台湾が土壇場で20%重税を突如発表 英紙報道が示すその背景と理由

2025-08-04 10:25
2025年7月13日。アメリカ大統領ドナルド・トランプ氏がエアフォースワンに搭乗し、ワシントンへ向かう準備をしている。(写真/AP提供)
2025年7月13日。アメリカ大統領ドナルド・トランプ氏がエアフォースワンに搭乗し、ワシントンへ向かう準備をしている。(写真/AP提供)
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今年4月2日の「解放日」に続き、8月1日、世界の貿易秩序は再び米国のドナルド・トランプ大統領による関税決定で揺さぶられた。しかし、新たな関税を発表した当日、トランプ氏が公に語ったのは、ホワイトハウスの新築計画やスポーツ選手の話題であった。多数のスター選手に囲まれて登場した同氏は、軽く言及するにとどめた。「われわれはいくつもの合意をまとめている……つい先ほどもいくつか決まったが、君たちが今それに関心があるかはわからない。正直、話すのも面倒だ」と述べたのである。

英紙『フィナンシャル・タイムズ』は、この一見無関心な発言は、実は周到に仕組まれた嘲笑に近いと指摘する。その矛先は、交渉期限が迫る中で必死に説得を試みていた貿易相手国、台湾、インド、カナダである。期限が近づくにつれ、これらの国々は無力感と失望を深めていた。この、まるで「ロシアンルーレット」のような関税ゲームは、トランプ政権内の混乱した意思決定過程を浮き彫りにするとともに、世界の同盟国に対し、この大統領の気まぐれで取引至上の本質を鮮明に示す結果となった。

決策のブラックボックス

トランプ政権の貿易政策は、矛盾と不確実性に満ちている。今年4月2日に「解放日」と呼ばれる貿易戦争を仕掛けて以来、米国の姿勢は一貫して気まぐれであった。トランプ氏はまず「対等関税」を掲げて世界市場を恐怖に陥れたが、すぐに停止した。中国との貿易戦争を急速にエスカレートさせ、世界経済の減速懸念を招いたかと思えば、直後には休戦に応じた。このため批判者からは「臆病者トランプ(Taco doctrine)」との揶揄も生まれた。さらに、メキシコやカナダには早々に関税を課しながらも、大半の製品を免除するというちぐはぐな対応を繰り返してきた。

英紙『フィナンシャル・タイムズ』によれば、8月1日の新たな関税に関する大統領令が発表される数時間前まで、ホワイトハウス内部では激しい議論が続いていたという。関係者の話では、トランプ氏自身がどの国を制裁し、どこを免除するかを決めかね、揺れ動いていた。最終局面で同氏は財務長官スコット・ベッセント氏、商務長官ハワード・ルートニック氏、米通商代表ジェイミソン・グリア氏ら核心メンバーを集め、オーバルオフィスで数時間にわたる非公開会議を行った。

その間、各国の交渉団や世界のメディアは、トランプ氏のSNSを何度も更新しながら、ホワイトハウス西棟から発せられるわずかな情報に希望を託すしかなかった。そして米東部時間7月31日午後7時30分過ぎ、突如として連続的に発表された関税の新告知は、米国の最重要同盟国の多くを完全に不意打ちにしたのである。 (関連記事: なぜ台湾だけが「一時的な関税」に区分されるのか? 専門家が語る「頼清徳が触れない事」:トランプの罠に陥る 関連記事をもっと読む

台湾に衝撃 目前まで合意寸前から一転、20%関税へ

英紙『フィナンシャル・タイムズ』は、今回の結果は台湾にとって特に衝撃的であると指摘する。交渉に詳しい関係者によれば、世界有数の半導体輸出地である台湾は、実は約1か月前には米国との合意に極めて近づいていた。しかし、ホワイトハウスは台北側の提案を棚上げした。トランプ氏が、中国とのより大きな交渉や、開催の可能性があった「トランプ・習会談」への影響を懸念したためである。さらに、米国が半導体に課す可能性のある232条関税という不確定要素も、交渉の進展を鈍らせた。

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