アメリカのトランプ大統領は、日本時間の8月7日未明に声明を発表した。発言の主軸はアップルによる対米投資の増額だったが、同時に「半導体やチップに対し約100%の関税を課す」とも言及した。この一言が、当初はNVIDIAやTSMCなどのハイテク株を動揺させ、時間外取引で一時1%超の下落を招いた。しかし市場がトランプ氏の発言の真意を消化するにつれ、株価は持ち直し、上昇に転じた。
アップルが米国に1000億ドルの追加投資
これまでにアップルは、今後4年間で米国に5,000億ドル(約79兆円)を投資する方針を表明しており、その中にはパートナー企業と協力してテキサス州にAIサーバー工場を建設する計画も含まれていた。今回さらに1,000億ドル(約15兆円)の追加投資を発表し、米国内での製造拠点拡大に乗り出す。協力企業には、コーニング、Coherent、環球晶の米国子会社GlobalWafers America、アプライド・マテリアルズ、テキサス・インスツルメンツ、サムスン、グローバルファウンドリーズ、Amkor、ブロードコムが名を連ねている。
ホワイトハウスはこの投資計画について、「米国製造業にとって大きな勝利であり、重要部品の国内回帰を促すとともに、米国経済と国家安全保障の保護にもつながる」と強調した。
「我々はすでに17兆ドル(約2700兆円)超の投資を引き出している!」と、トランプ氏は誇らしげに自らの成果を語った。NVIDIAによる5,000億ドル、マイクロンによる2,000億ドル、TSMCによる2,000億ドルなどの投資計画に加え、アップルは今後4年間で合計6,000億ドルを米国に投じると約束し、「米国で販売するiPhoneは米国で製造されるべき」との最終目標に向けて、大きな一歩を踏み出したかたちである。
現時点の計画によれば、アップルはテキサス州、ユタ州、アリゾナ州、ニューヨーク州で半導体チップを生産し、全米にデータセンターを整備するほか、デトロイトに製造関連の教育機関を設立し、カリフォルニア州にはレアアース回収のための生産ラインを建設する予定である。
トランプが100%関税の課税を示唆 米国で工場を建設する企業は免税の見込み
トランプ大統領は、半導体およびチップ製品に対しておよそ100%の高関税を課す方針を明らかにした。ただし、米国内に製造拠点を設けている企業については、関税の免除を認める考えも示した。「我々は半導体やチップに非常に高い関税を課すが、アップルのように米国で工場を建設中、あるいは建設を約束した企業には朗報だ。こうした企業は一切の関税を支払う必要がない」と述べた。
この発言を受けて、NVIDIAやTSMCのADR(米国預託証券)は時間外取引で短期的に下落。一方で、米国本土の半導体大手インテルは逆に株価を上昇させた。しかし、トランプ氏の発言が「対米投資を行う企業に対する優遇措置」として市場に受け止められたことで、投資家心理は急速に好転。TSMCに関しても、当初トランプ氏が言及した対米投資額は3,000億ドルだったが、その後2,000億ドル(正式発表の1650億ドルを上回る水準)に引き下げられたことから、懸念は一定程度後退した。記事執筆時点で、TSMCのADR株価は時間外取引で3%超の急騰を記録している。
編集:柄澤南 (関連記事: トランプ氏、半導体に100%関税発表 アップルなど米投資企業は免除に | 関連記事をもっと読む )
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