2025年7月26日、台湾で行われた「大リコール」では、最終的に25件すべてが否決され、与党とリコール推進団体は大きな挫折を味わった。この結果、台湾社会内部では見直しの声が上がっている。リコール投票前、街頭や観光地で写真を撮る人々が「中国共産党の同調者」と疑われ、携帯電話のチェックや写真の削除を求められる事態も報告された。このような無差別な「魔女狩り」の雰囲気がリコール失敗の一因とされている。
作家である楊照氏はFacebookに投稿し、1年以上にわたり「緊張感」を抱える新しい種類の「台湾人」が登場したと指摘した。この新しい台湾人たちは、台湾内部に潜む「敵」を探し出し、自分たちが台湾を愛している証を示そうとしていると述べている。その行動は、民主主義の基本価値である「日常生活の尊重と保護」に反していると警告している。
「青鳥運動」から始まる極端な社会分裂
「青鳥運動」とは、台湾の若者や市民が中心となり、政治的な活動を推進する運動で、SNSを駆使して、台湾社会で「敵」と見なされる人物や意見を排除することを目的としている。
楊照氏は、「青鳥運動」から「大リコール」までの約1年間、台湾社会で「緊張感を抱く新しい台湾人」が現れたと述べた。彼らは台湾が中国に飲み込まれる危機的な状態にあると信じており、中国に行動を起こすことができないため、台湾国内に潜む敵を探し続けている。彼らは台湾が中国共産党に浸透されていると信じ、社会全体でスパイを見つけようとする傾向がある。国会内の野党全体が「スパイ」であり、特定の人物以外は全て「スパイ」と見なされがちだと指摘している。
想像上の恐怖で他人の「台湾人」ステータスを取り消す
楊照氏は、これらの「台湾人」は自分たちの想像上の恐怖を基準に、他の人々の「台湾人」としての資格を勝手に取り消すことが多いと指摘している。特に、台湾の状況がそれほど危険だと思わない人々や、台湾に潜伏するスパイの存在を信じない人々に対しては、怒りや悲憤を感じていると述べた。彼らの悲憤の根源は、「台湾が非常に危険な状況にあるのに、どうして立ち上がらないのか」というもので、行動しなければ「台湾人」として認められないという強迫観念に囚われている。
楊照氏は、台湾の民主主義は、個々の市民が自分の生活を選択する権利を持つ社会であり、他人の見解や行動を尊重することが重要だと強調している。民主主義においては、誰を敵と見なすか、どのように問題を扱うかは各人の自由であり、その選択を尊重し合うべきだと述べている。しかし、現在のような強迫感情による社会の分裂や極端な対立は、台湾の民主主義にとって深刻な問題だと警告している。
彼は、民間での対立が高まる中で、台湾社会が互いに共存できる社会であるためには、感情的な動員を避け、日常生活を平穏に送ることができるようにすべきだと提案している。民主主義の本質は、各自が自分らしく生きることを認め合い、異なる意見を持ちながら共存する社会を目指すべきだと強調している。
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