台湾も学ぶべきか？フィリピン軍が大規模演習を開始──「30日間、自力で持ちこたえられるか」米軍到着前の試練

フィリピン軍（AFP）は、今年最大規模の合同軍事演習を開始した。目的は、自国の防衛力を高めるとともに、新たに導入された指揮体制の有効性を検証することにある。だが、この演習の核心は「米軍の支援が到着するまで、フィリピン軍が単独で少なくとも30日間戦い抜けるか」を試す点にある。マニラは、敵の多様な攻撃シナリオを想定し、外部からの紛争に備えようとしている。

今回のフィリピンの演習には、二つの前提がある。想定される敵は南シナ海の領有権をめぐって対立する中国、そして援軍として想定されるのはアメリカだ。

参謀総長ロメオ・ブラウナー・ジュニア氏は、演習（名称「AJEX Dagit-PA 09-2025」）について「陸・海・空の三軍を結集し、国家として自立した防衛能力を鍛えることが目的だ」と説明した。米国、オーストラリア、日本などとの協力を進める一方で、最終的に国を守るのは自国軍であると強調する。

ブラウナー氏によれば、「30日間の自立防衛」構想はフェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領の指示によるものだという。「大統領は、我々に20〜30日間の独立戦闘能力を持つよう命じた。まず自分たちの力で持ちこたえることが前提だ」と述べた。

また、米比間で締結されている「相互防衛条約（MDT）」についても言及。「フィリピンが武力攻撃を受けた場合、米国が防衛に加わることが明記されている。しかし、支援が到着する前に、我々自身が初期段階の戦闘に耐えうる体制を整えておく必要がある」と語った。

今回の「AJEX Dagit-PA 09-2025」は11月4日から14日まで、ルソン島とパラワン島各地で実施される。陸・海・空・海兵隊が参加し、連携した統合作戦を実施。10日間にわたる演習では、外部の脅威に対する迅速な対応力を養うことが狙いだ。 （関連記事： フィリピン・セブ州、台風25号（カルマエギ）により90人超の死者　豪雨・洪水の衝撃映像も ｜ 関連記事をもっと読む ）

さらに、今年は新たに創設された「戦略指揮部」が初めて投入される。国家危機時には作戦全体を統括し、従来のような指揮系統の混乱や命令の重複を防ぐ役割を担う。将来的にはこの部門が戦時の中枢機能を果たし、参謀総長や大統領が戦略判断に専念できる体制を整える方針だ。

また、海岸警備隊や国家警察、予備役部隊も加わり、危機対応を含む総合防衛体制を強化。制服組全体での協働性と即応力を高めることを重視している。

南シナ海では、中国が軍事拠点化を進め、2016年の国際仲裁裁定を無視して活動を拡大している。ブラウナー氏はこの状況を「すでに一種の戦争状態」と表現。「中国はミサイルや銃を使わずとも、誤情報を流し、威嚇や領域侵犯を繰り返している。我々の排他的経済水域（EEZ）を脅かす行為は、すでに戦争の一形態だ」と語った。

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​編集：田中佳奈

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