台湾時間12月19日夕方午後5時24分から5時30分ごろにかけ、台北駅周辺および台北メトロ(台北捷運)台北駅の出入口付近で、相次いで無差別襲撃事件が発生した。複数の初期情報によると、台北駅・板南線(ブルーライン)のM7出口付近で、容疑者が煙幕弾とみられる物体を投擲した疑いがあり、現場では爆発音が響き、濃い煙と強烈な刺激臭が急速に拡散した。
ラッシュ時間帯と重なったため、群衆は緊急避難を余儀なくされ、混乱の中で「火事だ!」と叫ぶ声も上がり、駅構内外では一時、押し合いや逃走が発生した。現場は交通の要衝に位置することから、警察は本件を重大な公共安全事件として対応し、「テロ攻撃」レベルの警戒態勢で捜査に着手した。
【12月19日20時20分時点の続報】
軽傷・重傷を含め8人が負傷した。このほか、40歳の男性1人が、容疑者が投擲した凶器を防ごうとしたとみられ、搬送先の病院で治療を受けたが、傷勢が重く死亡した。
煙が拡散し、ホームの列車が一時通過扱いに
今回の「テロ攻撃」による煙は、駅外の連絡通路にとどまらず、隣接する出入口へと流れ込み、さらには板南線(ブルーライン)台北駅のホーム階にも影響が及んだとされる。現場に居合わせた市民は「匂いが非常に刺激が強く、マスクをしていても全く防げなかった」と証言しており、煙の刺激性と影響範囲の大きさがうかがえる。
台北メトロによると、台北駅・板南線(ブルーライン)のホームは一部で煙の影響を受け、運行管理センターはSOP(標準作業手順)に基づき、一時的に一部列車を通過扱いとした。煙が消散した後、通常停車に戻ったという。地下鉄は高密度の人流空間であり、意図的に煙を発生させる行為は短時間で恐慌を拡大させる恐れがあることから、警察が本件を「テロ攻撃型事案」として位置づけた理由の一つとなっている。
容疑者の実名・身元は
台北市の蔣萬安市長は夕方、現場に急行して指揮を執り、容疑者は同日午後5時30分ごろ、台北駅および中山駅で相次いで煙幕弾を投擲し、刃物で人を負傷させたと説明した。台北メトロはすでに緊急対応メカニズムを起動し、乗客の避難誘導に協力しており、列車の運行は段階的に回復しているが、警戒および巡回は全面的に強化されるという。
蔣市長によれば、事件に関与した容疑者は本国籍の27歳の男、張文容疑者と特定されており、兵役妨害事件で指名手配中だった。犯行後、容疑者は中山駅周辺の誠品商場に逃げ込み、転落して病院に搬送された。関連する事件の経緯や犯行動機については、警察が引き続き調査中であり、市政府が統一して対外説明を行う方針だとしている。
卓榮泰行政院長が現場入り 警察に徹夜での追跡捜査を指示
卓氏によると、警察はすでにマスクを着用した容疑者の外見や行動特性を把握しており、初動の分析では、容疑者は午後5時25分ごろ、M7およびM8出口付近で意図的に5~6個の火炎瓶または煙幕弾を投げたとみられる。また、所持していたスーツケースからも一定数の関連物品が発見されており、通行人に危害を加える明確な意図があったと判断されている。
現在、1人の市民が鈍器による強打でOHCA(院外心肺停止)状態となり、台大医院で救命措置が続けられている。また、煙による呼吸器障害で搬送された市民もおり、容体は安定しているという。卓氏は警察に対し、徹夜での容疑者追跡と単独犯かどうかの解明を指示するとともに、警政署に対し、全国の鉄道駅、地下鉄駅、空港の警戒レベルを即時引き上げるよう命じた。あわせて、市民に対しては一時的な規制への協力を呼びかけ、事件の早期解明と社会秩序の安定を図る姿勢を示した。
死傷者情報は更新中 商業施設の警備員が客を守ろうとして刺され重体か
死傷者については、当初、現場で倒れている市民がいるとの情報が伝えられ、警察と消防が到着後、直ちにCPRを実施して病院に搬送した。その後、搬送前にすでに生命兆候がなかったとの情報も流れたが、最新の情報では「重傷9人、うち4人が重体」とされている。
中でも、南西地区の百貨店に勤務する警備員1人が、客を誘導または保護しようとした際、容疑者に刃物で襲われ、大量出血の末、一時は生命の危険にさらされたとされる。現場は多くの人が行き交う区域であり、医療救護と封鎖・鑑識作業が同時進行で行われた。
