台湾・高雄市長選の行方が注目を集めている。民進党の地盤である高雄だが、国民党も次期市長選での巻き返しを狙う。現職の陳其邁市長の任期満了を前に、党内では次の候補者をめぐる激しい主導権争いが展開されている。なかでも立法委員の林岱樺氏は、助理費(秘書手当)流用事件で起訴されたにもかかわらず、「司法の誤判だ」と主張し、地元での支持回復に全力を注いでいる。ところがこの動きを受け、高雄地検が異例の「封口令(口封じ命令)」を求めて裁判所に申請。政界に衝撃が走った。
実はその直前、民進党の有力派で現外交部長の林佳龍氏が「林岱樺氏を信じる」と公に擁護していた。林氏はSNS上で「林岱樺氏は基層に根ざし、勤勉で民を思う政治家。清廉で不正を行う人物ではない」と投稿し、高雄市民に支援を呼びかけた。この発言が政界で波紋を呼び、民進党内からも「司法に圧力をかけかねない」と批判が噴出した。

林佳龍氏の一言で 高雄地検が林岱樺氏に口封じ命令を申請
高雄地検が林岱樺氏に「口封じ命令」を申請した事実と、林佳龍氏の支持表明は一見無関係に見えるが、実は検察側に林氏への不満がくすぶっていた。林佳龍氏は、林岱樺氏が支持の厚い立法委員であるとして「社会は説明の場を与えるべきだ」と述べ、これが地検の対応を後押しし「口封じ命令」申請の要因の一つになったとみられる。
関係筋によれば、高雄地検は6月に林岱樺氏を職権濫用で起訴。あわせて「口封じ命令」を申請する際、被告は判決確定を待つべきで、審理内容を知らない第三者に向けて感情を煽る説明を行い、党内で支持を募ることは許されないと主張した。林佳龍氏の発言後、地検は「党内同志の誤解を招く」とも指摘。法曹関係者の間では、この「口封じ命令」には背後からの“見えない手”が働いたのではないかとの懸念も出ている。

高雄地検、陳水扁氏の活動をめぐる「口封じ命令」は不発
過去、法務部と検察上層部は政治色の強い案件では距離を置くのが原則だった。たとえば元総統・陳水扁氏の仮釈放では、陳氏が弁護士出身で弁舌に長けることから、釈放後に各所で発言が過熱する事態を法務部は懸念していた。
このため法務部は矯正署や台中刑務所と連携し、陳氏の行動を厳格に監視。ある官僚によれば、陳氏は羅瑩雪法務部長の時代に仮釈放されたが、国民党政権下では規律を守っていた。ところが2016年に与党が民進党へ交代し、法務部長が邱太三氏になると、陳氏は活動を活発化させ、メディアを通じ規則に抵触しかねない発言も見られるようになったという。 (関連記事: トランプ・習近平会談直前の林岱樺氏支援が波紋 「非典型の外相」林佳龍氏に再び注目 | 関連記事をもっと読む )

柯文哲氏は無実を主張、北検は静観 一方で高雄地検は林岱樺氏を締め付け
賴清徳政権下で政治色が濃い事案の一つが、民眾党前主席・柯文哲氏の訴追だ。2024年の総統選で400万票超を得た柯氏は、京華城の利益供与疑惑で「検察は決定的証拠を持っていない」と支持者に訴え、冤罪を主張した。影響力では林岱樺氏を上回るが、台北地検(北検)は台北地方法院に「口封じ命令」を申請せず、約800ページの起訴状に基づく立件だと説明するにとどまった。






















































