中国人民解放軍の公式アカウントは2026年10月30日、ステルス偵察・攻撃型無人機「攻撃21(GJ-21)」がこのほど、076型強襲揚陸艦「四川」(艦番号51)で初の発着艦に成功したと発表した。
しかし、米軍事メディア『ザ・ウォー・ゾーン(The War Zone)』と米航空メディア『ジ・アビエイショニスト(The Aviationist)』は、発着艦の様子を示す公式映像は現在まで公開されていないと報じている。『ザ・ウォー・ゾーン』はさらに、試験がいつ、どこで行われたのか、発着艦が何回実施されたのかについても明らかになっていないと指摘した。
解放軍側は何を発表したのか
『ジ・アビエイショニスト』によると、人民解放軍の公式アカウント「中国軍号(China Military Bugle)」はXへの投稿で、「攻撃21」を中国初の「艦載型ステルス偵察・攻撃型無人機」と位置付けた。
また、今回の発着艦について、中国の強襲揚陸艦開発における「さらなる重大な突破」であり、中国海軍が大型の海上作戦プラットフォームから固定翼ステルス無人機を運用する能力を備えたことを示していると主張した。
投稿ではさらに、「四川」が自動着艦誘導システム、新型の統合電力システム、電磁式カタパルト、アレスティング・ギア(着艦制動装置)を備え、固定翼無人機、ヘリコプター、水陸両用装備を運用できるとしている。
この情報は新華社通信や『環球時報』が先に報じ、その後、中国国防部(国防省)や人民解放軍の公式アカウントも発表した。
『ザ・ウォー・ゾーン』によると、現在まで「攻撃21」の試験の様子を示す公式写真や動画は公開されていない。発着艦がいつ、どこで実施されたのかについても、中国の国営メディアは説明していない。
「攻撃21」が陸上基地から離陸する様子はこれまでに撮影されているが、「四川」での実際の発着艦を視覚的に確認できる資料は、現時点で公開されていない。10月上旬には、「攻撃21」が「四川」から発進したとの未確認情報もソーシャルメディア上で流れていた。
『ザ・ウォー・ゾーン』が米プラネット・ラボ(Planet Labs)の衛星画像を確認したところ、「四川」は10月13日時点では上海の滬東中華造船所の岸壁に停泊していたが、4日後にはその場所から姿を消していた。出港時期は明らかになっておらず、造船所に戻ったのは10月26日ごろとみられている。
「攻撃21」の艦載化に向け進められてきた試験
『ジ・アビエイショニスト』は、「攻撃21」のベースとなった陸上型GJ-11が2019年の軍事パレードで初めて公開され、2025年11月には公式映像でJ-20(殲20)、J-16(殲16)戦闘機とともに飛行する様子が初めて公開されたと報じている。
『ザ・ウォー・ゾーン』は、中国航空機研究者のアンドレアス・ルプレヒト(Andreas Rupprecht)氏の見解を引用し、2025年9月の軍事パレードでは2機の「攻撃21」が展示され、同機は2025年半ばに中国海軍で運用入りしたとされていると伝えた。
さらに同年後半には、中国海軍が黄迪村に設けている陸上試験施設で、電磁式カタパルトによる模擬発進と、アレスティング・ギアを使った模擬拘束着艦の試験が行われたとされる。
2025年10月には、「四川」の甲板上に赤い荷重試験用車両が置かれた写真がインターネット上に出回り、カタパルト試験が始まったことを示すものとみられた。その後、「四川」は2025年11月に初めて出港した。
2026年2月には、「攻撃21」のモックアップが飛行甲板上に現れ、左舷側のエレベーターを使って格納庫階へ降ろされる様子も確認された。ルプレヒト氏は当時、この時初めて同機の主翼を折り畳んだ状態が外部から確認されたと指摘していた。
