アメリカのドナルド・トランプ大統領は、貿易戦争を世界中で巻き起こし、「トランプ関税」がアメリカに「莫大な利益」をもたらすと強調している。アメリカ財務省のデータによると、トランプ氏の主張には根拠があり、先月だけでアメリカ政府は関税収入として約300億ドル(約4兆4100億円)を得ており、前年同期比で242%の大幅な増加を記録した。

「ニューヨーク・タイムズ」の報道によると、今年7月までにアメリカ政府の関税収入と消費税収入は合計1520億ドル(約22兆円)に達し、前年の780億ドル(約11兆円)の2倍に増加したことがわかる。この資金はどう使われるのか。CNNの報道によると、トランプ氏はこの収入を政府の債務削減に充てるほか、国民に「関税返還小切手」を発行して還元することも検討していると述べている。
関税収入の使途について
CNNによれば、政府の収入は財務省が管理する「一般基金」に集められ、この基金はアメリカ政府の支出を賄うために使用される。もし政府の収入が支出に足りなければ、赤字を補うために借入が必要だ。アメリカ政府の現在の総債務は36兆ドル(約5292兆円)を超えており、増加を続けている。この状況に対し、経済学者たちは経済成長が阻害される懸念を抱いている。
現在、関税収入は今年予想される1.4兆ドル(約206兆円)の赤字を埋めるには足りないが、赤字縮小には一定の貢献をしている。このため、政府が借りる資金は当初の予想より少なくて済むと考えられている。ドイツ銀行のアメリカ担当シニアエコノミスト、ブレット・ライアン氏は「議論するよりも赤字を減らす方が重要だ」と述べている。
もし議会がトランプ氏の案を支持し、関税収入を「返還小切手」としてアメリカ市民に配布することになれば、政府の赤字はさらに悪化する恐れがある。CNNによると、共和党のジョシュ・ホーリー上院議員は先週、関連法案を提出した。元ホワイトハウスの経済顧問であり現在はイェール大学「予算試験室」の主任を務めるアーニー・テデスチ氏は、「このような政策は時期尚早であり、インフレを悪化させる可能性がある」と警告している。
関税収入は本当に「多い」のか?
トランプ氏は5日に「目的は債務返済であり、多くを返済できる」と述べた。しかし、アメリカ政府全体の税収と比較すると、この金額はそれほど大きくない。7月までの関税と消費税収入は前年同期比で倍増しているが、2024年の連邦所得税が2.4兆ドル(約353兆円)であるのに対し、関税収入の規模はその一部に過ぎない。「新共和」は、アメリカの年間総税収は約4.7兆ドル(約690兆円)で、その中の関税収入は2%に過ぎないと指摘している。一方、個人所得税は総税収の約半分を占め、給与税は3分の1、法人税は10%を占めている。 (関連記事: 日本産牛肉に41%の関税 米「+15%加算」に日本政府が猛抗議 | 関連記事をもっと読む )

「ニューヨーク・タイムズ」は、トランプ氏が19世紀末のアメリカの財政システムを理想的なものと見なしていると報じている。当時、アメリカでは所得税がなく、政府は主に関税収入に依存していた。トランプ氏は「国税庁廃止」を望んでおり、関税で政府を維持する夢を抱いているが、「新共和」は、これを実現するには関税収入を現在の8倍に増やす必要があり、これは世界貿易の崩壊を意味すると指摘している。さらに調査によると、アメリカ人の80%、共和党の支持者の70%が関税が物価上昇を引き起こすと信じている。