台湾・公教年金「削減停止」法案、三読へ前進か 退職者の給付水準に再び議論火種

公教年金改革が再び政界の攻防の焦点に。参考写真。(写真/柯承惠撮影)
公教年金改革が再び政界の攻防の焦点に。参考写真。(写真/柯承惠撮影)

台湾で軍人・公務員・教職員(軍公教)の年金改革(年改)が施行されてから7年以上が経過した。改革に反発する退職団体の不満は根強く、今会期も立法院(国会)での攻防の焦点となっている。先月末、いわゆる「公教年金の削減停止(所得代替率の引き下げ停止)」に関する修正案はすべて委員会で保留のまま送付されたが、協議は再び決裂した。一方、野党が議席数で優位に立つ中、国民党の翁曉玲氏(司法・法制委員会の召集委員)は、削減停止法案について「早ければ本会議で三読に進む可能性がある」との見通しを示した。これを受け、台湾基進は9日、フェイスブックで、年金改革はすでに退職公教の生活を十分に考慮しており、所得代替率も国際水準を上回ると主張。「台湾の退職公教は、週休7日で現役時代の約7割を受け取っているのと同じだ」とした。さらに、削減停止を強行する一方で税金で補填しないなら、言い換えれば「現職公教の給与で、生活に不安のない退職公教の年金を支えることになる」と訴えた。

民進党政権は2018年に年金改革を推進し、所得代替率を毎年1.5ポイントずつ引き下げる仕組みを導入した。勤続15年の場合は45%で、10年かけて30%へ、勤続35年の場合は75%で、10年かけて60%へと段階的に下げる内容だ。近く「削減停止」で藍白(国民党と民衆党)が一致したことを背景に、『公務人員退休資遣撫卹法(公務員の退職・年金制度を定めた基本法)』と『公立學校教職員退休資遣撫卹條例(公立学校の教職員を対象とする退職・年金制度の法律)』の改正草案はいずれも委員会を通過。1か月の協議凍結期間を経て、本会議での採決に進み、三読手続きが完了する可能性がある。 (関連記事: 台湾・公教年金「削減停止」にまだ波乱? 李来希氏が指摘する民進党の思惑「次はどう再び削るか」 関連記事をもっと読む

削減停止で基金破綻が前倒し 銓敘部「約7,000億元の穴埋め、国民負担に」

銓敘部(公務員の人事制度や年金制度を所管する行政機関)は、修法により退職・遺族給付基金(退撫基金、軍公教の年金原資となる基金)の収支が再び不均衡となり、公教基金の枯渇時期が2039年に前倒しされる恐れがあると警告。政府は最大で6,970億元の補填が必要になり、最終的に国民の税負担へ転嫁される可能性があるとしている。台湾基進は9日の投稿で銓敘部の数値を引用したほか、8日にも比較を示した。それによると、過去の公教年金の所得代替率は起算点が75%だったが、欧米各国では基本的に75%を超えないため、「他国では天井の水準が、台湾では最低水準になっている」状態は不正常だと指摘。「拠出が少なく、受給が多く、早期退職」という構造が退撫基金の破綻危機を招き、7年前の改革の出発点になったとして、上限を65%に引き下げた経緯を説明した。ただし台湾独自の「本俸の2倍を分母にする」計算方式があるため、退職公教の所得代替率はなお約70%前後にあるとしている。OECD(経済協力開発機構)平均の50.7%と比べても高く、日本は32.4%、韓国は31.6%だという。

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