11月8日、台湾中部の彰化県田中鎮に、そろって「田中」の姓を持つ日本人ランナーたちがやってくる。「田中」姓の日本人12人が第15回「台湾米倉 田中マラソン」にエントリーし、このうち10人は名前まで「田中宏和」だという。台北駐日経済文化代表処が11月5日にこの話題を紹介すると、ネット上では「かわいすぎる」といった声が上がった。「田中、加油(がんばれ)」と声をかければ、10人が一斉に振り向くのではないかと冗談交じりの書き込みもみられた。
この10人の田中宏和さんは、急ごしらえで集まったわけではない。一般社団法人国際同姓同名連盟が10月21日に発表したプレスリリースによると、一行は「田中運動部」を結成し、チームとして海を渡って出場する。田中宏和さん10人と家族2人、キャプテンを務める田中悠登さんの計13人が、それぞれ異なる部門を走る。内訳はフルマラソン4人、ハーフマラソン1人、ファンラン(9.7キロ)8人となっている。
1994年に始まった同姓同名探し 178人の「田中宏和」でギネス記録
この集まりの始まりは1994年にさかのぼる。田中宏和という日本人男性が、プロ野球のドラフト会議で自分と同姓同名の選手が指名されたことを知り、ほかの「田中宏和」を探し始めた。こうして、同姓同名の人たちが交流するコミュニティーが少しずつ形づくられていった。
2022年10月29日には、日本語の読みが「タナカヒロカズ」の178人が東京・渋谷に集まり、同姓同名の人が最も多く集まった記録としてギネス世界記録に認定された。漢字が異なっていても、読みが同じであれば当時の認定基準を満たしていた。
ただ、この記録は2023年2月、セルビア・ベオグラードで「ミリツァ・ヨバノビッチ」さん256人が集まり、更新された。日本の田中宏和さんたちはその後もコミュニティーを広げ続け、これまでに278人の同姓同名メンバーを見つけている。セルビアやハンガリーの同名グループとの交流も始めた。
「田中」を走るため、田中運動部を結成
今回の海外遠征のきっかけは、日台の文化交流に取り組むカルチャープロデューサー、田中佑典さんの誘いだった。田中さんは会のメンバーに、台湾には「田中」という名の町があり、毎年マラソン大会が開かれているとして、田中姓の日本人を集めて一緒に出場してみてはどうかと持ちかけた。
一行は9月20日、東京・渋谷でランニング練習会を開き、2025年の箱根駅伝で優勝した青山学院大学陸上競技部の元主将、田中悠登さんがメンバーを率いた。
田中マラソン自体も、台湾で人気の高いランニング大会だ。大会の公式資料によると、今年は4万2196人が抽選に申し込み、当選したのは1万6316人で、当選率は38.67%にとどまった。一面に広がる田んぼの風景や沿道の住民の声援、エイドで振る舞われる豊富なグルメで知られ、子豚の丸焼きなど台湾ならではの料理も、日本人ランナーにとって大きな魅力となっている。
「田中宏和の会」の代表は、「名前が同じというだけで、人は仲良くなれる」と信じてきたと話す。今回はさらに一歩進め、同じ名前を持つ町とのつながりをつくりたいという。
代表はまた、9月に67歳で急逝した仲間の「不動産の田中宏和さん」をしのび、追悼の気持ちも込めて11月8日の大会を走りたいとしている。
1994年に最初の同姓同名の人を探し始めてから、2022年に178人を集めて世界記録を打ち立てるまで、この日本人グループは「田中宏和」を、年齢や職業の垣根を越えたコミュニティーへと育ててきた。
11月8日、30年以上続く同姓同名の交流は彰化県田中鎮のマラソンコースへと舞台を移し、文字通りの「田中が田中を走る」レースとなる。
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編集:梅木奈実













































