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「民主党は弱腰だ」新市長マンダニ氏が勝利演説で痛烈批判 バイデン主義の終焉象徴か マンダニ氏の選挙ポスターに彼の政治スローガン「ニューヨーカーが生きられるように!」(写真/zohrankmamdani/Instagram提供)
米国の民主党は11月4日の地方選挙で圧勝した。なかでも最も注目を集めたのはニューヨーク市の結果である。南アジア系ムスリムで民主社会主義者のゾーラン・マンダニ氏(34)が、市長選で圧倒的な勝利を収めた。勝利演説でマンダニ氏は、矛先を自らの所属する民主党指導部に向け、「彼らは無力である」と痛烈に批判したことが話題となった。
米政治専門誌「ポリティコ 」と「ザ・ヒル 」は、この発言が民主党支持層からの明確なメッセージを示していると報じた。すなわち、有権者はジョー・バイデン前大統領が掲げた懐古的な「正常への回帰」政治にうんざりし、むしろ既存秩序を覆す急進的な変革を選んだ、ということである。
しかし、こうした立場は民主党主流派の不安をかき立て続けている。彼らは、マンダニ氏に貼られた「極左」というレッテルが、全国の激戦州で党の選挙戦を不利に導くのではないかと懸念しているのである。急進的な左派と中道派の路線対立は、民主党の将来像やトランプ氏に対抗する戦略に大きな疑問符を投げかけている。
マンダニ氏の台頭、「バイデン主義」の終わりを象徴 米政治専門誌「ポリティコ」は、今回の地方選挙で民主党が圧勝した背景について、表面的にはトランプ政権への反発に見えるものの、実際にはジョー・バイデン前大統領の政治路線に対する否定でもあると分析している。なかでも、南アジア系ムスリムで民主社会主義者のゾーラン・マンダニ氏(34)がニューヨーク市長に当選したことは、「バイデン主義(Bidenism)」の終焉を象徴する出来事と位置づけられている。
マンダニ氏は6月の予備選で、かつて名を馳せたアンドリュー・クオモ元州知事を軽々と退けた。外部団体や富豪による激しい妨害にもかかわらず、得票率は50%を超え、クオモ氏に9ポイント差をつけて勝利。共和党候補のカーティス・スリワ氏は7%にとどまった。また、200万人を超えるニューヨーク市民が投票に参加し、数十年ぶりの高水準を記録した。マンダニ氏の勝利は、穏健路線に飽きた民主党支持者が、もはや「過去の正常」への回帰を望まず、体制を揺るがすような急進的政治を選び始めたことを示している。
「ザ・ヒル」が引用した複数の世論調査によれば、民主党支持者の自党への不満度は、共和党支持者のそれを上回っている。「ポリティコ」は、過去10年間、民主党が「アメリカはすでに偉大だ。トランプこそ歴史の過ちだ」という自己満足的なスローガンに浸ってきたと指摘。2019年にバイデン氏が大統領選に出馬した際、トランプ政権を「歴史の異常」と位置づけ、ワシントンを「トランプ以前の常態」に戻すと訴えた。
しかし「ポリティコ」は、バイデン氏の政治的ビジョンを「陳腐で懐古的」と評している。彼は自らを新たなフランクリン・ルーズベルトに重ね、トランプ氏を「建国の父ジョージ・ワシントンへの侮辱」と断じたが、選挙戦略では「アイデンティティ政治」に傾倒し、有権者を人種・性別・性的指向で分類、対応する属性の代表を前面に立てる手法をとった。その結果、生活費高騰という最も切実な問題を軽視し、選挙で大敗、トランプ氏の政界復帰を許す結果となった。
2025年1月20日、トランプ氏が米国大統領に就任し、宣誓後にバイデン前大統領と握手を交わした。(写真/AP通信提供)
マンダニ氏の強烈な批判、「民主党指導部は弱腰」 米紙「ザ・ヒル」は、マンダニ氏の勝利を「無名からの急伸が頂点に達した出来事」であり、左派にとって過去最大の成果である一方で、民主党内のすでに激しい内紛をさらに深めたと評している。
