米台間で関税交渉が激しさを増す中、台湾メディア《鏡週刊》のスクープ報道が産業界とネット世論を巻き込んだ大きな論争を呼んでいる。報道によれば、台湾が日本や韓国と同様に15%の関税優遇を得るために、米国政府が2つの厳しい条件を提示したという。1つは「TSMCによるインテル株の49%取得」、もう1つは「4,000億ドルの追加投資」。このニュースが報じられると、TSMC(台湾積体電路製造)は一躍、国際交渉の中心に躍り出た。
TSMCが置かれた「踏み絵」 交渉圧力の背景
報道によると、台湾の対米貿易は昨年739億ドルの黒字を記録しており、これは日本や韓国を大きく上回る。この大幅な貿易黒字こそが、米トランプ政権が台湾製品に20%の関税を課している主な理由とされる。
このような交渉圧力のもと、TSMCの魏哲家董事長(会長)は難しい選択を迫られている。いずれの条件も企業経営に多大な影響を与える可能性がある。既にTSMCは米国で1,650億ドルを投じて半導体工場を建設中であり、さらなる大型投資や株式譲渡を求める米国の要求に対して、世論からは「米国による過度な圧力ではないか」との批判も上がっている。
SNSで賛否両論、「TSMCは国のために犠牲を」との声も
この報道を受け、台湾国内のネット掲示板では白熱した議論が巻き起こっている。
「TSMCがちょっとくらい犠牲になって台湾を救ってくれ」と企業に国家的責任を求める声がある一方で、
- 「TSMCに出資させるなんて株主が許すわけがない」
- 「インテルなんて何やっても再建できない。陳立武ですら無理だった」
- 「全部の企業に関わる問題を、1社だけに押しつけるのはおかしい」
といった否定的な意見も相次いでいる。
一部のネットユーザーは冷静な視点から、「関税が上がれば価格を引き上げるだけだから、TSMCには関係ない」「232条なんてTSMCには無意味。全部顧客に転嫁できる」と指摘。また、「『消息筋によると』って、それって事実なの?」「『〜との報道』というタイトルは推測だろう」と、報道の信憑性に疑問を呈する声も目立った。
台湾経済部長の「4千億ドル」発言が火に油を注ぐ
そうした中、さらなる波紋を呼んだのが台湾の経済部長・郭智輝氏の発言だった。
報道によれば、郭氏は高雄市で産業界の代表十数人と行った非公開会合で、「米国に4,000億ドルを投資すれば関税引き下げの可能性がある」との趣旨の発言をしたという。この発言はすぐさま注目を集め、報道内容と合わせて「政府による暗黙のメッセージではないか」との憶測を呼んだ。 (関連記事: TSMC日本工場が高収益!熊本市、税収大幅増で日本政府からの補助金が不支給に | 関連記事をもっと読む )
経済部の火消し対応、ネットは「逆効果」と反発
しかし、この釈明でも世論の疑念は収まらなかった。ネット上には「経済部が厳重に否定したってことは、部長の発言はただのおしゃべりか」「例を挙げただけで、事実じゃない」「経済部長が自分の部に否定されるなんて、何のためにいるのか」といったコメントが相次いだ。