オーストラリアのデザインソフト大手Canva(キャンバ)が、大規模な組織再編に乗り出した。今回の再編の影響を受けるのは1271人で、全従業員の22%に相当する。一部は職務変更や拠点の移転対象となり、退職する従業員もいる。
数億人のユーザーを抱えるオンラインデザインプラットフォームは、創業以来最も厳しい成長局面を迎えている。人工知能(AI)関連の開発・運営コストが膨らむ一方、ChatGPTやGeminiなど生成AIツールとの競争も激化している。Canvaは売上高の成長見通しを下方修正しており、組織体制を全面的に見直すことで競争力の維持を図る。
共同創業者で最高経営責任者(CEO)のメラニー・パーキンス氏(Melanie Perkins)は従業員に宛てた書簡で、同社が過去13年にわたり成長を続け、ピッチ資料に描いた起業の夢を、世界で数億人が利用するデザインプラットフォームへと成長させてきたと振り返った。その一方で、これまでの成功が今後も同じ成長ペースを保証するものではないと述べた。
パーキンス氏は「この13年で、私たちはピッチ資料に描いた夢を、数億人が使うプラットフォームに変えた。それは、この歩みに加わってくれた一人ひとりの才能、想像力、そして努力のおかげだ」とつづった。
さらに同氏は、Canvaが創業以来最も厳しい1年を迎えていると認め、「これまでの成功が、次の成長段階での成功を保証するわけではない。今年は私たちにとって、これまでで最も困難な1年だ。今年初めに皆さんに説明したとおり、当社の成長は10年ぶりに鈍化した」と明らかにした。
プロダクト・グロース・プラットフォームの各チームを統合
成長の勢いが弱まるなか、Canvaは社内組織を再編し、プロダクト、グロース(成長)、プラットフォームの各チームを統合する。部門間のコミュニケーションの壁を減らし、意思決定と実行のスピードを高める狙いだ。
あわせて「職務の過度な細分化」も見直す。今後、一部の従業員は高度に専門化した単一の職務だけに専念するのではなく、より幅広い領域で責任を担う可能性がある。

ChatGPTの画像生成機能「DALL-E」で生成された画像。(AP通信)
組織と人員の見直しに加え、Canvaは対面での協働も強化する。2027年1月から、多くのハイブリッド勤務の従業員に対し、週2~3日程度の出社を求める方針だ。対面での連携を増やすことで、よりスリムで部門横断的な協力体制を備えた運営モデルの構築を目指す。
Canvaは近年、AI技術への投資を積極化し、自社開発の画像生成モデルやビジョン・言語モデルなどAIモデルの提供も始めている。外部のモデル提供企業への依存を抑え、自社サービスへのAI機能の統合を進める狙いがある。
一方で、自社AIの開発やAI機能の提供には多額のコストがかかる。AI機能の提供コストが想定以上に膨らんだことなどを受け、Canvaは2026年の売上高成長率見通しを従来の30%から20%に引き下げた。
AIでデザインの技術的ハードルが大幅に低下
自社のAI開発コストが増える一方、CanvaはAIスタートアップや汎用型チャットボットとの競争にもさらされている。
OpenAIのChatGPTやGoogleのGeminiはすでに画像生成機能を備えており、ユーザーは自然言語で指示するだけで、ポスターやプレゼン資料などのビジュアル素材を短時間で作れるようになっている。
こうしたツールはデザイン作業の技術的なハードルを大きく引き下げ、これまで専門のデザインプラットフォームを使っていた一部の作業も、AIで直接こなせるようになりつつある。
こうした競争環境の中、Canvaは自社AI機能の開発を進めながら、開発・運営コストの抑制や人員配置、製品開発体制の見直しを進めている。
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編集:梅木奈実 (関連記事: AIが招く大量失職の危機、OpenAIが「富裕層課税」を提言 ビル・ゲイツ氏の「ロボット税」が再浮上 | 関連記事をもっと読む )
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