TSMC海外投資に見る「台湾モデル」の限界 なぜ日本と米国で差が出たのか

2025-12-18 17:30
モリス・チャン氏は1996年に米国でのウエハー製造投資が失敗に終わった経験があり、アリゾナ州での工場設立計画には慎重な姿勢を示している。(写真/呉逸驊撮影)

国が「半導体の自給自足」を掲げ、地政学的リスクが深刻化する中、TSMC(2330)は近年、米国、日本、ドイツへと相次いで進出し、海外展開を加速させている。外紙の分析によれば、このグローバルな拡張は純粋な市場原理に基づく選択というより、国際政治と政策圧力によって踏み出された戦略的な一歩という側面が強い。

現在、アリゾナ州工場の実際の運営状況を巡り、「台湾モデルは複製可能なのか」という点に再び注目が集まっている。TSMCの創業者、モリス・チャン(張忠謀)氏は数十年も前から、海外進出に伴う高コストと低効率に幾度となく警鐘を鳴らしてきた。同氏が説く「TSMC成功の秘密」とは何なのだろうか。

「強いられたグローバル化」 効率とコストのジレンマ

海外メディア『Nuevopoder』は、TSMCが本来得意としていた台湾集中型の運営モデルは、効率とコストの面で世界的に比類のない優位性を誇っていたと指摘する。しかし、近年の米中ハイテク覇権争いを受け、日米欧が相次いで補助金政策を打ち出し、先端半導体の現地生産を要求。TSMCは海外工場のコスト高を承知の上で、主要顧客との関係維持と地政学的な戦略的地位を守るために、この流れに応じざるを得ない状況にある。

モリス・チャン氏が早くから海外進出に警鐘を鳴らした理由

報道によれば、モリス・チャン氏は1996年の時点で米国のウェハー工場(WaferTech)への投資に参画したが、最終的にコストの制御不能と低効率により挫折した経験を持つ。この苦い経験から、同氏は米国での工場設立に長らく慎重な姿勢を保っており、これを「高価な代償を払ったが、徒労に終わった試み」とさえ表現している。同氏の経営理念において、TSMCの競争力は単に先端プロセス技術にあるのではなく、高度に集積された産業エコシステムの上に築かれたものだからだ。

「台湾モデル」の優位性と成功の秘密

海外メディアは新竹サイエンスパークを例に挙げ、IC設計、ウェハー製造、封止・テスト(OSAT)、さらには材料・装置サプライヤーの多くが車で1時間圏内に集中している点に注目している。この高密度かつ「低摩擦」な協力ネットワークこそが、コミュニケーションや試行錯誤の時間を大幅に短縮し、TSMCが長期にわたり高い歩留まりと収益性を維持できる鍵となっている。

現在でもTSMCの生産能力と従業員の9割以上は台湾国内に留まっており、中核機能の台湾集中は変わっていない。また、TSMCが米国の従業員に対しても台湾流の仕事文化への適応を求めている事実は、同社がいかに「台湾モデル」に依存しているかを浮き彫りにしている。 (関連記事: NVIDIAだけではない競争優位の揺らぎ 専門家警告「TSMCもこの企業に切り崩されつつある」 関連記事をもっと読む

アリゾナ州工場が直面する現実的な課題

リゾナ州工場には台湾並みの効率性が期待されていたが、実際の運営には多くの課題が山積している。4ナノメートル(nm)プロセスにおいて一定の競争力は確保しているものの、製造コストは依然として高く、原材料や装置の供給網も不十分で、主要部品は依然としてアジアのサプライチェーンに頼らざるを得ない。

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