米政治学者・黎安友氏が米中台関係を分析 「トランプ氏は習近平氏やプーチン氏の言葉を重視する傾向」

風傳媒『下班国際線』番組で、アメリカ・コロンビア大学政治学教授の黎安友氏を招待して対談を行う。(写真/柯承惠撮影)
風傳媒『下班国際線』番組で、アメリカ・コロンビア大学政治学教授の黎安友氏を招待して対談を行う。(写真/柯承惠撮影)

米国のドナルド・トランプ氏は、年初に大統領に就任して以降、米国・中国・台湾の三者関係を再び大きく動かしてきた。トランプ氏は中国の習近平氏と、10月に韓国で開催された「アジア太平洋経済協力会議(APEC)」の期間中、実に6年ぶりとなる「米中首脳会談」を行った。会談では台湾問題に直接言及することはなかったものの、トランプ氏が中国からの招待を受け、来年4月に中国を訪問する予定であることが明らかになり、各方面で注目を集めると同時に、さまざまな憶測を呼んでいる。来年の米中台関係がどのように展開していくのか、多くの人が関心を寄せている。

こうした中、米国を代表する中国研究者で、米コロンビア大学政治学教授の黎安友アンドリュー・ネイサン)氏が今週、特別に台湾を訪問し、『風傳媒』の番組「下班国際線」で、司会の路怡珍氏のインタビューに応じた。番組では、中国情勢や米中関係、トランプ政権の動向、さらに米中台の三角関係について幅広く議論が交わされ、中国共産党の人民解放軍が2027年に台湾へ武力侵攻する可能性に関する見解も語られた。内容は非常に示唆に富むものとなっている。

トランプ氏は習近平氏を信じるのか

米中関係や韓国で行われた「米中首脳会談」をめぐって、黎安友氏は今週放送された「下班国際線」の中で、米国のドナルド・トランプ大統領は、米中央情報局(CIA)などの情報機関の分析よりも、中国の習近平氏やロシアのプーチン氏の言葉を信じる傾向があるのではないかと指摘した。さらに番組収録後、『風傳媒』のインタビューに応じた際には、「トランプ氏は自国の国家安全保障会議を信頼するよりも、こうした強権的な指導者をナイーブに信じてしまっている」と語っている。

黎氏によれば、トランプ氏は自身の部下や米国の官僚を「対等な存在」とは見なさず、あくまで上下関係にある部下として捉えているという。一方で、プーチン氏や習近平氏のような強大な権力を持つ指導者に対しては、むしろ自分と対等な立場で意思疎通を図る相手として認識していると分析している。

20251217-風伝媒「下班国際線」番組司会者ルー・イーチェン(左)、コロンビア大学政治学教授アンドリュー・ネイサン(右)17日に番組中で対談。(撮影:コ・チェンフェイ)
2025年12月17日、『風傳媒』の番組「下班国際線」で対談する、番組司会の路怡珍氏(左)と、米コロンビア大学政治学教授の黎安友(アンドリュー・ネイサン)氏(右)。(写真/柯承惠撮影)

トランプチームに中国専門家はいるのか

トランプ氏のチームに中国問題や台湾問題の専門家がいるのか、という問いに対し、黎安友氏は、米国務長官のマルコ・ルビオ氏は中国問題の専門家に当たると指摘し、「トランプ陣営にまったく専門家がいないとは言えない」と説明した。ただし、現在の問題は、黎安友氏自身を含め、外部からはトランプ氏の国家安全保障会議(NSC)に誰が参加しているのか、その顔ぶれがほとんど分からない点にあるという。 (関連記事: トランプ再登板後の日米同盟、「米国は日本を守るか」への懸念と日本の役割拡大=千々和・防衛研究所室長 関連記事をもっと読む

黎安友氏によれば、把握しているのは、トランプ氏がNSCから華裔の副国家安全保障顧問、黄之瀚(アレックス・ウォン)氏を解任したことだけだという。さらに米国務省でも人員削減が進み、多くの職員が退職しているとした上で、「トランプ氏にまったく人材がいないとは言えないが、彼は自らのチームを弱体化させてしまった。そして何より、他人の意見に耳を傾けない」と述べた。

また、米国がロシア・ウクライナ問題への関与を縮小した場合、それがアジア太平洋政策や対中政策に影響を及ぼすのかという問いについて、黎安友氏は、米国防次官のエルブリッジ・コルビー氏の発言を紹介した。コルビー氏は、「現在、米国にとって最も重要な戦場はアジアであり、中東や欧州への関与を減らし、アジアにより注力すべきだ」との認識を示しているという。

黎安友氏は、こうした考え方は現在の米国のアジア太平洋政策における一つの立場に過ぎないものの、実際にはオバマ前大統領やバイデン前大統領も同様の見解を共有しており、決して最近になって突然現れた考え方ではないと指摘した。

エルブリッジ・コルビー(Elbridge Colby)はトランプの戦略師の一人。(Wikipedia)
米国防総省次官のエルブリッジ・コルビー氏は、ドナルド・トランプ氏の戦略構想を担う主要人物の一人とされている。(写真/ウィキペディア提供)
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