1945年8月6日、米国が日本の広島市に投下した原子爆弾「リトルボーイ」により、約14万人が命を落とした。今年で原爆投下から80年を迎えるにあたり、広島市は6日午前8時、平和記念公園で「原爆死没者慰霊式・平和祈念式」を開催した。
今年は過去最多となる120以上の国・地域、ならびに欧州連合(EU)の代表が式典に参加し、会場の参列者数も5万5千人を超えた。
この節目の年に、台湾は初めて公式に招待を受け、駐日代表の李逸洋(り・いつよう)氏が出席。式典前日には原爆慰霊碑に献花を行い、犠牲者への哀悼の意を表した。式典当日には、米国のジョージ・グラス駐日大使とも会場内で言葉を交わし、握手を交わす姿が見られた。両者の交流は、和やかかつ厳かな雰囲気の中で行われた。
李氏は式典後、日本語でメディアに対し、「78年間にわたり、広島の平和記念式典は反戦と非核の強い意志を発信し続けてきた。台湾が今回初めて招待されたことは非常に意義深い」と述べ、犠牲者とその遺族に対して深い哀悼の意を表明した。
さらに、「平和はかけがえのないものであり、戦争に勝者はいない。歴史の教訓を学び、平和を大切にすることで、再び悲劇を繰り返さないようにしなければならない」と語った。

李氏はまた、当時多くの台湾人が広島で学び、働いていたことにも触れ、「台湾の人々にとってもこの歴史は決して他人事ではなく、心から共感している」と述べた。台湾は長年にわたり、核なき世界の実現と平和の推進に取り組んできたとし、その理念は広島市と深く一致していると強調した。
式典では、広島市議会議長による挨拶、広島市長および被爆者代表による献花、8時15分の黙とうと平和の鐘の音、市長による平和宣言、平和の白鳩の放鳥、そして合唱「平和の歌」で締めくくられた。近年の地政学的緊張の高まりを背景に、今回の式典は国際社会からも注目が集まり、G7各国の多くが高官を派遣して出席した。
李氏は、広島市と台湾の関係にも言及。1982年に設立された「平和首長会議(Mayors for Peace)」には、台北市、台南市、高雄市、台中市などがすでに加盟しており、広島市議会および県議会は台湾のCPTPPおよびWHOへの参加も公開で支持してきたと紹介した。
「台湾は今後も、日本やアメリカなど民主主義国家と連携し、インド太平洋地域の平和と安定を守っていく。そして世界と共に、核兵器のない未来を目指して努力を続ける」と語り、「私たちは歴史の証人として、平和の価値を次世代に引き継ぐ責任がある。広島の悲劇を二度と繰り返してはならない」と力を込めた。 (関連記事: 核兵器が再び矛先に?ロシア、INF条約の一方的遵守を停止 | 関連記事をもっと読む )
編集:梅木奈実
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