世界第2の市場である中国に約7,600店舗を展開するスターバックス(Starbucks)は、世界全体の約19%を占める規模を誇るものの、中国市場での業績は芳しくない。複数の中国メディアによると、近年スターバックスの中国における売上は減少傾向にあり、2024年第3四半期の売上は、中国系コーヒーチェーン「瑞幸咖啡(ラッキンコーヒー)」の半分にも満たないという。こうした背景から、スターバックスは中国事業の株式のうち70%の売却を検討しており、現在、京東(JD.com)、テンセント、高瓴資本(ヒルハウスキャピタル)など12社との交渉が進められている。
『狐財経』『紅餐網』『第一財経』『澎湃新聞』などの報道によると、7月29日に行われた決算説明会において、スターバックスのブライアン・ニコルCEOは初めて正式にこの件に言及し、「共通のビジョンと価値観を持つ戦略的パートナーを探している」と明かした。現在、20を超える有力な候補から選定を進めており、スターバックスは一定割合の株式保有を継続したい意向も示した。
報道によれば、売却対象の70%株式は複数企業が分割して取得し、各社の出資比率は最大でも30%に抑えられる見通しだという。つまり、スターバックスは依然として中国事業の筆頭株主として30%の持分を維持する構えだ。
売上不振の原因は?瑞幸の「低価格×デジタル戦略」が優位に
スターバックスの中国事業売上は、2021年度のピークである37億ドルから2024年度には30億ドルへと減少。第3四半期決算では、中国での売上が前年同期比8%増の7億9,000万ドルとなったが、客単価は4%減少した。
こうした背景には、中国の消費市場全体の低迷と、低価格志向の定着がある。多くのコーヒーブランドが客単価の低下という共通の課題に直面しており、激化する競争の中で、スターバックスのブランドポジションと価格設定が中国市場に適応しきれていないという指摘もある。
特に地場ブランドである瑞幸咖啡は、スターバックスにとって最大の競合として急成長を遂げている。2024年第2四半期の決算では、瑞幸の売上が前年同期比47.1%増の123.59億元に達した。

瑞幸の2大戦略:多様な新商品と徹底したデジタル化
瑞幸咖啡は近年、「大拿鐵(ビッグラテ)」シリーズを軸に、ミルクの風味や口当たりに特化した商品開発を展開。年間100種類以上の新商品を投入し、2024年第3四半期に発売された「軽軽茉莉・軽乳茶」は、発売初月で4,400万杯の売上を記録するなど爆発的なヒットを生んだ。
さらに、創業当初から「テイクアウト+デリバリー」のデジタル運営モデルを採用し、原材料や味覚のトラッキング、飲料トレンドの分析をデータドリブンで実行。新商品開発にもデータを活用することで、常に新しさを提供している。
また、会員制度やオンライン注文サービスなどのデジタル基盤も強力で、若年層の支持を得ている。これに対し、スターバックスはデジタル戦略において後れを取っているとされ、今後はデリバリーのカバレッジ拡大や直感的な会員アプリの開発といった取り組みが急務とされている。
専門家の見解:スターバックスの中国市場における課題
専門家は、スターバックスが中国市場で直面する課題として「地場ブランドの台頭」と「消費者ニーズの変化」の2点を挙げる。瑞幸咖啡は、生椰ラテやミルクティー系商品など、中国の消費者の好みに合わせた商品開発を積極的に展開している。一方、スターバックスの伝統的な商品ラインナップや接客スタイルは、新世代の中国人消費者にとってはやや魅力に欠ける可能性がある。
スターバックスが今後も中国市場で競争力を維持していくためには、商品の多様化、価格戦略の見直し、そしてデジタル化の加速が不可欠となるだろう。
編集:柄澤南 (関連記事: スターバックス、台湾全土のおすすめ店舗をチェック!:ヨーロッパ風庭園、童話の小屋で写真とコーヒーを楽しんで | 関連記事をもっと読む )
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