米OpenAIは日本時間8日未明、最新のフラッグシップモデル「GPT-5」を正式に発表した。数学、科学、金融、法学といった専門分野において、従来を大きく上回る性能を有するとしており、文章生成、プログラム開発、推論分析などにおける高度な処理能力が特徴とされる。
OpenAIのサム・アルトマンCEOは、「人類史においてかつてない進展だ」と表現し、「GPT-5のような技術は、過去のどの時代にも想像し得なかった」と語った。
GPT-4oから何が進化したのか 主な技術的特徴
GPT-5では、前モデルであるGPT-4oと比較して、以下の点で大幅な性能向上が図られている。
- 推論能力の深化:複雑な課題に対して多段階での分析と応答が可能に。
- プログラムのコーディングがより正確に:SWE-bench Verifiedにおいて74.9%の正答率を記録。AnthropicのClaude Opus 4.1やGoogleのGemini 2.5 Proを上回った。
- 誤情報の抑制:幻覚」と呼ばれる誤応答の発生率がGPT-4o比で45%減少。
- マルチモーダル処理の強化:より長文の処理や画像入力、エッジコンピューティングへの適応が可能に。
- リアルタイムの個別最適化:チャットテーマやAIの「性格」をカスタマイズできるほか、GmailやGoogleカレンダーとの連携にも対応。
さらにGPT-5では、複数モデルを統合したアーキテクチャが採用され、ユーザーがモデルを切り替える必要なく、用途に応じた推論モードが自動的に適用される。
4つのバージョンで用途別に展開
OpenAIは、異なるユーザー層や利用シーンに応じて、以下の4つのバージョンを用意している:
バージョン名 | 特性と用途 | コスト定位 |
---|---|---|
GPT-5 | 企業や高度な研究向けのフラッグシップモデル | 高 |
GPT-5 Pro | 計算性能と推論力をさらに強化した進化版 | 高 |
GPT-5 mini | 開発者や一般ユーザー向けの中価格帯モデル | 中 |
GPT-5 nano | モバイル機器やエッジ端末向けに最適化された軽量版 | 低 |
同日より、GPT-5はChatGPTに組み込まれており、無料ユーザーにも一部機能が提供されるが、利用回数には制限がある。PlusおよびProの契約者は、より多くの回数と全機能へのアクセスが可能となる。さらに8月14日からは、企業・教育機関への展開も予定されており、Google DriveやSharePointとの連携を通じた業務活用が可能になる。
GrokやClaudeとの競争 戦略の主導権争いも
今回のGPT-5発表は、イーロン・マスク氏が率いる「Grok」への明確な対抗とも受け止められている。マスク氏は先月、Grokが「全分野で博士レベルを超える」と発言し、最も優れたAIと位置付けていた。
これに対しOpenAIは、無料開放を含む戦略の幅広さと応用範囲の広さで優位性をアピールしており、特にエンジニアや開発者コミュニティでのシェア獲得を狙っている。Anthropicの「Claude Code」との競合も激化している。
AIの大衆化がもたらす転換点 専門領域でも性能向上
AI専門家らによれば、GPT-5はSWE-benchやHealthBenchなど、複数のベンチマークで新たな記録を達成しており、技術的信頼性の向上が示されている。
これにより、専門性が求められるタスクや医療分野における実用性も高まっており、アルトマン氏は「無料ユーザーにも博士レベルの知識体験を提供できるのは意義ある転換点だ」と強調。企業や教育機関、研究現場にとっても、低い導入障壁と高い生産性の両立が期待されている。
編集:田中佳奈
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