【舞台裏】沈伯洋氏の追い上げに揺れる蒋万安陣営 切りたい「中台関係」「NVIDIA」の2枚のカード

2026年台北市長選が迫るなか、再選を目指す国民党の蒋万安市長(写真)は厳しい選挙戦を強いられている。国民党の選挙支援部門は、支持基盤の投票を促すため次の戦略を検討している。(柯承惠撮影)
2026年台北市長選が迫るなか、再選を目指す国民党の蒋万安市長(写真)は厳しい選挙戦を強いられている。国民党の選挙支援部門は、支持基盤の投票を促すため次の戦略を検討している。(柯承惠撮影)

2カ月余りにわたり、民進党候補・沈伯洋氏を中心に広がる「洋流」の勢いに押されて苦戦してきた国民党の蒋万安台北市長は、10月31日のテレビ討論会でようやく態勢を立て直した。

国民党内では、この討論会は選挙戦の行方を左右する重要な一戦とみられており、蒋氏が沈氏に対して優位を示せなければ、その後の情勢は極めて厳しくなるとの危機感が強かった。結果的に蒋氏は、市政を熟知する現職の強みを生かして沈氏に対抗し、国民党の市議候補や支持者の士気は大きく高まった。党の選挙支援部門も、この討論会をきっかけに、一部の穏健な国民党寄りの有権者や中間層が再び蒋氏支持に戻る可能性があるとみている。

ただ、討論会当日にTVBSが実施した世論調査では、討論会での出来について沈氏を高く評価した回答が蒋氏を7ポイント上回った。沈氏の弁舌やスタイルに好感を抱く台北市民が少なくないこともうかがえる。一方、候補者支持率では蒋氏が依然として沈氏を4ポイント上回っており、国民党にとっては一定の安心材料となった。

ある国民党の選挙支援幹部は、蒋氏が討論会で沈氏を上回ったとの見方を示したうえで、選挙戦へのプラス効果については「出血を止めた」程度だと指摘する。支持の上積みがあったとしても大きくはなく、選挙戦の構図を覆すにはほど遠い。ただ、蒋氏はようやく守勢一方の状況を脱し、今後さらに激しくなる選挙戦に臨む足場を固めることはできたという。

10月31日、台北市長選のテレビ討論会に臨んだ国民党の蒋万安氏(左)と民進党の沈伯洋氏(右)。国民党陣営は蒋氏の健闘で士気が持ち直したとみている。(柯承惠撮影)
台北市長選のテレビ討論会に10月31日出席した民進党候補の沈伯洋氏(右)と国民党候補の蒋万安氏(左)。国民党側は、蒋氏の討論会でのパフォーマンスを受け、陣営の士気が回復したとみている。(柯承惠撮影)

市政の評価が高くても落選 国民党が恐れる「陳水扁の二の舞」

関係者によると、討論会を乗り切ったことで国民党内の重圧はいくらか和らいだものの、選挙支援に携わる関係者の多くは、内々の議論では依然として台北市長選の行方を懸念している。市政への精通ぶりや4年間の実績を強調するだけでは、過半数の票を得て勝利できるとは限らないという見方が大勢だ。

選挙経験の豊富な国民党幹部は、台北市民が蒋氏の仕事ぶりを評価し、目立った実績があると認めていても、それがそのまま蒋氏への一票につながるとは限らないと語る。投票行動では「人」の要素がより重要になる可能性があるという。

この幹部によれば、沈氏がイメージ戦略や豊富な資源を活用して自身の印象を変え、若者や中間層の支持を集めるだけでなく、従来は国民党寄りとみられてきた女性層、経済重視層、知識層の投票意向まで揺さぶっている状況では、市政の実績を訴えるだけでは劣勢を挽回できず、より高い次元の訴えが必要になるという。

この幹部は、市政運営への満足度が高くても勝てるとは限らない代表例として、1998年の台北市長選を挙げる。当時、再選を目指した陳水扁市長は、市政への満足度が7割を超えていたにもかかわらず、得票率は約46%にとどまり、国民党が擁立した馬英九・元法務部長(法相に相当)に敗れた。 (関連記事: 台北市長選テレビ討論 蒋万安市長に国民党内から高評価 沈伯洋氏対策を徹底、趙少康氏も助言 | 関連記事をもっと読む )

また、先に発表された『聯合報』の台北市長選に関する世論調査では、蒋氏の市政運営への満足度が50%だったのに対し、支持率は41%にとどまった。この幹部は、9ポイントの差について、蒋氏の実績を評価していても投票するとは限らない有権者が一定数いることを示していると指摘する。2026年の台北市長選で、有権者が蒋、沈両氏の個人的な資質やイメージ、公約だけを基準に投票先を選ぶなら、蒋氏の再選への道は険しいという見方だ。

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