台湾と日本の文化交流イベント「TAIWAN PLUS 2025 台日新風」(主催・文化総会、以下文総)が9日、大阪・中之島公園で開幕した。翌10日も朝から雨が降り続いたが、来場者数は初日を上回り、文総によると2日間で延べ3万人に達する見込みだ。人気IP「a-We」のグッズ売り場には100メートルを超える行列ができた。

会場には台湾ファンの日本人だけでなく、在日台湾人の姿も目立った。出展者の通訳を自主的に務める来場者もおり、「西尾半島物産店X飛地・離島書店」では、日本で働く台湾人客が商品説明を手書きで作成し提供。馬祖、金門、澎湖などの土産品を紹介し、大きな地図を使って地理や歴史も解説した。来場した日本人からは「これまで知らなかった台湾を知ることができた」との声が多く聞かれた。

台湾観光協会大阪事務所は、夜市の定番ゲーム「輪投げ」を再現し、「Taiwan」の刺繍入りポーチを景品として用意。開始10分で50個が全てなくなる人気ぶりだった。陳薇如副所長は、日本人親子の来場エピソードを紹介。母親が「台湾だけの遊び」と説明すると、子どもは「台湾旅行が当たる」と勘違いし、「ママ、台湾に連れて行って!」と喜んだという。阿里山鉄道のポスターを見て「どこで乗れるのか」と尋ねる来場者も多かった。
台湾の海鮮や野菜をモチーフにしたコインケースを販売する「喜樹菜奇仔」では、昨年京都会場で出会った杖をつく日本人高齢女性が今年も大阪会場に姿を見せ、出展者が感謝と喜びを語った。
TAIWAN PLUSは2018年、東京五輪応援イベントとして東京で初開催され、日本で高い支持を得てきた。昨年は京都府に招かれて京都で開催され、今年は大阪・関西万博連携プロジェクト「We TAIWAN」の一環として大阪へ進出。文総は「東京、京都、大阪では雰囲気や市場の嗜好は異なるが、日本の方々の台湾への愛情は共通している」と述べた。今年は初めて2週末にわたって開催し、16〜17日には台湾ビール、スマホケースブランド「RHINOSHIELD(犀牛盾)」、タピオカミルクティー、台湾最大の先住民ブランド「LiMA」などが出展予定だ。
同日、大阪市中央公会堂では「We TAIWAN 台湾文化 in 大阪・関西世博」展の一環として「魔幻台湾—台湾文学展」が開幕。国立台湾文学館が企画し、原住民文化、日本文化の影響、台湾民俗の再発掘、現代通俗文学、小説の魔幻と写実、詩歌の魔幻をテーマに、台湾文学に息づく神話や霊性を紹介した。会場は築100年の特別室で、彌生時代伝説を描いた天井画や大窓からの光景が神秘的な雰囲気を醸し出し、文学世界を劇場のように体験できる構成となっている。
展示では、台南の台湾府城隍廟の名匾「爾來了」を日本に持ち込み、来場者を魔幻文学の世界へ誘うほか、「鬼地方」「天橋上的魔術師」など日本語訳された著名作品も紹介。表紙と一体化した写真が撮れる仕掛けも人気を集めた。
開幕日には作家の張嘉祥氏と朱宥勳氏による講座「鬼神の語気を聴く—歌詞から物語への文学的声」が満席となり、活発な質疑応答が交わされた。今後は16日に邱常婷氏が「神と獣の間で:台湾ファンタジー文学と児童小説の魔魅想像」、17日に甘耀明氏が「残酷を映す純真の眼—台湾魔幻リアリズムの書き方」と題して講演する予定だ。
公会堂屋外では、新勝景掌中劇団による布袋劇「伏魔英雄帖之再現白光劍」が上演され、大雨にもかかわらず観客は傘を差して最後まで観劇。副団長の朱祥溥氏は「野外劇場に光の演出を加える夢が海外で叶った」と語った。北海道から駆け付けた熱心なファンもおり、「作り手の精神をそのまま大阪に持ってきたことを誇りに思う」と述べた。
「We TAIWAN」イベントは8月20日まで開催され、文学展のほか「台湾映画の輝く今昔」「遺留未来VR360上映」「放開你的頭腦」「移動故事屋」など多彩な企画が順次展開される。詳細は公式サイトやSNSで案内している。
編集:梅木奈実
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