プリンス・グループ弁護団が反撃 米司法省の150億ドル相当ビットコイン押収に「資金流の証拠なし」と主張、60日延長を申請

米司法省の訴追と米財務省の制裁対象となったプリンス・グループ創業者・会長の陳志氏。(写真/Prince Bank Plc.公式Facebookより)
米司法省の訴追と米財務省の制裁対象となったプリンス・グループ創業者・会長の陳志氏。(写真/Prince Bank Plc.公式Facebookより)
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米司法省は10月14日、約12万7271枚(時価約150億ドル)のビットコインを対象とした民事没収訴訟を起こした。司法省によれば、これは「同省史上最大規模の押収」とされる。同日には刑事告発状も公開され、カンボジアのプリンス・グループ(Prince Group)会長である陳志(チェン・ジー)氏が、同国内で詐欺組織を運営し、人々を強制労働させて暗号資産詐欺を実行、ビットコインで資金洗浄を行ったと指摘された。

その後1か月も経たないうちに、陳氏の代理を務める米法律事務所ボイス・シラー・フレクスナー(Boies Schiller Flexner)が反撃に出た。『風傳媒』が入手した同事務所による11月10日付のニューヨーク東地区連邦地裁への提出文書(全5ページ)によると、主任弁護士マシュー・シュワルツ氏は、政府が「ビットコインがプリンス・グループの違法収益である」と主張するのみで、詐欺行為から押収資産に至る具体的な資金の流れを示していないと批判した。

カンボジア「太子集団」創設者陳志が委任した米国法律事務所Boies Schiller Flexnerが11月10日にニューヨーク裁判所に提出した動議声明。(BSF文書より)
カンボジアのプリンス・グループ創業者・陳志氏側が11月10日にニューヨーク地裁へ提出した動議書面。(BSF提出資料)

弁護側「焦点は資金追跡にある」

訴状によると、政府は詐欺収益がビットコインのマイニングに使用され、他のウォレット資金と混在したと推定しているが、その出所やウォレットの性質について「明確な裏付けは示されていない」という。

シュワルツ氏は書面で「本件の核心は資金の追跡にある。政府がブロックチェーン上でどこまで正確に流れを再構成できるかが問われている」と指摘。追跡には高度な技術と時間を要するため、弁護団は独自にブロックチェーン解析の専門家を起用し調査を開始したが、初期分析の完了には少なくとも60日が必要だと説明している。

さらに弁護側は、押収されたビットコインの多くが2020年12月に発生した「LuBianマイニングプール」ハッキング事件に関連している可能性が高いと主張。公開ブロックチェーンデータでは、この事件で約12万7272枚のビットコインが一度に移動したことが確認されており、今回押収対象となった数量とほぼ一致しているという。これらの資金は長期間動かず、2024年7月になって初めてFBI管理下のウォレットに移されたとされる。

「太子集団」創設者陳志が委任した米国法律事務所Boies Schiller Flexnerは11月10日にニューヨーク裁判所に提出した動議声明で、押収されたビットコインの多くが2020年12月のLuBianマイニングプールハッキング事件に関連している可能性を指摘している。(BSF文書より)
陳志氏が委任する米法律事務所ボイス・シラー・フレクスナーが11月10日にニューヨーク地裁へ提出した動議で、押収ビットコインの多くが2020年12月のLuBianマイニングプール侵害と関連する可能性を指摘。(提出書面/BSFより)

政府による長期資産管理に異議「時間の公平性に欠ける」

弁護側は、米司法省が2024年7月以降、問題となっているビットコインを16か月以上にわたって管理してきたにもかかわらず、2025年10月に訴訟を起こした後、わずか数週間で関係者に請求手続きを完了させようとしていると指摘。「政府が訴追までに1年以上を費やしたのなら、被告側にも検証のための合理的な時間が与えられるべきだ」と主張した。

また、訴追と同日に米英両政府がプリンス・グループおよび関連企業に制裁を科したことで、多くの役員が辞任し、企業統治が一時的に機能停止していると説明。制裁の影響で弁護士や専門家の雇用が困難になり、一部企業は米国政府からの正式な通知を受け取ったかどうかすら確認できない状況だという。訴状には、プリンス・ホールディング・グループ、Warp Data Technology Lao、Lubian.com、Future Technology Investmentなど複数の企業が潜在的な請求者として記載されており、これらが押収資産に合法的な権益を有している可能性があるとした。

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