高度3万6000キロの静止軌道で「宇宙のドッグファイト」常態化 米巡視衛星vs中国機動衛星、WP報道が描く新局面

2022年2月4日、米宇宙飛行士のマーク・バンデ・ヘイ氏が国際宇宙ステーションから地球を見下ろした。(写真/AP通信)
2022年2月4日、米宇宙飛行士のマーク・バンデ・ヘイ氏が国際宇宙ステーションから地球を見下ろした。(写真/AP通信)

地上から3万6000キロ離れたはるか高空で、音なき「宇宙のドッグファイト」が激化している。ワシントンポスト(18日付)は、米軍の巡視衛星「USA 270」が静止軌道上で中国の衛星を待ち伏せしようとした際、映画『トップガン』さながらの「急ブレーキによる逆転」戦術で返り討ちに遭った実態を報じた。もはや宇宙戦はSFの話ではない。衛星を「捕獲」する中国のロボットアームから、マトリョーシカのように兵器が飛び出すロシアの軌道兵器まで、大国間の覇権争いはすでに大気圏を突破している。

2022年、地上から約3万6000キロ離れた宇宙空間で、米国の巡視衛星USA 270はある標的に狙いを定めた。打ち上げられたばかりの中国の衛星「実験12-01」と「実験12-02」だ。これらが向かっていたのは、宇宙で最も戦略的価値が高いとされる「静止軌道(GEO)」だった。USA 270は熟練の戦闘機パイロットのように背後から忍び寄り、太陽光を背負って自らの姿を隠しながら、前方の獲物を詳細に観測しようと試みた。

しかし、中国の衛星は突如として減速し、反撃に転じる。慣性で突き進むUSA 270をやり過ごすと、中国側は一気に米衛星の背後を取り返した。映画『トップガン』でトム・クルーズ演じるマーヴェリックが見せた、急ブレーキで敵機を前方へ出し、背後を奪う伝説の機動「ハード・ブレーキ」を再現したかのようだった。瞬時にポジションを入れ替えられた米国の運用担当者は、戦術の立て直しを余儀なくされた。

ペンタゴン(米国防総省)および北京当局はこの交戦を公に認めたことはない。こうした事象は肉眼では見えない場所で起きるため、宇宙や国防の専門家を除けば、気づく者はほとんどいないのが実情だ。しかしワシントン・ポストは、宇宙における「軌道上の対峙」はすでに常態化しており、国防当局者はこれを宇宙における「ドッグファイト(戦闘機の空中戦)」と見なしていると指摘する。

異なる国の衛星が至近距離を高速ですれ違い、戦略的優位を争って機動を繰り返すことは、宇宙の軍事化における新たな局面であり、その重要性は増す一方である。衛星は軍事覇権を維持するための鍵であり、大国間の技術競争が激化する中で、その緊張もまた高まり続けている。

宇宙監視

国防アナリストによれば、宇宙での格闘の大部分は実のところスパイ活動である。近距離から相手の衛星を撮影し、そこに搭載されているシステムや機能を把握することが主な目的だ。各国は衛星が発する信号やデータを傍受し、宇宙と地上の間の通信を遮断することもある。また、多くの衛星は、ミサイル警戒や偵察、部隊への重要情報の伝達を妨害し、あるいは無力化する能力さえ備えている。 (関連記事: 高輪ゲートウェイに次世代型ミュージアム「MoN Takanawa」誕生 マンガ、宇宙、歌舞伎も“体験”へ 関連記事をもっと読む

広大な宇宙空間において、衛星は時速約2.9万キロメートル(マッハ23相当)という猛烈なスピードで移動しており、たとえ20キロメートルの距離であっても、専門家の目には「不穏な近距離」と映る。航空機のドッグファイトとは異なり、こうした軌道上のポジション争いは通常数時間、時には数日間に及ぶ。かつて衛星は、一度軌道に投入されると、燃料節約のために一定の進路を維持して飛行するのが常だった。しかし現在、ペンタゴンや中国、ロシアなどは、航空機のように柔軟な操作が可能な衛星を運用している。これらは急旋回や加減速、さらには並走までもが可能だ。

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