舞台裏》台湾の守護者か、それとも底なしの金食い虫か? 軍の「台湾の盾」に関する矛盾

2025-11-06 17:10
頼清徳総統は今年の国慶節演説で「台湾の盾」構想を掲げた。(写真/顔麟宇撮影)
頼清徳総統は今年の国慶節演説で「台湾の盾」構想を掲げた。(写真/顔麟宇撮影)
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中国軍の台湾への軍事的圧力が一段と強まる中、頼清徳総統は10月10日の国慶節演説で「台湾の盾(T-Dome)」の構築を宣言した。台湾本島に厳格かつ効率的な防空システムを整備する方針であり、そのための経費は国防部が近く提出予定の「非対称作戦および作戦レジリエンス特別予算」に盛り込まれる。総額は新台湾ドル1兆3,000億元(約6兆3,700億円)に上る見通しだ。あわせて、2026年度の国防予算も9,495億元(約4兆6,500億円)まで増額され、GDP比で3.32%に達する。これまでにない規模の防衛支出に対し、野党・国民党、民衆党陣営は慎重姿勢を崩さず、国民党の鄭麗文主席はすでに反対を明言。計画は立法院での審議をめぐり難航が予想されている。

軍筋によると、「台湾の盾」に必要な建設費はおよそ3,000億元(約1兆4,700億円)で、外部で報じられるほど高額ではないという。構想は、既存の主力防空システムを基盤に、パトリオットIII(MSE拡張型)やNASAMS、国産の天弓(天弓四型)などの新型防空ミサイル、さらに先進レーダーや戦闘指揮システムを統合して、包括的な防空指揮網(IADS)を形成するというものだ。

当局者は一部で「台湾版ゴールデンドーム」と呼ばれている点について、「米国のミサイル防衛構想とは性質が異なる」と強調する。米国のゴールデンドーム構想は、本土を狙う長距離弾道ミサイルや極超音速兵器の迎撃を目的としており、衛星監視や宇宙配備型迎撃技術を含む全く新しい防衛システムだ。これに対し、台湾の盾はイスラエルの多層防空概念を参考に、アロー、ダビデの投石器、アイアンドームのように高度と射程が異なる複数の防空装備を組み合わせる方式で、小型無人機からロケット弾、短・中・長距離の弾道・巡航ミサイルに至るまで、幅広い脅威を階層的に迎撃することを狙っている。

2025年6月18日清晨,以色列鐵穹防空系統攔截伊朗對特拉維夫(Tel Aviv)的導彈攻撃。(美聯社)
台湾の盾は、アイアンドームなど高さ・射程の異なる装備を組み合わせた多層防空を志向。写真は2025年6月、イスラエルのアイアンドームがイランのミサイルを迎撃した場面。(資料写真/AP)

防空兵器は多岐に 統合指揮網の確立が課題

軍の説明によれば、構想に含まれる装備は幅広い。米製のパトリオットII/IIIに加え、追加導入するMSE拡張型やNASAMS、国産の天弓I~III、陸上発射型の剣II防空ミサイル、海軍艦艇のスタンダードII、野戦用の車載アヴェンジャー、双連装スティンガー、要地防空用の三五速射砲、さらに艦艇搭載のCIWS(ファランクス)まで、あらゆる防空兵器を統合指揮下に置く構想だ。

探知・警戒システムの中核となるのは、新竹・楽山にある「鋪路爪」長距離警戒レーダーである。これを頂点に、各防空ミサイルのレーダーや新たに導入されるLTAMDS(低層防空・ミサイル防御レーダー)と連携し、米国製IBCS(統合戦闘指揮システム)の導入によって、台湾海峡一帯の陸・海・空防空レーダー、空中警戒機、長距離レーダーの情報を統合する。これにより、「総合射撃指揮ネットワーク」を通じて、個別部隊が独立して迎撃するのではなく、統一された戦術指揮の下で連携攻撃が可能となる。

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