トップ ニュース 「タブーに切り込む外交改革の必要性」――田中均氏、米国・政治・世論をめぐる外交の軸を語る
「タブーに切り込む外交改革の必要性」――田中均氏、米国・政治・世論をめぐる外交の軸を語る 田中均氏は外交のタブーを問うて、日本の主体性強化を訴えた。(写真:日本記者クラブ)
2025年10月17日、日本記者クラブで『タブーを破った外交官 田中均回顧録』(岩波書店)刊行記念の会見が開かれ、日本総合研究所国際戦略研究所特別顧問の田中均氏が、自身の外交官人生を通じて直面した「米国」「政治」「世論」という三つのタブーの乗り越え方を語った。会見は講演形式で始まり、のちに質疑応答が行われた。
田中氏は、官僚としてのキャリアを振り返り、「過去の方針を無批判に踏襲することへの抵抗感が強く、新たな道を開くべきだと常に考えていた」と述べた。その上で、日米安保再定義や北朝鮮核危機への対応などを例に挙げ、米国を「絶対視せず、日本としての立ち位置を自ら示すことが信頼につながる」と強調した。日米の経済摩擦対応では「アメリカの圧力に屈するのではなく、日本側の不透明性をなくし、言い訳の材料を与えない戦略を取った」と語り、「米国を疑うこと自体がタブー視されていたが、それこそが冷静な外交判断の出発点だった」と述べた。
また、北朝鮮による核危機を経て「日本が戦時に何もできない現実を痛感した」とし、1996年の日米安保共同宣言策定では「米国依存を前提にせず、日本が何を担うべきか憲法の枠内で吟味した」と語った。さらに、小泉純一郎首相の訪朝を巡る米国の反発を振り返り「同盟国の理解を得る過程で、交渉の主体性を示すことが信頼構築につながった」とし、「外交に必要なのは従属ではなく、実行力と責任感だ」と強調した。
二つ目のタブーとして政治との関係に触れ、「官僚は民意を背負った政治家の決定を尊重しながら、プロフェッショナルとして政策の影響を正確に伝えなければならない」とし、小泉内閣期の靖国神社参拝をめぐるやり取りでは「行くなとは言わないが、その後の結果を説明するのが役人の役割だと伝えた」と語った。一方で安倍政権以降の人事支配による官僚組織の萎縮を指摘し、「忠誠心を基準に登用する仕組みは政策の創造性を奪う」と現行体制の問題点を訴えた。
三つ目のタブーである世論については、拉致問題協議後の批判を挙げ、「当時は外交が世論によって左右されるという意識が薄く、説明責任の重みを十分理解できていなかった」と悔いを語った。その上で「世論形成は交渉と同じく戦略を伴うプロセスであり、透明な説明を積み重ねる努力なしに外交は成立しない」と述べた。
会見後の質疑では、日米安保政策をめぐる政党間の連携について問われ、「立場の違いはあっても、政権を担うなら現実的な議論の中で共通点を探るべきだ」と指摘。TPPへの中国参加については「日本が主導権を持てる枠組みなら戦略的テコとなるが、原則を曖昧にしないことが前提」と答えた。
また、トランプ政権への向き合い方に関する質問には、「アメリカ・ファーストのもとで国際規範が崩れる中、日本は自立的なアジア外交を展開し、米国に対して言うべきことを言える立場を確立すべきだ」と強調。「アメリカを喜ばせるための外交ではなく、抑止力の維持や信頼の再構築に必要な材料を日本が提示する姿勢が求められる」と述べた。
さらに今後の政権展望に関する問いには、「高市政権が誕生するとしても、米国への依存だけを強める道は長期的に危うい。アジアにおける自律性を持つ外交を展開しなければ、日本の存在感は低下する」と警鐘を鳴らした。
最後に田中氏は、「外交の現場では、何を考え、どのタブーに挑むかがすべてを決める。過去に囚われず、説明責任と信頼構築を伴う外交を目指すべきだ」と語り、会見を締めくくった。
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