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舞台裏》台湾・野党共闘はまた難航か 国民党・鄭麗文氏は民衆党との橋渡し役になれるのか 過去に「柯文哲を批判した」鄭麗文氏が国民党を率い、今後の藍白協力の行方について民衆党は静観している。(写真/劉偉宏撮影)
台湾・民進党が蘇巧慧立法委員を2026年の新北市長選候補に正式指名したことで、最大野党・国民党と第三勢力・民衆党の連携に注目が集まっている。国民党の鄭麗文主席は「新北市長候補は国民党籍でなければならない」と明言。一方、民衆党の黄国昌主席も出馬の方針を変えず、「誠意を尽くすが、ただ待つつもりはない」と語った。両党の協力関係は依然として固まらず、2026年地方選での「 藍 白連携(国民党=藍 、民衆党=白)」は不透明なままだ。もっとも、年金改革をめぐる国会審議では両党が同じ立場を取っており、議会内での協力関係は維持されている。
両党の関係は、協力と競争が入り混じる複雑な構図だ。黄国昌氏は国民党が約束を果たさなかった場合に「懲罰メカニズム」を適用すると公言。鄭麗文氏が党首に就任して1週間が経つが、黄氏とも民衆党ともまだ直接会談していないという。表面上は距離を保ちつつも、民衆党内部には鄭氏と親しい「橋渡し役」の存在が噂されている。
新北市長選での「藍白合作」に期待が集まる一方、黄国昌氏は「最大限の誠意は示すが、ただ待ち続けはしない」と表明した。(写真/顏麟宇撮影)
2024年選挙の後遺症と「親中」イメージ 黄国昌氏と鄭麗文氏は台湾大学の先輩・後輩の関係にあるが、民衆党側は鄭氏に対して慎重な姿勢を崩していない。背景には、2024年の総選挙での「藍 白分裂」の苦い記憶がある。もし再び世論調査をめぐる候補者調整が行われれば、どちらが譲るのか、どのように連携するのかといった難題が再燃する。
さらに鄭麗文氏は最近「私は中国人」と発言し、国民党内でも際立つ親中派として注目を集めた。この発言は、柯文哲創設の民衆党が掲げる「台湾の主体性と両岸の平和」という立場と必ずしも相容れない。過去には鄭氏が柯氏を「補助金で事務所を買うとはゴミ以下」と批判したこともあり、両者の関係は冷え切ったままだとされる。黄国昌氏も「両者は特に近くない」と冷静に述べている。
鄭麗文氏は過去に柯文哲氏を「ゴミ以下」と非難したが、将来の藍白協力への影響を指摘する声もある。(写真/柯承惠撮影)
推進民衆党の端の人蔡壁如氏との絆 ただし、民衆党の中には鄭麗文氏と交流を続ける人物もいる。その一人が、かつて「党の血滴子」と呼ばれた元立法委員の蔡壁如氏だ。彼女は現在、民衆党中央委員を務めている。
情報によると、蔡氏と鄭氏は立法院で共に活動した第10期の同僚で、四大公投(国民投票)や米国産豚肉輸入問題をめぐって連携を重ね、信頼関係を築いた。蔡氏が2022年に学歴問題で辞職するまで、二人の関係は良好だったという。
その後、蔡氏は2023年に台中市第一区から出馬し、民進党の蔡其昌副院長に挑んだ。出馬を決める際には、鄭麗文氏から選挙区選定に関する具体的な助言を受けたとされ、結果的に台中第一区を選んだのもその影響が大きいとみられている。
いまのところ、鄭麗文氏と民衆党の距離は近くもなく遠くもない。だが、蔡壁如氏のような「橋渡し役」の存在が、来年以降の野党再編の行方を左右する可能性もある。
蔡壁如氏と鄭麗文氏は第10期立法委員時代、多くの法案で協力した。(写真/顏麟宇撮影)
