舞台裏》台湾・国民党のネット戦、朱立倫氏が主導権 鄭麗文氏チームは苦戦

2025-12-18 17:22
国民党の現職党主席・鄭麗文氏は就任後、新たな新メディアチームを編成したが、これまでの成果に党内では高い評価が定まっていない。(写真/柯承惠撮影)
国民党の現職党主席・鄭麗文氏は就任後、新たな新メディアチームを編成したが、これまでの成果に党内では高い評価が定まっていない。(写真/柯承惠撮影)

インターネットの世界が発展して以来、SNSは新たな政治宣伝や情報拡散の主戦場となった。古くからのBBSサイト「PTT」から、一世を風靡したFacebookやInstagram、近年台頭したThreads、さらにはTikTokや小紅書(RED)に至るまで、細分化されたネット空間は各政党にとっての「兵家必争の地」である。政党や政治家がこれらの新メディアをどう運用し、いかに強力なネット軍事力を保持しているかは、政治的議題を急速に拡散させるための鍵となっている。

かつて新メディア分野で後手に回っていた国民党(藍陣営)だが、朱立倫氏が党主席を務めていた期間にその戦力は好転し始めた。蔡英文氏から現職の頼清徳氏に至る民進党(緑陣営)政権の9年間で蓄積された民怨を背景に、国民党は風刺動画『ライヤー校長(萊爾校長)』シリーズを制作。これが民進党政権と頼清徳氏の施政を痛烈に皮肉る社会現象を巻き起こし、国民党のネット戦略の進化を印象付けた。しかし、2025年11月に鄭麗文氏が党主席に就任し、新たな広報チームを導入して以降、そのパフォーマンスは党内を納得させるレベルに達していない。この「空中戦(ネット戦略)」の空白を突くように、党内の他派閥が介入の動きを見せている。

20250819-国民党内統計、この波ネック校長のデータ、8月19日までの国民党公式データ、YTで視聴数45.6万に達した。(中国国民党KMT YTより)
国民党が制作した『ライヤー校長(萊爾校長)』は、民進党政権と頼清徳氏を風刺し、全台湾で大きな旋風を巻き起こした。(国民党公式YouTubeより)

攻撃を嫌う新広報チーム 反応の鈍さに党内から不満

『風傳媒』が11月2日に報じたところによれば、国民党の広報部門である文伝会の副主委(副委員長)には、党内で「TikTokのプリンス」と称される林益諄氏(基隆市議会の元議長・宋瑋莉氏の息子)が就任した。林益諄氏は新メディア部の主任こそ兼任しなかったものの、自身のチームを党中央に送り込み、音楽プロデューサーの王安国氏を新メディア部主任に据えた。当初、孫文(国父)の生誕記念日に行われたダンスパフォーマンスなどは「新鮮だ」と好意的に受け止められたが、AI動画の制作ミスで党旗の「青天白日」の紋章を不適切に扱うなどの失態もあり、党内評価は分かれている。

最大の懸念は、朱立倫氏時代と比較した「議題への反応スピード」と「攻撃力の欠如」である。朱氏の時代は、民進党がFacebookで攻撃的な文宣を発信すれば、国民党の新メディア部は即座に図解資料(インフォグラフィック)を制作して反撃に転じ、記者会見も週に数回行うスピード感があった。しかし、林益諄氏率いる現在の広報チームは、鄭麗文氏の短編動画制作に注力する一方で、高度な政治的攻防への理解が乏しい。多くの党公職者からは「対応が遅い上に内容が空虚だ」との不満が漏れている。関係者によれば、林益諄氏が「自身の役割はポジティブな宣伝に限定されるべきだ」と考え、敵陣営への攻撃を拒んでいることが最大の要因だという。 (関連記事: 舞台裏》財劃法を巡り卓栄泰行政院長が板挟みに 強硬対応の一方で党内調整進まず、民進党内部から「憲政のルール逸脱」批判相次ぐ 関連記事をもっと読む

こうした空中戦の窮地を受け、党内からは独自の「外援」を求める動きも出ている。最近、党の連絡グループに加わった林政諺氏もその一人だ。同氏は地方政治の経験はあるものの、大規模なネット戦略の指揮を執れるかは未知数であり、今後の動向が注視されている。

基隆前議長宋瑋莉(右)、息子林益諄(左)。(林益諄のフェイスブックより)
基隆市議会の宋瑋莉・前議長(右)の息子で、国民党の文伝会・副主任委員を務める林益諄氏(左)。ただ、攻撃の切れ味が弱いとの指摘も出ている。(写真/林益諄氏のフェイスブックより)
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