中国の最新鋭空母「福建艦」が正式に就役した。国営メディアによると、福建艦は7日、海南島での就役式を経て、中国人民解放軍海軍の新たな主力艦として配備された。式典には習近平国家主席も出席し、近代海軍建設を象徴する節目の出来事として大きく報じられた。
福建艦の就役により、中国は遼寧艦、山東艦に続き、3隻目の空母を保有することになる。専門家は、これにより中国が海上戦力を沿岸防衛から遠洋作戦へと拡大する能力を手にしたと指摘する。一方で、米シンクタンクは「技術的進歩は顕著だが、依然として米海軍には及ばない3つの弱点がある」と分析している。
米通信社APによれば、福建艦は完全自国設計・建造による初の航空母艦であり、習近平政権が掲げる「2035年までの軍事近代化計画」の中核をなす。
China seeks to project power far beyond its coast with the new Fujian aircraft carrierhttps://t.co/vVgfeG1tui
— CTV News (@CTVNews)November 7, 2025
21世紀半ばには「世界一流の軍隊」実現を目指すとされ、この空母の完成は、米国と肩を並べる海軍力構築への重要な一歩と位置づけられている。
CSIS(戦略国際問題研究所)のボリン主任は、「空母は中国が“ブルーウォーター海軍”を志向する上での象徴的存在だ」と指摘する。
電磁カタパルトで次世代型へ 米海軍に迫る新技術
福建艦は、中国初の電磁カタパルト(Electromagnetic Launch System)を搭載した航空母艦である。従来の蒸気式カタパルトではなく、米海軍の最新鋭「フォード級」空母と同様の電磁式発艦システムを採用した点が最大の特徴だ。
これまでの遼寧艦(旧ソ連製)や山東艦(ソ連設計ベース)は、スキージャンプ式の甲板で艦載機を発進させていた。それに対し電磁カタパルトは、艦載機や艦体への負荷を大幅に軽減し、速度制御をより精密に行えるほか、燃料や兵装を満載した重量機も発艦できる。


福建艦は試験航行中に早期警戒機「空警600(KJ-600)」、最新ステルス戦闘機「殲-35(J-35)」、改良型「殲-15T(J-15T)」などの発艦試験を実施し、すべて成功したとされる。これにより、陸上支援に依存せず、第二列島線や外洋での長距離作戦も可能となった。
こうした技術的進化にもかかわらず、中国海軍は依然として米国に大きな差を残している。CSIS(戦略国際問題研究所)中国パワー・プロジェクトのブライアン・ハート副主任は、次の4点を指摘している。
保有数と動力の格差:中国の空母は3隻にとどまり、すべてが通常動力。一方、米国は11隻すべてが原子力空母で、燃料補給をほとんど必要とせず、長期間の連続作戦が可能である。
火力と護衛艦の不足:ミサイル巡洋艦や駆逐艦の数で米国に劣り、空母打撃群を守る防空・対潜支援力が弱い。
ミサイル発射能力:垂直発射システム(VLS)の搭載セル数では米国が依然優勢に立つ。
海外基地網の欠如:米軍が世界各地に燃料補給・航空支援を行える基地網を持つのに対し、中国は同等の拠点を欠いており、長期遠洋展開で制約を受ける。

台湾海峡と第二列島線への波及
ハート氏は、中国が第二列島線に1個または複数の空母打撃群を配備できるようになれば、台湾有事の際に米軍の増援を遅らせる可能性があると分析する。
「中国は空母を使って戦略的な監視範囲を広げ、空・海・水中すべての領域で行動範囲を拡大しようとしている」と語った。
(関連記事: 陸文浩コラム:中国軍・南海艦隊、空母「福建」を中核に戦力披露 | 関連記事をもっと読む )

















































