中国が記録的なペースで金を買い進めており、国際的な金価格の重要な下支え要因となっている。中国政府が米ドルへの依存度を継続的に引き下げる一方、国内の家計や個人投資家も景気低迷を背景に、安全資産として金を選好している。
ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント(State Street Investment Management)の金戦略責任者、アーカーシュ・ドーシ(Aakash Doshi)氏は米CNBCに対し、こうした強い需要が金価格を2027年3月末までに1オンス当たり4750~5500ドルの水準へ押し上げる可能性があるとの見方を示した。この予測は、金価格が2026年9月に8%超下落し、約4176ドルまで調整した後に示された。金価格は2026年1月に一時5500ドルを超える水準まで上昇していた。
2026年1~8月の中国金輸入、1000トンを突破
データによると、中国は2026年1~8月に1000トンを超える金を輸入し、輸入額は約1588億ドルに達した。すでに2025年通年の輸入量886トン、輸入額965億ドルを上回っている。
中国国内の金価格が国際価格を上回っていることについて、ドーシ氏は「冬場の季節需要が強いことを示している」と指摘した。
中国人民銀行(中央銀行)は2026年9月に約23トンの金を買い増した。単月としては過去3年間で最大の増加幅で、23カ月連続の買い増しとなった。
オランダ・ING銀行のコモディティ・ストラテジスト、エワ・マンセイ(Ewa Manthey)氏は「中国の買いは金価格にとって重要な構造的下支え要因となっている」と指摘。中央銀行による金保有は通常、長期的な視点に基づくため、一般投資家に比べて価格変動への感応度が低いと強調した。
スイスのジュリアス・ベア(Julius Baer Group)のアナリスト、カーステン・メンケ(Carsten Menke)氏は、中国政府が金を買う背景について、「米ドルの兵器化への警戒と、外貨準備資産としての米国債への依存を低下させること」が中核的な理由だと分析している。
2022年にロシア中央銀行の海外資産が凍結されたことは、海外に保有する資産の脆弱性を浮き彫りにし、国内で金を保有することの魅力をさらに高めた。
米財務省のデータによると、中国が保有する米国債は2026年7月に6180億ドルまで減少し、18年ぶりの低水準となった。
公式な金保有量は世界5位 それでも米国の3分の1未満
公的部門による買いに加え、中国の民間需要も依然として旺盛だ。不動産市場の長期低迷や株式市場の不振、さらに預金金利や債券利回りの低下が重なり、家計にとって魅力的な貯蓄・運用先の選択肢が限られている。
サクソバンク(Saxo Bank)のコモディティ戦略責任者、オーレ・ハンセン(Ole Hansen)氏は「中国で金を保有する機会費用は、多くの欧米市場と比べてはるかに低い」と述べている。
メンケ氏は、2026年1~8月の中国人民銀行による実際の金購入量は約190トンに達し、このうち約110トンは公式統計に表れていない可能性があると推計している。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)のデータによると、8月時点の中国の公式な金保有量は2387トンで世界5位となっているが、それでも米国の金準備の3分の1未満にとどまる。
こうした中国の買いは、米国債利回りの上昇に伴う金価格への下押し圧力を和らげる役割も果たしている。一般に、金利や債券利回りが上昇すると、利息を生む資産の魅力が高まり、利息を生まない金の価格には下押し圧力がかかりやすい。
ハンセン氏は、中国の不動産市場や株式市場が明確に回復した場合や、人民元安、国内金利の上昇が進んだ場合には、民間の金需要が弱まる可能性があると指摘する。
ただ、より大幅な価格調整が起きるには、中央銀行による外貨準備の多様化への関心が明確に低下し、地政学的な緊張も和らぐ必要があるとの見方を示し、「現時点では、いずれも近く実現する兆しはみられない」としている。
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