警察は、負傷者数や詳細については正式発表を待つ必要があるとしつつも、本件は単なる煙幕事案を超え、連続攻撃事件に発展しており、公共恐慌と重大な人的被害リスクを伴う「テロ攻撃」の特徴を有しているとの認識を示している。
二段階攻撃の可能性 警察は動機と計画性を追及
現場の目撃証言や複数の情報を総合すると、容疑者は「まず煙幕で混乱を引き起こし、その後に刃物で攻撃する」という二段階の手口を用いた疑いがある。煙幕弾投擲後、容疑者は一度現場を離れ、その後、中山駅周辺に現れ、長刀を所持して南西商業施設付近に入ったとの情報がある。
また、台北駅M8出口下方のエスカレーター付近でも、煙幕弾または不明な化学物質が投げ込まれた可能性が指摘されている。警察は現在、容疑者の移動経路、投擲物の入手経路(自作か、軍用品の可能性)、行為に計画性や特定の目的があったかどうかを重点的に捜査している。
特に、目撃者の中には、容疑者が「専門的な防毒マスク」や「フルフェイス型防毒マスク」を着用していたと証言する者もおり、こうした装備は突発的に入手できるものではないことから、事前準備や逃走・追跡回避の意図があった可能性が、「テロ攻撃」としての動機判断における重要な手がかりとされている。
時系列整理 現場通報と公式対応が交錯
台北駅M7出口付近で爆発音と濃煙が発生、市民が「火事だ!」と叫び避難が始まる
●警消到着後
倒れている市民を発見、現場でCPRを実施し搬送。警察は封鎖線を張り、鑑識を開始
●容疑者が台北駅を離れ中山駅周辺へ
刃物による攻撃が報告され、百貨店の警備員が刺され重体
●その後
容疑者が建物内に入り転落、「生命兆候なし」との情報が流れるが、詳細は捜査中
容疑者が転落し生死は不明 警察が専従チームを設置し監視カメラで真相解明へ
事件の拡大を受け、台北市警察局の幹部が現場に入り指揮を執るとともに、専従捜査チームを設置した。警察は、駅構内外および周辺地域の監視カメラ映像を精査し、容疑者の移動経路や接触対象を特定することで、事件の全容解明を進めている。
現場では一時、情報が極めて錯綜しており、「煙幕弾を連続して4発投擲した」とする説と、「1発のみを投げた」とする説が併存していた。警察は今後、現場に残された残骸の鑑識結果、監視カメラ映像、目撃者証言を相互に照合し、投擲数および投擲物の種類を確定させる方針だ。一部では、投擲物がM18煙幕弾であったとの指摘も出ているが、詳細については正式な鑑定結果を待つ必要があるとしている。
また、容疑者が最終的に建物内で「5階相当の高さから地面に転落した」との情報や、「すでに生命兆候がない」との説についても、検察および警察が法に基づく検視・捜査手続きを通じて確認する。
外部から見れば、今回の台北駅における「テロ攻撃」は、単なる局地的な突発事件にとどまらず、交通安全、商業施設における人流防護、さらには第一線で対応する警察・消防の即応体制の強靱性にまで関わる事案となっている。今後の捜査結果は、容疑者の動機、共犯の有無、公共空間の防護体制に脆弱性が存在するかどうかについて、社会がどのように受け止めるかを左右することになる。
賴清德総統が冷静な行動と避難への協力を呼びかけ 政府は全国規模で警戒を強化
賴清德総統も本件について声明を発表し、19日夕方に台北駅および台北メトロ中山駅で、暴徒による煙幕弾投擲と負傷者を伴う事件が相次いで発生したことに言及した。そのうえで、駅やその他の人が密集する場所にいる市民に対し、必ず冷静さを保ち、現場の警察・消防および駅係員の指示に従って避難行動を取るよう呼びかけた。
また、不審人物や不審物、異常な状況を発見した場合は、直ちに警察や関係機関に通報するよう求めるとともに、未確認情報を拡散しないよう社会全体に注意を促し、不要な混乱や恐慌を招かないことの重要性を強調した。
賴総統はさらに、警察および関係機関がすでに全国規模で警戒態勢を強化していることを明らかにし、政府として法に基づき凶行に及んだ暴徒を厳正に捜査し、速やかに事件の真相を解明すると表明した。その上で、公共の安全を脅かすいかなる行為についても「決して容赦しない」との姿勢を示し、国民の生命と交通の安全を全力で守る考えを強調した。