トップ ニュース TSMCアリゾナ工場、来夏に3ナノ設備を設置へ 技術者は段階的に台湾で研修、2027年量産を目指す
TSMCアリゾナ工場、来夏に3ナノ設備を設置へ 技術者は段階的に台湾で研修、2027年量産を目指す TSMCは米国アリゾナ州フェニックス近郊で新工場の建設を進めている。(写真/TSMC提供)
TSMC(台湾積体電路製造)の米国アリゾナ州における先進プロセス展開は、建設段階から「技術移転」と「実際の生産」に向けた重要局面へと移りつつある。
『日経アジア』およびテック系メディア『Wccftech』によると、TSMCは2026年夏にも、アリゾナ州の第2工場に3ナノメートル(nm)プロセス向けの製造装置を設置する計画で、2027年の量産開始を見据えた準備を本格化させる。
先進プロセスの立ち上げを加速させるため、TSMCは人材育成にも着手している。アリゾナ工場に配属された数百人規模のエンジニアを段階的に台湾へ派遣し、3ナノおよび2ナノプロセスの研修を実施。将来の試作・量産フェーズに備える。
『日経アジア』が複数の関係者 の話として伝えたところによると、第2アリゾナ工場への装置搬入は2026年第3四半期(7〜9月)を想定しており、当初計画されていた2028年の稼働時期から大幅な前倒しとなる。この動きは、TSMCの魏哲家・董事長兼CEOが示してきた「米国での生産能力構築を加速する」戦略と軌を一にする。
アリゾナでの取り組みは、すでに構想段階を超えている。『日経アジア』によれば、TSMCが海外で初めて稼働させた先進工場となるアリゾナ第1工場では、すでにアップル向けの一部チップ生産が始まっており、NVIDIAの最新AI向け「Blackwell」チップの製造にも関与している。TSMCの先進プロセスが台湾以外で実際に量産段階へ入った象徴的な事例といえる。
投資規模の拡大に伴い、アリゾナ州の戦略的重要性も高まっている。フェニックス北部では、TSMCを中核とする最先端チップ生産拠点の形成が進み、主要顧客に追随する形で部材・装置メーカーが米国投資を検討する動きも広がりつつある。現地サプライチェーンの構築が徐々に現実味を帯びてきた。
一方で、業界関係者は、先進プロセス工場は装置設置後すぐに量産できるわけではないと指摘する。設備搬入後も、製造ラインの認証や歩留まり改善など「生産能力の立ち上げ(ランプアップ)」に約1年を要するのが一般的だ。3ナノプロセスでは工程数がすでに1000を超え、技術移転と検証の難易度は極めて高い。TSMCがエンジニアを台湾で集中的に訓練する背景には、こうした事情がある。
『Wccftech』の報道 によると、現在アリゾナ第1工場は4ナノおよび5ナノプロセスが中心で、台湾で3ナノ・2ナノの詳細を学んだエンジニアが加わることで、将来的に米国拠点がより先進的なプロセスへ円滑に移行することが期待されている。
需要面では、AIブームがTSMCの米国依存度を一段と高めている。『日経アジア』によると、2025年第3四半期時点で、TSMCの売上高に占める米国顧客の比率は76%に達した。NVIDIA、Apple、AMD、Intel、Googleといった米国企業が先進プロセスの主要顧客であり、アリゾナでの立ち上げを後押しする最大の原動力となっている。
2025年11月8日、TSMCのC.C.ウェイ 会長兼CEO(左)と、NVIDIAのジェンスン・フアン氏(右から3人目)が「TSMC運動会」に出席した。(写真/顏麟宇撮影)
これに対し、他の海外拠点では拡張ペースを慎重に見極める動きも出ている。TSMCは日本・熊本で計画していた第2工場の建設を一時停止し、市場需要やプロセス戦略を再評価中だ。成熟プロセス向けチップの需要回復が鈍く、装置導入計画にも影響が及んでいるという。
長期的には、TSMCのアリゾナ州への総投資額は1650億ドルに達する見通しで、5つのウエハー工場、2つの先進パッケージング工場、さらに研究開発センターの建設が計画されている。計画がすべて完了すれば、TSMCは最先端プロセスチップの約30%を米国で生産できる体制を整えることになる。
『日経アジア』がアリゾナ計画の進捗についてTSMCにコメントを求めたところ、同社は詳細な説明を避け、魏哲家氏が10月に公の場で述べた「主要顧客に加え、連邦・州・地方政府の支援を受けながら、アリゾナでの能力拡張は計画通り着実に進んでいる」との発言を改めて紹介するにとどめた。
装置導入と人材育成が同時並行で進む中、TSMCが2027年にアリゾナで3ナノ量産を予定通り実現できるかどうかは、米国が先端半導体製造能力を本格的に獲得できるかを測る試金石となる。AI時代における世界の半導体サプライチェーンの行方を占う重要な節目でもある。
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