8月1日に米国が台湾に対する対等関税を発表し、暫定税率20%を適用すると公表する以前から、台湾の一部産業はすでにより高い税負担に直面していた。締結金属、鉄鋼、自動車部品の三大産業は、すでに米国の通商拡大法232条に基づき25~50%の関税を課されており、事業者の負担は極めて重い。一方で、製薬産業のみは暫定的に免除対象となっており、現在もゼロ関税が維持されている。
このうち、締結金属産業は輸出依存度が高く、約45%の生産額を米国向けに出荷している。すでに6月から232条に基づき50%の関税が課されており、今回の20%対等関税による実質的な影響は限定的である。それよりも、台湾ドル高による価格差の方が、業界にとって大きな悩みとなっている。
台湾締結金属工業会の楊芳益総幹事は、多くの企業がすでに下流の取引先と協調し、関税負担を分担していると指摘した。しかし、新台湾ドルの為替レートが1ドル32元から29元台に上昇したことで、利益率が直接圧迫され、米ドル建てで見積もる企業にはより大きな影響となっている。
また、一部の事業者は、受注戦略を第三国での加工や原産地調整によるリスク分散に切り替えつつあると明かす。ただし、「法に触れないこと」が常に前提条件であると強調した。
三大重税産業への影響(2024年データ予測) | |||||
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産業 | 現行関税(232条項含む) | 年産値(億元) | 米国売上比率 | 中小企業割合 | 推定産業への影響(%) |
ファスナー | 50% | 1,540 | 44.8% | 90% 以上 | -9.05% |
鉄鋼 | 50% | 12,800 | 16.0% | 60% | -1.15% |
自動車部品 | 25% | 2,946 | 50.6% | 80% 以上 | -5.52% |
製薬 | 0% (暫定免除) | 1,062.3 | 40.0% | 60% 以上 | -1.35% (為替影響) |
注:2025年の米ドル対台湾ドルの為替レートが29の場合(2024年平均の32と比較し9.4%上昇)、台湾ドルで評価した際の影響となります。 データソース:産業研究院「トランプ対等関税影響分析報告」(2025/8/1) |
鉄鋼業界は中上流で供給維持、下流は受注様子見
台湾の鉄鋼産業は2024年の生産額が1兆2,800億台湾元に達し、国内でも数少ない大型エネルギー重工業の一つである。中鋼の対米輸出比率は高くないものの、下流の鉄鋼利用産業は輸出志向が明確であり、関税や為替変動による影響は看過できない。
鉄鋼労組の沈錦全総幹事は、輸出産業の受注減速により内需も連動して落ち込み、中上流の生産体制は適度な調整が求められていると指摘した。中鋼の程維徳処長は、同社が一部生産ラインの定期整備やスケジュール調整を進め、顧客と柔軟な出荷時期を協議していると明かした。その目的は、供給の安定と価格維持を確保しつつ、生産能力の柔軟性を保つことにある。 (関連記事: なぜ台湾だけが「一時的な関税」に区分されるのか? 専門家が語る「頼清徳が触れない事」:トランプの罠に陥る | 関連記事をもっと読む )
自動車部品業界は様子見で再編、AM向けは増産継続
台湾の自動車部品輸出額は2,900億台湾元を超え、対米販売が全体の半数を占める。アフターマーケット(AM、補修・交換用)市場の安定性を背景に、一部のメーカーは増産に向けた工場拡張を進めている。