トランプ米大統領が約140億ドル規模の台湾向け武器売却案の承認を遅らせている上、同武器売却案を中国に対する「非常に良い交渉カード」だと公言している。米シンクタンク、民主主義防衛財団(FDD)の中国問題担当シニアディレクター、クレイグ・シングルトン氏は、11月2日付ニューヨーク・タイムズへの寄稿でこれに警告を発しており、トランプ氏は単に貿易交渉の余地を残したいだけかもしれないが、習近平・中国国家主席は武器売却の遅れを米政府による長期的な譲歩と見なす可能性があると指摘。
ひとたび米国が売却を再開し、もし中国側が「米国が約束を反故にした」と見なせば、1996年の台湾海峡危機よりもさらに深刻な事態を招く恐れがあると警鐘を鳴らした。
この未承認の武器売却案には、迎撃ミサイルや防空システムが含まれている。トランプ氏は今年5月に北京で習氏と会談した後、米FOXニュースの独占インタビューに応じ、これらの武器の売却を許可するか問われた際、当面は保留とし、今後の対応は「中国次第だ」と答えた。しかし、米国務省のマイケル・デソンブレ国務次官補(東アジア・太平洋担当)は6月に米国議会が開いた公聴会で、武器売却の推進決定は米中協議とは独立して行われるかどうか問われ、肯定した。
武器売却の保留を巡る、トランプ氏と習氏の思惑の違い
シングルトン氏は次のように分析している。米中はようやく関税紛争を一時的に休戦させ、現在はより広範な経済協定について協議を進めている。トランプ氏にとって、武器売却の承認を遅らせることは、中国との対立議題を一つ減らすことになり、後から許可を出す余地も残せる。一方で習氏にとっては、米国の保留期間が長引けば長引くほど、ある条件を米国が受け入れたかのように映る。すなわち、「米中関係の安定を維持するために、米国は台湾への軍事的支援を制限しなければならない」という条件だ。
こうした解釈の相違は、9月にワシントンで行われた米中首脳会談において特に顕著に表れた。習氏は米国に対し、「台湾独立への反対」を明確に表明するよう求めた。これは、米政府が長年使用してきた「台湾独立を支持しない」という立場から一歩踏み込んだ要求だ。
台湾の兪大㵢・駐米代表は10月のインタビューで、米国はこの要求を受け入れておらず、政策に変更がないことをすでに台湾側に伝達していると述べた。シングルトン氏が懸念しているのは、もし中国が米国の武器売却の遅れを「双方の暗黙の了解」と見なした場合、トランプ氏がいざ承認した際に、習氏が米国の立場を見誤ったと見なされるのを避けるため、穏便な対応をとることが難しくなるという点だ。
中国の軍事力は30年前とは比べものにならない
1995年、米政府当局者は当初、当時の李登輝・台湾総統に対し、母校であるコーネル大学訪問のための訪米を認めないと中国側に伝えていた。しかしその後、米議会が超党派で訪米許可を支持したため、クリントン政権は立場を翻し、ビザを発給した。これを受けて中国は駐米大使を召還し、台湾周辺で軍事演習を展開した。さらに台湾初の総統直接選挙を直前に控えた1996年3月には、中国人民解放軍がミサイル試射を行い、米国は2組の空母打撃群を台湾周辺海域に派遣する事態となった。
シングルトン氏は、かつて危機を引き起こした要因が一枚の訪米ビザであったのに対し、現在の争点は「台湾がどのような武器を取得できるか」だと指摘。さらに、中国軍のミサイル、海空軍、およびサイバー作戦の能力は30年前とは比べものにならない。米国が武器売却を保留している間も、中国側はそれに呼応して手を引くことはなく、同国軍は依然として台湾周辺の海空域で活動を続けている。
武器売却と対中貿易交渉は切り離すべき
同じ轍を踏まないよう、シングルトン氏はトランプ氏に対し、台湾への武器売却と中国との貿易交渉を切り離して処理するよう提言している。米国政府は140億ドル規模の全ての計画がまとまるのを待つ必要はなく、小規模であっても台湾の防衛に実質的な貢献をもたらす武器売却を先行して承認すべきだと主張。中国が売却保留を「約束」と見なす前に、米国の立場を明確に示すことが不可欠だと強調した。
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編集:平松靖史 (関連記事: なぜ台湾の対米信頼は低下したのか 対台湾武器売却は「歴代最多」、トランプ氏の「交渉カード」発言に警戒 | 関連記事をもっと読む )













































