舞台裏》台湾の林佳龍外交部長と呉釗燮国家安保秘書長 対立は続くか、外交危機は再燃か

2025-11-11 17:08
外交部長の林佳龍(左)と国安会秘書長の呉釗燮(右)をめぐる「二つの太陽」論、両者不和の噂は根強い。(写真/柯承惠撮影)
外交部長の林佳龍(左)と国安会秘書長の呉釗燮(右)をめぐる「二つの太陽」論、両者不和の噂は根強い。(写真/柯承惠撮影)
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台湾・外交部長の林佳龍氏と国家安全会議(国安会)秘書長の呉釗燮氏の不仲説が、ここしばらく政界を騒がせている。外交界のみならず立法院でも注目の話題となり、与野党議員が相次いで取り上げるほどだ。さらに報道頻度も増し、台湾に駐在する各国外交団の間でも関心が高まっているという。11月4日には国民党立法院党団が記者会見を開き、「すでに龍がいるのになぜ燮を生むのか」と古いことわざを引用し、外交と国安部門の「内紛」や「足の引っ張り合い」を批判。民進党政権の外交能力を痛烈に非難した。

注目すべきは、半年前、林佳龍氏が国会質疑で、呉釗燮氏の元秘書・何仁傑氏が関与したスパイ事件は「外交に深刻な損害を与えた」と指摘し、政治責任は「本人が判断すべきだ」と述べていた点だ。もっとも最近は、不仲説をたびたび否定している。10月16日の外交・国防委員会から11月5日の特別報告まで、林氏は毎週立法院で報告を行い、その都度、呉氏との関係が話題にのぼった。林氏は「絶対に噂だ」と強調しつつ、「背後に認知操作の意図がある」とも指摘。では、両者の間に実際どれほどの「わだかまり」があるのか。「龍燮林佳龍氏と呉釗燮氏)の確執」は実在するのか。

20250521-外交部長林佳龍21日出席メディアティーセッション活動。(柯承惠撮影)
​林佳龍氏(写真)と呉釗燮氏の不仲説は、ここしばらく政界の話題となっている。(写真/柯承惠撮影)​

就任直前は称賛、直後に不満の声

2024年5月2日、林佳龍氏の外交部長就任は蔡英文前総統が早期に発表し、頼清徳総統が正式に指名した。外部では「派閥への論功人事」との批判もあったが、退任間近だった呉釗燮氏は立法院外交・国防委員会の答弁で林氏への期待を問われ、「外交部での活躍を期待している」と公に称賛していた。

しかし、その良好な雰囲気は長くは続かなかった。林氏の就任から1カ月足らずで、「呉氏が林氏を外交の素人と見なしている」という報道が流れた。1年後、台湾の外交的苦境が国際メディアで取り上げられるようになると、林氏は7月と8月に日本とフィリピンを訪問、さらに9月には国連総会期間中にニューヨークを訪れた。これを受け、外交・国防委員会の国民党議員である馬文君氏は「内部情報を漏らした人物がいる」と指摘。「外に情報を出せる政府関係者が誰かは、想像に難くない」と暗に呉氏側を示唆した。

20250520-国安会秘書長吳釗燮(中央)、副総統蕭美琴(左1)、20日出席執政周年記念スピーチ。(顏麟宇撮影)
前任の呉釗燮氏(中央)から林佳龍氏への交代は実現したが、良好なムードは長く続かなかった。(写真/顏麟宇撮影)

対立の発火点は駐美代表人事か

では、林・呉両氏の関係に亀裂が生じたのはどこからか。『風傳媒』によると、最も敏感な争点は駐美代表の人事である。頼清徳政権発足直後から、駐米代表の俞大㵢氏の交代説が取り沙汰されていた。俞氏は「ラテン派」として駐美に派遣されたが、当初から暫定的な配置と見られており、台湾が代表を置くスペインのポストが2024年7月から空席となっていたことから、「スペイン語に堪能な俞氏を転任させるため」との見方が広まっていた。この噂は外交界で繰り返し浮上し、2025年7月初めにはメディアで報じられるまでに至った。

しかも、この人事報道は「大規模リコール運動」や、頼総統の中南米歴訪に合わせた米国通過問題、「米中首脳会談」の直前など、政局的に敏感な時期に相次いで出た。さらに国安会副秘書長の趙怡翔氏が後任に内定したとされ、「米国務省が指名した人物」との噂まで流れた。趙氏はトランプ政権期に米政府関係者との人脈を築いていたことで知られる。しかし、駐代表交代の報道はその都度否定され、「根拠のない情報だ」と外交部が声明を出し、米国務省も「完全な誤報だ」と異例のコメントを発表した。

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