国際詐欺はなぜ摘発し切れないのか AFPが暴いたミャンマー軍政の皮肉な結末――KKパーク摘発が隣接拠点の「採用ラッシュ」を誘発

ミャンマー当局が「KKパーク」で大規模摘発。2,000人超を拘束し、違法な衛星通信機器「Starlink」端末を数十台押収。(AP通信)
ミャンマー当局が「KKパーク」で大規模摘発。2,000人超を拘束し、違法な衛星通信機器「Starlink」端末を数十台押収。(AP通信)
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ミャンマー軍事政権は10月下旬、国内最大級の詐欺拠点「KKパーク」に対して一斉捜索を実施した。中国語圏で「豚仔煉獄」とも呼ばれたこの地域は、東南アジアでも最悪級の詐欺産業の中核とされる。ところが、AFPによると結果は意外な展開となった。壊滅には至らず、むしろ詐欺組織間で“腕の立つ人材”を奪い合う採用ブームが発生。逃げ延びた人々の多くが別組織のスカウトに声をかけられ、無法地帯化するミャンマーでは「犯罪の人材市場」が活況を呈しているという。

数百人の軍と警察が園区へ突入した瞬間、銃声と悲鳴が響き、詐欺工場のキーボード音がかき消された。タイ国境沿いの南東部・カレン州にある「罪の都市」は一夜にして崩壊。タイ政府によると、わずか数日で28カ国から計1500人以上が国境の町メーソート(Mae Sot)に逃げ込み、混乱の中で命からがら脱出したという。

AFPの取材に応じたフィリピン人男性は、10月22日の脱出劇を「全員が一斉に走り出し、今が唯一の逃げ時だと感じた」と振り返る。彼は身の回りの荷物を掴み、親政府系民兵の助けを得て約30人と共に収容施設を脱出。小舟でモエイ川(Moei River)を渡り、タイ側へ逃れたという。

ミャンマー政府がカレン邦ミャワディの「KKパーク」を3日間連続で爆撃し、数千人の中国人と外国人メンバーが逃げ惑い、園区はまるで戦場のようになった。(Xプラットフォーム)
カレン州ミャワディの「KKパーク」で空爆が3日間続き、数千人の中国人や外国人メンバーが避難。園区は戦場さながらの様相に。(写真/X)

AFPによると、タイに逃げ込んだ約1500人のうち、インド人が約500人、フィリピン人が200人を占めた。タイ当局は、真の人身売買被害者と、自ら高収入を狙って詐欺に関わった者をどう見分けるかという難題に直面している。

国際犯罪対策NPO「グローバル・イニシアチブ」の専門家ジェイソン・タワー氏は、掃討前のKKパークには少なくとも2万人の労働者がいたと推計する。その多くが中国人とされ、タイに脱出できた人々は全体のわずか1割にも満たないという。摘発は「終わり」ではなく、犯罪の構造が別の形で再編される「新たな始まり」に過ぎないとの見方が強まっている。

では、残りの1万8000人以上はどこへ消えたのか。

ミャンマー政府が大規模にKKパークを捜索し、2000人以上の容疑者を逮捕し、数十台の違法な「スターリンク」衛星設備を発見。(AP通信)
ミャンマー政府、KKパークを一斉捜索。2,000人以上を逮捕し、違法設置の「スターリンク」端末を多数発見。(AP通信)

7万ドルの人間価格

現地で「自発的労働者」を名乗る中国籍の詐欺師は、暗号化メッセージを通じAFPにこう語った。「10月23日、KKパークから数百人が出てきて、うちの園区に移ってきた」。実際、彼の勤務先は掃討を受けたKKパークから直線でわずか3キロの距離にあるという。

誘引力となっているのは報酬だ。彼によれば、元KK労働者の経験者には月1400ドル(約21万3,000円)を提示するケースがあるという。戦禍と貧困が広がるミャンマーでは破格の水準だ。「道端の詐欺師でさえ新天地に引き取られるし、別の園区が厚遇で迎えることもある。要するに運次第だ」と彼は振り返った。

国際犯罪対策の専門家ジェイソン・タワー氏は、多くの脱出者が業界を離れず、別の犯罪組織に迅速に再雇用(re-recruited)されていると指摘する。「一部はこれを単なる仕事と見なし、新たな詐欺拠点を探しているだけだ」と述べ、職を失った者が“商品”として値を付けられる様子を説明した。

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