伊藤詩織監督『BLACK BOX DIARIES』日本公開へ FCCJで会見、「自分自身を検閲していた」配給の壁と真実への覚悟を語る

伊藤詩織監督は、自身の性被害を記録した映画『BLACK BOX DIARIES』の日本公開を前に会見し、国内配給の難壁を乗り越えて社会の「ブラックボックス」を開く決意を語った 。(写真/FCCJ提供)

ジャーナリストで映画監督の伊藤詩織氏は12月15日、自身の性被害体験と真実を追求する過程を記録したドキュメンタリー映画『ブラック・ボックス・ダイアリーズ(Black Box Diaries)』の日本公開に先立ち、日本外国特派員協会(FCCJ)で記者会見を行った。会見にはプロデューサーのエリック・ニアリ氏とハンナ・アクヴィリン氏も登壇し、制作の経緯や日本公開に至るまでの困難、そして作品に込めた思いを語った

本作のプロデューサーであるハンナ・アクヴィリン氏は、2017年に伊藤氏がロンドンで会見を開いた際に彼女と出会ったと明かした。当時、スウェーデンの公共放送の記者だったハンナ氏は、伊藤氏と同世代であり、彼女の告発が自分事のように感じられたと語る

伊藤氏が孤独や恐怖を感じているのを目の当たりにし、この映画を共に作るための対話を始めたという。伊藤氏は当初、自身の物語を伝えることに抵抗を感じていたが、友人たちが撮影に協力してくれたことで、自分自身の姿を客観的に記録することができたと振り返った。400時間以上に及ぶ映像素材の中には、トラウマにより伊藤氏自身が記憶していない場面も含まれており、編集作業は過去の自分と向き合う過酷なプロセスだったと明かした

会見では、映画内で使用された防犯カメラ(CCTV)映像の扱いについても質問が及んだ。伊藤氏は、ホテルやタクシーの形状、通行人の顔などをVFX(視覚効果)で加工し、プライバシーや許可の問題に対処したと説明した

しかし、伊藤氏と相手(山口氏)の動きだけは変更せず、唯一の視覚的証拠としてそのまま使用することにこだわったという。これは、捜査員に対し自身の証言が嘘ではないことを証明するための重要な証拠であり、映画においても真実を伝えるために不可欠な要素だったと強調した。また、捜査に関わった警察関係者の描写についても、身元を特定されないよう配慮しつつも、組織的な隠蔽疑惑があったことを踏まえ、事実を提示する権利があると主張した

本作は2024年のサンダンス映画祭で初公開され国際的な注目を集めたが、日本での公開決定までには長い時間を要した。その背景について伊藤氏は、日本国内での配給において「検閲」に近い壁があったことを示唆した。多くの配給会社が、政治的な敏感さやCCTV映像の使用を懸念し、二の足を踏んだという。しかし、制作会社スターサンズが早期から支援を表明し、その後、東映ビデオや日活がプロジェクトに参加したことで、ようやく日本公開への道が開かれたと経緯を語った

伊藤氏は、自身の体験を「ブラックボックス」に例え、映画を通じてその箱を開け、共有することの重要性を訴えた。劇場では観客が自身の経験や思いを共有できる仕組みも用意されているという。伊藤氏は、この映画が単なる個人の物語にとどまらず、社会全体の意識を変えるきっかけになることを願っていると締めくくった

編集:小田菜々香

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