1号」への移行を前提としたキャリアアップの道筋が明確化された。

具体的には、3年間の育成就労を経て、5年間の在留が可能な「特定技能1号」へ移行し、さらに熟練した技能を要する「特定技能2号」を取得することで、在留期間の制限がなくなり、家族の帯同や永住許可への道が開かれることになる。これにより、長期間にわたって産業を支える人材を確保し、地域に根付き共生できる制度を目指す。

新制度における大きな変更点の一つは、転籍(転職)制限の緩和である。現行の技能実習制度では転籍が原則認められておらず、人権侵害や失踪問題の一因と指摘されてきた。

育成就労制度では、同一機関での就労が分野ごとに設定される1年から2年を超えていること、技能検定試験基礎級等および一定水準以上の日本語能力試験に合格していること、そして転籍先が適切と認められる要件を満たしていることを条件に、本人の意向による同一業務区分内での転籍が認められるようになる。また、「やむを得ない事情がある場合」の転籍の範囲も拡大・明確化され、手続の柔軟化が図られる。

受け入れ対象分野については、育成就労産業分野は特定産業分野と原則一致させる方針であり、介護、建設、農業、工業製品製造業などを含む19分野(検討中含む)が設定されている。ただし、特定技能の対象分野であっても、国内での育成になじまない分野については育成就労の対象外とされる。

外国人材の日本語能力向上も重要な要件として盛り込まれた。就労開始までには日本語能力試験(JLPT)のN5等(A1相当)以上、またはそれに相当する講習の受講が必要とされ、特定技能1号への移行時にはJLPTのN4等(A2相当)以上の試験合格が求められる。日本語教育については、入国前の講習に加え、入国後も就労継続中に100時間以上の講習実施などが組み込まれている。

さらに、悪質な送出機関やブローカー対策として、費用の透明化も強化される。外国人が送出機関に支払う全ての手数料等の費用は、就労開始時(1年目)の月給の2か月分を超えてはならないという上限が設定された。

この2か月分はあくまで上限であり、外国人本人の負担は可能な限りゼロに近いことが望ましいとされ、計画認定時には本人負担額と給与額の照合が行われるほか、違反が把握された場合は是正指導や送出国への通報が行われる仕組みが導入される。これらの改革を通じて、日本は「選ばれる国」となることを目指している。

編集:小田菜々香

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