イギリス空母打撃群(CSG)の旗艦「HMSプリンス・オブ・ウェールズ」が、8か月にわたるインド太平洋展開「ハイマスト作戦(Operation HIGHMAST)」の一環として、2025年8月下旬から9月上旬にかけて東京へ寄港する。駐日英国大使館が8月6日に発表した。
今回の寄港は、英政府が掲げる「変化に向けた計画(Plan for Change)」に基づき、インド太平洋地域の平和・安全・繁栄への関与を明確に打ち出すものであり、日英の防衛協力の深化や相互運用性の向上、地域課題に関する対話の促進を目的としている。包括的経済連携協定(CEPA)、円滑化協定(RAA)、日英伊による次世代戦闘機の共同開発「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」など、戦略的パートナーシップの象徴とも位置付けられている。
駐日英国大使のジュリア・ロングボトム氏は声明で、「本寄港は、安全で繁栄したインド太平洋を支える英国の強い意志を示すとともに、日本との深いパートナーシップを象徴するものである」と述べた上で、「防衛・経済・文化分野での連携強化を通じ、地域の安定と次世代のための未来を共に築く決意を示す」と強調した。
寄港期間中には、安全保障や防衛産業関係者が参加する「パシフィック・フューチャー・フォーラム」や、防衛技術の展示を行う「防衛産業デー(DSID)」などの交流イベントが複数日程で開催される予定である。宇宙、サイバー、先進技術分野における新たな協力の可能性についても議論が行われる見通しだ。
「ハイマスト作戦」には、イギリス海軍約2,500人、空軍約592人、陸軍約900人の計4,000人が参加し、8か月間で26,000海里以上を航行、40か国以上を訪問する大規模展開となっている。ノルウェー、カナダ、スペイン、ニュージーランドをはじめとする12か国が艦艇や人員を提供している。
HMSプリンス・オブ・ウェールズは、最大24機のF-35Bステルス戦闘機を搭載可能で、最新技術と伝統的な造船技術を融合した同艦は、英国の防衛イノベーションの象徴とされる。日英の防衛産業協力は、航空宇宙やサイバー分野において両国の競争力を高め、経済成長や高付加価値雇用の創出にも寄与すると期待されている。
今回の展開では、シンガポール、インドネシア、日本、韓国などを訪れ、防衛技術の展示や商談を通じて英国の防衛・貿易の促進も図る。インド太平洋地域は英国貿易の約17%を占めており、日本は英国にとって15番目に大きな貿易相手国である。2023年の対英直接投資額は過去最高となる177億ポンドに達した。
寄港先となる東京のターミナルでは期間中、アクセス制限が実施される予定で、詳細なプログラムや会場の情報は後日あらためて発表されるという。
編集:梅木奈実 (関連記事: 風傳媒取材》横須賀に米空母と潜水艦集結 台湾有事で注目の「謎の島」も現地ルポ | 関連記事をもっと読む )
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