前駐日代表の謝長廷氏は12日、Facebookで、自著『駐日八年 台日友好筆記簿』の日本語版が8月5日に産経新聞出版から発売されたことを明らかにした。日本語版のタイトルは日本市場向けに「台湾『駐日大使』秘話」とされ、表紙には「コロナ禍での日台感動秘録、自民党本部で親中派大物議員と面会」などと記され、日本人読者の関心を引く内容となっている。
謝氏によると、このワクチン支援に関するエピソードは中国語版にはなく、台湾読者から質問が寄せられたという。2021年5月中旬、台湾では感染が急拡大し、政治的理由で契約済みのワクチンの供給が遅延。中国や親中派からは「中国製ワクチンを拒んだためだ」との批判が高まり、社会不安が広がった。当時駐日代表だった謝氏は、ある会食で日本政府が購入したAZワクチンに余剰があることを知り、100万回分の緊急支援を要請。台湾側の購入分が到着するまでのつなぎとする計画だった。
結果として日本は6月に124万回分を初回提供、続いて7月にも追加支援を実施したが、それでも台湾の調達分は届かず、謝氏は再び支援を求めざるを得なかった。このとき人脈を総動員し、蘇姓の医師の友人である和田氏が、自民党幹事長(当時)の二階俊博氏と面識を持っていたことが大きな突破口となった。二階氏は親中派とされ、これまで駐日代表処とは交流がなかったが、幹事長は総裁に次ぐ要職で、その支援は決定的だった。
謝氏は、自民党本部で二階氏と面会する機会を得た。二階氏は「これは人道問題だ」と述べ、関係部局に支援を指示。中国語版では関係者への配慮から、報道で既知の人物以外は名を伏せたが、日本語版の刊行前、和田氏から「名前を伏せるのは失礼だ」との意見があり、本人の了承も得たうえで、この重要な舞台裏を追記したという。
編集:梅木奈実 (関連記事: 台湾「726大リコール」に日本メディア批判 「頼清徳氏、日本の信頼失いつつある」 | 関連記事をもっと読む )
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