トップ ニュース 銀行家の視点:ドラマーから首相へ 高市早苗氏は日本を再び頂点へ導けるのか
銀行家の視点:ドラマーから首相へ 高市早苗氏は日本を再び頂点へ導けるのか 高市早苗氏は「安倍の後継者」と評されるが、現在の日本経済は安倍晋三氏の第2次政権期とはまったく異なる局面にある。サッチャー元首相を敬愛し、「日本を再び頂点へ」をスローガンに掲げる彼女だが、実際の政権運営は理想や情熱だけでは乗り切れない。
大阪の地下バーで、ヘビーメタルバンドがディープ・パープルの《BURN》を演奏している。照明が点滅する中、若い女性ドラマーがリズムを刻む。誰もが驚くだろうが、このロック少女こそ、数十年後に日本の政治の頂点に立つ人物となる。
10月4日、高市氏は元首相・小泉純一郎氏の息子である小泉進次郎氏を破り、自民党総裁に選出された。10月15日の臨時国会で首相指名を受ければ、日本初の女性首相が誕生することになる。右派の「ハードコア」保守として知られる高市氏が政権を担えば、重厚で保守的な日本政治に新しい風が吹く可能性がある。
高市氏は政治家一家の出身ではない。警察官の父と会社員の母のもとに生まれ、報道番組のキャスターとして働いた後に政界入りした。エリート色の薄い経歴は彼女に現実感を与え、議論での率直な発言や強い信念につながっている。安倍氏の直弟子として知られ、「安倍路線を継承するのか」「アベノミクスの三本の矢を続けるのか」が、政権構想の焦点となっている。
しかし、彼女の前に立ちはだかる経済環境は安倍政権当時とはまったく異なる。安倍氏がデフレと闘ったのに対し、高市氏はインフレに直面している。日本の消費者物価指数(CPI)の上昇率は3年連続で日銀の2%目標を上回り、日銀は「超緩和」からの出口を模索中だ。高市氏は選挙期間中、日銀の利上げを「愚かな行為」と批判し、金融引き締めに慎重な姿勢を見せている。財政政策では減税と支出拡大を主張し、財政規律よりも成長を優先する立場だ。
金融緩和と財政出動が同時に進めば、円安が加速し、輸出や株式市場には追い風となる一方で、債券市場には圧力がかかる。すでに高市氏の総裁選勝利を受けて円は下落しており、今後さらなる刺激策が打ち出されれば、インフレ圧力が一段と高まる可能性がある。
安全保障分野では、高市氏は防衛費と技術安全保障投資の大幅拡大を掲げ、自衛力強化のための憲法改正を目指している。経済安全保障担当大臣時代に築いた産業政策の延長として、国家基金を通じて半導体、電池、量子技術、AIなどの戦略産業への投資を進め、政治リスクの低いパートナー国との連携を強化する考えだ。この姿勢は、台湾が進める「レジリエント・サプライチェーン」構想とも共鳴している。
ただし、政権の現実は厳しい。長年連立を組んできた公明党が政権離脱を表明しており、仮に首相に就任しても、少数政権としての船出となる可能性が高い。予算案や法案を通すためには、派閥を超えた協調が不可欠だ。首相交代の頻発する日本政治において、「安倍の後継者」と呼ばれる高市氏であっても、党内掌握力は安倍氏に及ばない。内閣を安定させるためには、理想だけでなく現実的な調整力が問われるだろう。
高市政権のもとで日本経済が信頼を回復し、インフレと成長のバランスを取れるかは依然不透明だ。ただひとつ確かなのは、かつてロックドラマーだった彼女が政治の舞台に立つことで、日本という国のリズムそのものが、もう以前のようには戻らないということである。
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