改革開放はなぜ強権体制へ転じたのか ミンシン・ペイ教授、中国15次五カ年計画と台湾戦略を読み解く

米クレアモント・マッケナ大学のミンシン・ペイ教授は15日、日本記者クラブで講演し、中国の第15次五カ年計画は安全保障と戦時動員を強く意識した内容となり、台湾に対しては戦争ではなくグレーゾーンで圧力を強める戦略が進んでいるとの見方を示した。(写真/日本記者クラブ提供)

日本記者クラブは12月15日、「中国で何が起きているのか」(第32回)研究会を開き、米クレアモント・マッケナ大学政治学教授のミンシン・ペイ氏が講演した。文化大革命後の反省を踏まえて鄧小平氏が始めた改革開放が、なぜ習近平政権下で強権的な統治構造へと転化したのかについて、近著『The Broken China Dream: How Reform Revived Totalitarianism』の議論を踏まえ、中国の第15次五カ年計画(2026~2030年)の特徴、外交・国内政策の優先順位、台湾政策の変化を中心に見解を示した

ペイ氏は、第15次五カ年計画について、第14次計画と比べて「革新の方向性自体に大きな違いはない」とした上で、重点の移動を指摘した。第14次計画が科学技術の自立・実用化を重視していたのに対し、第15次計画では、伝統産業の高度化、全国的な戦時動員能力の向上、戦略的後方地域の構築など、安全保障を強く意識した内容が前面に出ていると述べた。背景として、ロシアによるウクライナ侵攻の教訓が中国の政策判断に大きな影響を与えたとの認識を示した。

また、今回公表された計画関連文書では、従来強調されてきた「平和と発展が時代の主題である」という表現が姿を消した点を重視し、中国指導部が世界情勢をより悲観的に捉えていると分析した。安全保障に関する記述が増え、政策提言が具体化していることから、中国が大規模な戦争の可能性を現実的に想定していることが読み取れると指摘した。

国内経済については、伝統的製造業の競争力強化が強調されている点に言及し、これは産業空洞化を防ぐ狙いと、軍需産業とも密接に関係する基礎産業を維持するという安全保障上の判断があると説明した。一方で、中国経済が持続的成長を実現するには、統一市場の形成や成長モデルの転換、法制度の整備が不可欠だとし、これらは現行の政治体制下では極めて困難だとの認識を示した。

対外政策では、米中対立は長期化するとした上で、今後数年間は中国にとって力のバランスが不利な局面が続くとの見方を示した。そのため、中国の中期的な戦略目標は「時間を稼ぐこと」にあり、米国との正面衝突を避けつつ、段階的に主導権を回復する構えだと説明した。

台湾政策については、統一を最終目標とする基本方針や、平和的手段と軍事的手段を併存させる姿勢に変化はないとしつつも、戦争ではなく「グレーゾーン」での圧力を長期的に強める方向に戦略が移行していると分析した。軍事演習の常態化などを通じて緊張を高め、台湾側が現状維持に支払うコストを引き上げる狙いがあると述べた。

講演後の質疑では、日中関係や米中関係、台湾情勢の見通しなどについて議論が交わされた。ペイ氏は、中国の対日姿勢について、戦略的には近隣国との大きな摩擦を避けるべき局面であるにもかかわらず、強い反応を示している点は想定を超えるものだと述べ、今後は時間の経過とともに調整の余地を探るほかないとの見方を示した。

研究会は、日本記者クラブ企画委員で日本経済新聞社の高橋哲史氏が司会を務め、会場とオンラインを通じて行われた。

編集:小田菜々香

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