米国のディック・チェイニー元副大統領が死去　84歳　「最も権力を持った副大統領」トランプ氏への反発も話題に

アメリカの前副大統領ディック・チェイニー（Dick Cheney）氏が84歳で死去した。共和党の代表的なタカ派であり、現代アメリカ史上「最も権力を持った副大統領」と評された人物で、反テロ戦争の総設計者として知られる。家族の確認により、永遠の眠りについたことが明らかになった。

ネブラスカ州出身のチェイニー氏は、ジョージ・W・ブッシュ（George W. Bush）政権で2期にわたって副大統領を務めた。ホワイトハウス入りする以前からすでにワシントン政界で重要な地位を占めており、ワイオミング大学で政治学修士号を取得後、ウィスコンシン大学で政治学博士課程に進学した。インターン時代、当時国防長官だったドナルド・ラムズフェルド（Donald Rumsfeld）氏に見いだされ、特別補佐官として登用。1971年にホワイトハウス入りし、ジェラルド・フォード（Gerald Ford）政権下ではラムズフェルド氏の後任としてホワイトハウス首席補佐官に就任した。

その後、連邦議会に転じ、10年間にわたりワイオミング州選出の下院議員を務めた。ジョージ・H・W・ブッシュ（父ブッシュ）政権発足後には国防長官としてホワイトハウスに復帰し、4年間その任にあたった。ブッシュ政権退陣後は政界を離れ、民間企業やシンクタンクで活動。特にエネルギー関連大手「ハリバートン社」の最高経営責任者（CEO）として長年にわたり経営に携わった。 （関連記事： 米国3州の地方選挙でトランプ氏焦燥　バージニア州・ニュージャージー州の結果が2期目政権の試金石に ｜ 関連記事をもっと読む ）

転機が訪れたのは2000年。共和党予備選を勝ち抜いたジョージ・W・ブッシュ氏が、チェイニー氏に副大統領候補としての就任を強く要請した。当時59歳だったチェイニー氏は、心臓疾患の治療を受けながらも度重なる説得に応じ、副大統領候補として出馬。ブッシュ氏とともに民主党候補アル・ゴア氏を僅差で破り、ホワイトハウス入りを果たした。

就任から間もなく、世界の運命を変えた2001年9月11日の同時多発テロが発生。ニューヨークの世界貿易センターが攻撃された当日、チェイニー氏はホワイトハウスで陣頭指揮を執り、国防長官ラムズフェルド氏とともに「対テロ戦争」の戦略を立案。以後、彼は「タカ派副大統領」としてのイメージを決定づけた。イラク戦争が長期化し、国内経済に影響を及ぼした後には、反戦派から強い批判を浴びることもあった。

2期8年にわたる副大統領職を終えた後は政界を引退し、東部バージニア州で妻リン（Lynne）氏と共に静かな生活を送った。二人の間には娘が二人おり、次女のメアリー（Mary）と、近年大きな政治的波紋を呼んだリズ・チェイニー（Liz Cheney）である。

長年にわたり共和党の重鎮であり、筋金入りの保守派として知られたチェイニー氏だったが、晩年には驚くべき政治的決断を下した。トランプ（Donald Trump）氏への嫌悪から彼を「臆病者」と批判し、2024年の大統領選では、娘リズ氏が民主党副大統領カマラ・ハリス（Kamala Harris）候補への支持を表明したのに続き、自らも民主党陣営に投票したと明言した。しかし結果はチェイニー氏の思惑通りにはならず、トランプ氏が圧勝を収めた。

チェイニー氏は生涯にわたり心血管疾患に苦しみ、複数回の心臓発作を経験。2012年には心臓移植手術を受け、その後も長年にわたり公の場に姿を見せていたが、最期は静かにその生涯を閉じた。

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編集：柄澤南 （関連記事： 米国3州の地方選挙でトランプ氏焦燥　バージニア州・ニュージャージー州の結果が2期目政権の試金石に ｜ 関連記事をもっと読む ）

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