アジア太平洋経済協力会議(APEC)の2026年の一連の会議は中国が主催している。APEC経済首脳会議ウィーク(AELW)が11月中旬に広東省深圳で開かれる予定だが、通例では首脳会議ウィーク中に開催される、外相や貿易担当相らが参加するAPEC閣僚会議について、中国側は「各方面の要因を総合的に考慮した」「効果を確保するため」と説明し、今回はオンライン形式に変更したうえ、日程も前倒しして3日夜に開催した。
台湾メディア『風傳媒(ストームメディア)』は、台湾側が政府高層の判断で出席者を「格下げ」し、次官級代表2人を参加させたと報じた。一方、台湾外交部は5日、龔明鑫経済部長と葉俊顕・国家発展委員会(国発会)主任委員が当初出席する予定だったものの、2人に急な公務が入ったため、高仙桂・国発会政務副主任委員と江文若・経済部政務次長が代理出席したと説明している。
英紙フィナンシャル・タイムズ 中国がAPEC首脳会議ウィークの日程を縮小
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は先月、6人の関係者の話として、中国がAPEC経済首脳会議ウィークの日程縮小を計画し、外交・貿易閣僚会議をオンライン開催に変更することを提案したほか、恒例となっている複数の首脳による「非公開会議」を取りやめる方針だと報じた。
FTは、APECでは実質的な協議の多くが閣僚級会議で行われてきたと指摘。中国側が会議運営を厳密に管理・演出する「ステージ・マネジメント」を強めて日程を縮小することで、各国・地域による実質的な議論の機会が減る可能性がある一方、北京側にとっては複雑な会議運営を管理しやすくなり、予期せぬ事態が生じるリスクを抑えられると報じた。
APEC閣僚会議を前倒し 中国外務省「効果確保の観点から」
中国の王毅外相と王文濤商務相は3日夜、北京でAPEC閣僚会議をオンライン形式で共同主宰した。日本外務省によると、会議は中国の主催で日本時間午後9時から約4時間行われた。
中国外務省の毛寧報道官は3日午後の定例記者会見で、日本の『朝日新聞』からオンライン開催に変更した理由を問われ、「中国は今年のAPEC主催国として閣僚会議を非常に重視している。各方面の要因を総合的に考慮し、効果確保の観点からオンライン形式での開催を決定した。会議は前向きな成果を上げ、首脳会議に向け十分な準備を整えると確信している」と説明した。
王文濤氏は、国際情勢が混迷し、サプライチェーンの分断リスクが高まるなか、世界経済の成長は力強さを欠いているとして、APECの各メンバーは引き続き、アジア太平洋と世界の発展に向け、実務的で有効な「アジア太平洋の解決策」を示すべきだと強調した。
台湾は国発会副主任委員と経済部次長が出席
中国外務省とAPEC公式サイトでは、今回のオンライン閣僚会議の参加者名簿は公表されていない。
APECの正式なメンバーエコノミーとして「Chinese Taipei(チャイニーズ・タイペイ)」の名称で参加する台湾からは、国家発展委員会(国発会)の高仙桂政務副主任委員と、経済部(経済産業省に相当)の江文若政務次長の2人の次官級代表がオンラインで出席した。
台湾では、外相ポストが主権を象徴するとの政治的事情から、これまでAPEC閣僚会議では国発会主任委員が外相枠を担い、貿易担当相に相当する役割は行政院(内閣)経済貿易交渉弁公室(OTN)の総交渉代表が担ってきた。
しかし、前総交渉代表の楊珍妮氏が職場でのパワーハラスメント問題を巡り、7月に行政院による停職、総統府による免職、監察院による弾劾を相次いで受けた後、総交渉代表のポストは現在まで空席となっている。3日のオンライン会議に出席した江氏は、経済部政務次長であると同時に、経済貿易交渉弁公室の副総交渉代表も兼任している。
APEC閣僚会議がオンライン形式に変更され、前倒しで開催されたことを受け、『風傳媒』は、台湾政府高層が総合的に判断した結果、次官級に「格下げ」して出席したと報じた。
一方、台湾外交部は5日、龔明鑫経済部長と葉俊顕国発会主任委員が当初出席する予定だったものの、2人に急な公務が入ったため、高副主任委員と江次長が代理出席したと説明した。台湾外交部によると、APEC関連会議への出席者は、会議の議題や必要性などを総合的に考慮して決めているという。
中国国台弁、「一つの中国原則」を改めて主張 台湾外交部は反論
中国が今年のAPEC関連会議を主催して以降、台湾の当局者は「Chinese Taipei」という正式な名称で会議に参加しているが、台湾側は中国による扱いを巡り、たびたび異議を唱えている。
台湾紙『自由時報』は先に、中国側がAPECの招待状を慣例とは異なる非公式な方法で送付するなど、台湾を「差別的に扱っている」と報じた。
台湾の林佳龍外交部長(外相)は2日の取材に対し、今年のAPEC関連会議では中国側による台湾への「差別的な対応」がみられるとし、「問題が生じた際には、直ちに抗議し、参加する権利の確保に努める」と述べた。
一方、中国国務院台湾事務弁公室(国台弁)は4日、中国側は一貫して「一つの中国原則」とAPECの関連了解覚書の規定や慣例に基づき、台湾の会議参加を扱っていると主張。「上記のやり方に従えば、台湾地区は会議に参加できる」との立場を改めて示した。
さらに、加盟覚書には、台湾が他のAPECメンバーと「平等な基盤(on an equal basis)」で各種会議や活動に参加することが明記されていると強調した。
台湾外交部「中国は約束を履行し、政治的操作をやめるべき」
台湾外交部はさらに、中国を含むすべてのAPECメンバーが、2024年と2025年のAPEC閣僚会議の共同声明で、「すべてのエコノミーが首脳会議ウィークを含むAPECのすべての行事に平等な立場で参加する」との趣旨の文言を盛り込むことを支持したと指摘した。
中国は2024年、各メンバーエコノミーの参加者の安全を確保するとともに、APEC会議への参加に伴う中国への円滑な入国・出国を保証することを、書面で明確に約束しているという。
台湾外交部は、中国には自らの約束を履行し、全メンバーがコンセンサスで合意した決定を守る責任と義務があると強調した。
そのうえで中国に対し、これ以上の政治的操作を行わず、主催エコノミーとしての責任を果たし、APECの全メンバーが平等に参加するという中核的原則を尊重するよう要求。APECの関連ガイドライン、規範、慣行と自らの約束に従い、11月に中国・深圳で開催されるAPEC経済首脳会議に、台湾が平等かつ尊厳を保って参加できるよう具体的な行動で保障することを求めた。