マンダニ氏は勝利演説でトランプ氏を「独裁者」と呼び、矛先を党の旧来指導部や中道派に向けた。彼らを「企業寄り(corporatist)で、軟弱(feeble)である」と痛烈に批判し、自身の市政は「臆病さの言い訳の山」ではなく「大胆な構想」に基づくべきだと主張した。さらに「慣例がわれわれを縛ってきた。慎重さという祭壇の前で頭を垂れ、大きな代償を払ってきた。多くの労働者階級は党内に自分の居場所を見いだせず、あまりに多くの人々が置き去りにされた理由を求めて右派へ向かった」と述べた。
そのため同氏の公約は急進的改革、さらには「共産」色を帯びると受け止められている。中核は「負担可能性」であり、5歳未満児の保育無料、バス無料、家賃据え置きの安定化住宅や家賃凍結などを掲げ、財源は法人課税と富裕層課税の強化で賄うとしている。外交・国際問題では親パレスチナの立場から、ガザにおけるイスラエルの行動を「ジェノサイド」と断じ、就任後にネタニヤフ首相がニューヨーク市域に入れば、国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状に従い拘束に全力を挙げると公言した。
これらの立場により、民主党の体制派は同氏と距離を置いている。上院民主党のシューマー院内総務はマンダニ氏支持を表明せず、市長選で誰に投票したかも明かしていない。下院民主党のジェフリーズ院内総務も、投票前日にようやく生ぬるい支持を示したにとどまった。指導部とその周辺は、マンダニ氏の左派ブランドが党全体の象徴として受け止められることを警戒しているのである。
民主党の内戦、左翼は最後まで笑うことができるか? 米紙「ザ・ヒル」は、マンダニ氏がニューヨーク市で勝利したとはいえ、民主党の中道派は、党内左派の勢いがマンハッタンやブルックリンといったリベラルの牙城ほどには全米各地で再現できないと見ている、と報じた。とりわけ接戦区や激戦州では惨敗の恐れがあるとの懸念が強く、民主党が一段と手痛い敗北を喫する可能性を指摘する声も出ている。トランプ氏も同様の見方を示唆しており、9月29日のソーシャルメディア投稿で「マンダニの勝利は、わが偉大な共和党にとって史上最高の出来事の一つとなるだろう」と記した。
「ポリティコ」も、マンダニ氏の勝利が大多数の民主党候補にとって容易に追随できるものではないと論じる。ニューヨークという“ビッグアップル”を統治する重責は並大抵ではなく、同氏の経済・外交観が主流を突き崩したとしても、まもなく市長としての実行力が厳しく試されるという見立てである。ニューヨーカーは生活コスト、生活の質、公共安全といった課題での具体的行動を強く求めており、これらは民主党の古参にも難題であった。
他方で、マンダニ氏の台頭は他の進歩派をさらに鼓舞するとみられる。たとえば、2028年大統領選を視野に入れるニューヨーク選出のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス氏である。一方、党内の穏健派も独自のかたちで「バイデン主義」との距離を取りつつある。バージニア州とニュージャージー州では、穏健路線を掲げる知事候補が勝利した。バージニア州で同州初の女性知事に選ばれたアビゲイル・スパンバーガー氏は、かねてバイデン氏への辛口批判で知られる。ニュージャージー州の知事当選者ミキー・シェリル氏は、ナンシー・ペロシ前下院議長と公然と対立してきた人物である。スパンバーガー氏は勝利演説で「バージニアは党派対立ではなく実用主義を選んだ」と強調し、「分断をあおるのではなく、問題解決に注力する」と誓った。
今回の民主党の勝利は大きな象徴性を持つ半面、党内対立の種もまいた。いずれもトランプ氏に打撃を与え、「バイデン主義」を乗り越えようとする点では一致するが、「急進」「実用」「温和」という路線をめぐる争いが、民主党の行方に大きな疑問符を投げかけているのである。
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