米国のトランプ大統領と中国はギリギリのところで合意に達し、米中関税戦争の「休戦」を90日延長することを発表した。これにより、米国は中国に対し30%の「一時的」税率を維持し、中国は米国からの輸入品の関税を10%に引き下げ、市場は安堵の一息をついた。しかし、英国の学者によれば、中米の現在の対立が続くか、あるいは両国が奇跡的に調和に達するかどうかにかかわらず、台湾が直面する課題は非常に厳しいとの見方が示された。
国内支持率の危機
英国ロンドン大学キングス・カレッジ(KCL)の中国政治学教授で、同大学「劉氏中国研究所」(The Lau China Institute)所長のケリー・ブラウン氏は、米中関税の発表前に、欧米の交流プラットフォーム「The Conversation」で台湾が国内の混乱期にあると指摘した。民進党のリーダー、頼清徳総統が率いる政府は2024年1月の総統選でわずかに40%を超える得票率で当選した。この数字は前任者で同党の前大統領蔡英文氏よりも低い。
「中米が対立を続けるかどうかに関わらず、台湾の未来は不安定である」と題された記事で、ブラウン氏は台湾が「鯨の間のエビ」や「象が争うとき、その間で草が踏まれる」と比喩されることが多いが、台湾の現在の課題はそれだけではないことを強調している。
ブラウン氏によれば、7月下旬に台湾の24の選挙区で有権者による罷免投票が行われた。これは法律で定められた結果であり、特定の選挙区の10%の有権者が前回の結果に不満を示した場合、再投票が必要とされる。政府を支持する活動家はこれに積極的に行動した。
しかし、これらの投票結果は、民衆がかなり不満を抱いていることを示唆している。民進党が総統職を掌握しているにもかかわらず、議会では対立する野党によって法案が通らず、全ての選挙区で国民党(近年、中国寄りと批判されることのある主要な野党)支持の議員の議席が投じられ、罷免による議席の再設定は一つも達成されなかった。
ブラウン氏はまた、その前に主要な野党リーダーの一人である台湾民衆党の柯文哲氏が汚職の疑いで逮捕されたことに言及している。彼は台北市長在任中に約50万ドルの賄賂を受け取った疑いで起訴され、2024年の総統選挙中には選挙資金を虚偽申告したとされている。 (関連記事: 米中「新冷戦」は既成事実か 東大名誉教授がトランプ第2期の影響を分析 | 関連記事をもっと読む )

米国の対台立場の曖昧さ
台湾の内政問題に加え、米国の対台湾政策の曖昧さも国際社会の注目を集めている。これについて、ブラウン氏は、米国にとってトランプ氏は一貫して、中国とその最大の単一経済パートナーとの間に存在するとみなす不公平な貿易上の優位性を「是正」することに集中してきたと指摘する。こうした姿勢は長年変わらず、今年3月に米中双方が互いに関税を引き上げた後、初回の対中貿易交渉が終わった際にも、ホワイトハウスは「長年にわたる不公平な貿易慣行と対中巨額貿易赤字が、米国の雇用流出と製造業衰退を招いてきた」と声明を出していた。