鄭麗文氏、蔡壁如氏との交流が続く 国会外でも、両者の関係は深まっていた。選挙戦初期、鄭麗文氏は蔡壁如氏を地方へ連れ、地方派閥「劉家」系統の有力者に紹介したという。選挙終盤には体調不良を押して応援演説に立ち、咳き込みながらも20分以上にわたり蔡氏を称え続けた。ステージ上で蔡氏を何度も抱きしめ、「彼女は立法委員でありながら、コロナ禍には病院で看護師として働いた誠実な政治家。政治家としての良心とは何かを彼女は示している」と訴えた場面が印象的だった。
2025年の民進党主導による全国規模のリコール運動の際には、蔡氏が3月に「反悪罷志工団」を立ち上げ、鄭氏も6月に「党外在野大連盟」を結成。異なる組織であっても互いに協力関係を維持し、長く信頼関係を築いてきた。興味深いのは、蔡氏が2020年に立法院入りした際にも「在野大連盟」を提案していた点で、当時は時代力量党が拒否する一方、国民党では鄭氏が中心となって支持していたという。
鄭麗文氏は6月に「党外在野大連盟」を立ち上げ、現在も蔡壁如氏と交流を続けている。(写真/柯承惠撮影)
民衆党との橋渡し役になるのか では、蔡壁如氏は今後「藍白連携」の架け橋となりうるのか。蔡氏は風傳媒の取材に「鄭麗文氏とは確かに親しいが、私が重要な役割を果たすとは思わない」と慎重に語った。政党間の協力は「個人ではなく、党同士の対話から始まるべきだ」との立場だ。鄭氏の党首就任後も、連絡は「LINEでお祝いを送った程度」で深い話はしていないといい、「彼女は今とても忙しい。友人として見守るのが一番の支援」と語った。
かつて鄭氏が柯文哲氏を「ゴミ以下」と罵倒した件について、蔡氏は「それが今後の連携に影響するとは思わない」と断言。自身が2023年に台中第一区で出馬する際、鄭氏から「国民党はこの選挙区で有力候補がいない。協力した方がいい」と助言されたことを明かした。蔡氏は「政党間の関係は競争しながらも協力するもの。民進党の独走を防ぐためには藍白の連携が必要」とし、「どの段階で協力するかは時機を見て判断すべきだ」と語っている。 民衆党では、黄国昌主席が主要な意思決定を行う際、必ず柯文哲氏と意見交換をしている。蔡氏によれば、「柯氏は拘置所を出た今も党内に実質的な影響力を持っている」という
過去の鄭麗文氏による柯文哲氏批判について、蔡壁如氏(右)は「今後の藍白合には影響しない」との見方を示した。(写真/柯承惠撮影)
柯文哲氏とCK楊氏、そして距離感 では、鄭麗文氏の背後にいるとされる「CK楊」こと楊建綱氏(異康公司会長)と柯氏に面識はあるのか。蔡氏は「二人は知り合いではあるが、特に親しい関係ではない」と答えた。柯氏は釈放後、楊氏と会う意向もあるが、自身が「柯文哲案件」の証人であるため、裁判の進行を見守りながら慎重に動く考えを示している。
蔡氏は民衆党の党首選で約4%の得票にとどまり、「非主流派」と見られているが、裁判関係者として柯氏と直接会うことも難しい現状にある。それでも民衆党は鄭麗文氏の党首就任を静観しており、今後の地方選でどの地域で協力が進むかは不透明だ。 もし国民党が新竹市や嘉義市でのみ連携し、宜蘭県での協力を拒む場合、民衆党がそれを受け入れるかは未知数だ。蔡壁如氏と鄭麗文氏の友情、さらに国民党の次期大統領候補とも目される台中市長・盧秀燕氏との関係を踏まえると、藍白間の微妙な力学が今後の台湾政治にどのような影響を及ぼすか、まだ結論は出ていない。
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