外国人政策を「人口減少時代の要」に 石川智久氏が警鐘 日本は『三つの不在』を克服できるか

人口減少時代を生き抜くためには、外国人政策の「三つの不在」を克服し、共生社会の方向性を明確にすることが不可欠だ。石川智久・日本総研調査部長は会見でそう訴えた。(写真/日本記者クラブ提供)
人口減少時代を生き抜くためには、外国人政策の「三つの不在」を克服し、共生社会の方向性を明確にすることが不可欠だ。石川智久・日本総研調査部長は会見でそう訴えた。(写真/日本記者クラブ提供)

日本記者クラブが10月9日に開催したシリーズ企画「人口減少時代を生きる」第1回で、日本総合研究所調査部長の石川智久氏が登壇し、人口減少を前提とした社会構築の鍵として外国人政策の再構築を訴えた。石川氏は、欧米諸国で出生率低下と移民拡大による社会分断が進む現状を踏まえ、日本でも高度人材を選別的に受け入れ、共生に向けた明確な方向性を示す必要があると指摘。

石川氏は冒頭、岸田政権下で検討された少子化対策に携わった経験を紹介し、世界的に所得上昇とともに出生率が低下し、各国が人手不足に直面している実態を説明。「かつて出生率が高かった米国もいまや1.6、北欧諸国でも1.3台に落ち込んでいる」と述べ、先進国に共通する人材確保競争の激化を強調した。そのうえで「外国人労働者をゼロにすることは現実的ではない。一方でなし崩し的な流入は国家分断を招く」と述べ、選択的な受け入れと適応能力重視の体制を整える必要性を訴えた。

欧米の現状については、移民政策が「誰でも受け入れる寛容型」から「スキル水準・社会統合能力による選別型」に転換していると分析。「米国では高技能労働者を優遇する一方、非正規移民が建設業や農業を支える構造が続き、家族分断問題も深刻化している」と述べた。また欧州でも難民流入が社会不安と極右勢力の台頭を招き、「制度設計を誤れば統合が進まず、政治的亀裂が拡大する」と警告した。

日本の現状については、在留外国人数が静岡県人口に匹敵する377万人に達し、外国人純流入数が出生数の約半分に迫る勢いで増加していると指摘。「もはや『移民政策は取らない』との立場では制度整備が追いつかない」と強調し、日本特有の課題として「方向性の不在」「司令塔の不在」「統計の不在」という『三つの不在』を挙げた。特に所管が省庁横断で統一されておらず、水際対応を担う出入国在留管理庁が生活段階を十分に扱えない点を問題視。「多文化共生庁のような司令塔機能を有し、基本法と基本計画を策定する新たな制度枠組みが必要だ」と述べた。

一方で石川氏は、単なる規制強化や排除に傾くリスクにも触れ、「地方の経済団体では『外国人なしでは企業が回らない』との声も多く、現場感覚との乖離は大きい」と指摘。SNSで過激な意見が拡散しやすい風潮について「イデオロギー対立を煽るのではなく、正確な情報発信と冷静な議論が不可欠だ」とメディアの役割にも言及した。

さらに、外国人労働者の定着後の課題として、教育環境整備の遅れや子どもたちが日本社会に溶け込めないまま就労困難に直面するリスクを挙げ、「日本人も外国人も共に教育機会を保障し、社会統合を支える仕組みを構築すべきだ」と訴えた。

最後に、石川氏は日本の歴史的特徴として「鎖国と開国の間を振り子のように揺れてきた」と述べ、「令和の日本は制御可能な形でオープンさを選ぶべきだ」と総括した。「人口減少時代に持続可能な社会を築くには、外国人と共に生きる国家像を早期に明確化しなければならない」と締めくくった。 (関連記事: 東京で12歳タイ人少女が人身売買被害 母親が台湾で逮捕、風俗店で月60人接客の実態 関連記事をもっと読む

編集:佐野華美

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