『ザ・ウォー・ゾーン』はさらに、その後の衛星画像で飛行甲板に新たな標示線が追加され、10月30日の画像では3本のアレスティング・ワイヤー用の取り付け設備が明確に確認でき、その位置は中国側が示している図とも一致すると報じた。
『ジ・アビエイショニスト』によると、人民解放軍の公式アカウントは7月5日、「四川」の飛行甲板の標示線が完成し、電磁式カタパルトとアレスティング・ギアの設置も完了したとしていた。
今回、中国側が「四川」で「攻撃21」の発着艦を実施したと公式に認めたのは初めてとなる。
艦載無人機は解放軍に何をもたらすのか
『ザ・ウォー・ゾーン』は、「四川」が電磁式カタパルトを備えた大型艦であり、現在世界で就役している他の大型強襲揚陸艦には見られない特徴を持つと指摘している。
同メディアは過去の分析を引用し、この種の艦艇がGJ-11系統の無人戦闘機を発進・回収できれば、海上打撃から情報収集・警戒監視・偵察(ISR)まで幅広い任務を遂行できる可能性があると分析している。
また、こうした無人機を搭載することで、空母打撃群の航空戦力を量的に補完し、空母「福建」などの有人艦載機部隊を、より適した任務に振り向けることも可能になるとしている。
さらに、空母ほど大規模ではない海軍航空支援を単独で担う役割も想定されるという。
『ザ・ウォー・ゾーン』は、海軍航空戦力全体の増強によって、中国沿岸周辺での人民解放軍の作戦上の柔軟性が高まる可能性があると分析している。
一方、『ジ・アビエイショニスト』は、「攻撃21」が揚陸任務部隊に随伴する無人偵察・攻撃能力を提供し、偵察や精密打撃の範囲を艦隊周辺よりさらに遠方へ拡張する可能性があるとの従来の評価を改めて紹介した。
『ザ・ウォー・ゾーン』は、「四川」の艦載航空部隊にはこのほかにも無人機や有人ヘリコプターが含まれると予想している。
中国は近年、複数の作戦用無人機を公開しており、今後、それらをベースとした艦載型が開発される可能性もある。
中国側が主張する「世界初」 X-47Bとの違いは
『環球時報』は、中国の軍事専門家・宋忠平氏の見解として、「攻撃21」が「四川」で行った飛行運用は「世界初の事例」だと報じた。
宋氏は米海軍のX-47B計画を引き合いに出し、X-47Bについて「空母運用を目的に開発されたものの、複数の技術的制約から計画が中止された」と主張した。その上で、「攻撃21」の計画は効率的なスケジュールで着実に進んでいるとの見方を示した。
宋氏はまた、「攻撃21」が中国3隻目の空母「福建」から運用される可能性もあるとし、有人機と無人機を連携させる技術基盤の構築につながると述べた。
これに対し、『ジ・アビエイショニスト』は、X-47Bとの比較には補足が必要だと指摘している。
X-47Bは実験的な技術実証機で、2015年に「無人戦闘航空システム実証(UCAS-D)」計画が終了するまでに、空母からの発進や着艦を含む一連の運用上のマイルストーンを達成した。
その後、米海軍は無人航空機開発の重点を「艦載空中給油システム」に移し、現在のMQ-25スティングレイ(Stingray)無人給油機の開発につながった。
『ザ・ウォー・ゾーン』は、米軍が少なくとも公表されている範囲では、この種の全翼型無人戦闘機の実用化を進めていないと指摘している。
米海軍は2010年代後半、一時は艦載無人戦闘機の実用化に近づいていたものの、その後方針を転換し、無人給油機の開発を優先した。
ただ、現在は、当時見送った無人戦闘機能力を再検討している可能性を示す兆候もあるという。
『ザ・ウォー・ゾーン』は、中国人民解放軍海軍が現在、この種の作戦能力を実戦配備する世界初の国となる可能性があると評価している。
「四川」での発着艦を裏付ける映像が今後公開されるかは、なお不透明だ。