2025年10月14日夜、東京・有楽町の外国特派員協会(FCCJ)で、アソシエート・メンバーズ・リエゾン・コミッティー(AMLC)主催のダイニングイベント「The Art of Interviewing, the Do’s and Don’ts(インタビューの心得と禁じ手)」が開催された。
パネルには『ニューヨーク・タイムズ』のリバー・デイビス(River Davis)氏、『フィナンシャル・タイムズ』のハリー・デンプシー(Harry Dempsey)氏、作家でジャーナリストのロバート・ホワイティング(Robert Whiting)氏が登壇し、『日経アジア』オピニオン編集者のアンディ・シャープ(Andy Sharp)氏が司会を務めた。
AI時代における「人間らしい質問力」
冒頭、リバー・デイビス氏は「AI時代においても、人間の要素がインタビューには欠かせない」と強調した。「質問の“間”が重要であり、沈黙を恐れないことが相手の本音を引き出す鍵だ」と語り、「AIは情報を要約できても、人の心を読み取ることはできない。記者という職業の価値は“人間理解”にある」と述べた。
英国と日本の取材文化の違い
続いて、ハリー・デンプシー氏は英国と日本の報道文化の違いを分析した。「ロンドンでの取材はアグレッシブだが、日本では事前に質問を送る文化がある。どちらにも利点があるが、準備しすぎると柔軟さを失う」と指摘。また、「英語と日本語ではインタビューの支配構造が変わる。相手がよりリラックスする言語で話すことが大事だ」と述べた。
「正直であることが信頼を生む」ロバート・ホワイティング氏
ホワイティング氏は自身の半世紀にわたる取材経験をもとに、「正直であることが最良のポリシー」と語った。1970年代から日本のスポーツ界や裏社会を取材してきた経験から、「相手を尊重し、すべてを知った上で質問することが信頼を生む」と述べた。イチロー選手との取材エピソードや、裏社会関係者とのやり取りを紹介し、「何を掲載し、何を掲載しないかの判断は常に難しい」と振り返った。
ジャーナリズム倫理と翻訳の壁
パネル後半では、学生からの質問をきっかけに、ジャーナリズム倫理の四原則「真実を報告する」「害を最小限にする」「説明責任を果たす」「独立性を保つ」が議論された。デイビス氏は「インタビューでは真実を伝えながらも、相手の人生に影響を与える可能性を意識しなければならない」と述べ、デンプシー氏は「政治家や経営者だけでなく、一般人への取材には特別な配慮が必要だ」と指摘した。
翻訳に関する課題にも話が及び、デンプシー氏は「バイリンガル環境では“元気”ひとつの言葉の訳にも苦労する。言葉の感情的ニュアンスを伝えるのが記者の腕の見せどころだ」と述べた。
「人間を理解することが最良のストーリーを生む」
セッションの締めくくりに、ホワイティング氏は「取材対象を人間として理解することが、最良のストーリーを生む」と語り、聴衆から大きな拍手が送られた。司会のシャープ氏は「三氏の話から、インタビューとは技術であり同時に“人間理解の芸術”であることが伝わった」とまとめ、約90分にわたる議論を締めくくった。
編集:梅木奈実 (関連記事: 高市政権下の日本経済と市場をめぐる展望 「タカイチノミクス」の行方を専門家が分析 | 関連記事をもっと読む )
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