連合・芳野友子会長、2026春季生活闘争で「5%以上の賃上げ」継続を表明 労働時間規制緩和には反対を明言

連合の芳野友子会長は日本外国特派員協会での記者会見で、2026年春季生活闘争において3年連続で5%以上の賃上げを目指す方針を示すとともに、労働時間規制の緩和には断固反対する立場を明らかにした。(写真/FCCJ提供)
連合の芳野友子会長は日本外国特派員協会での記者会見で、2026年春季生活闘争において3年連続で5%以上の賃上げを目指す方針を示すとともに、労働時間規制の緩和には断固反対する立場を明らかにした。(写真/FCCJ提供)

日本労働組合総連合会(連合)の芳野友子会長は12日、日本外国特派員協会(FCCJ)で記者会見を行い、2026年春季生活闘争(春闘)に向けた考え方や、物価高、米国の関税政策、労働時間制度、政治情勢などについて見解を示した。

連合の芳野友子会長は日本外国特派員協会での記者会見で、2026年春季生活闘争において3年連続で5%以上の賃上げを目指す方針を示すとともに、労働時間規制の緩和には断固反対する立場を明らかにした。FCCJ
連合の芳野友子会長は日本外国特派員協会での記者会見で、2026年春季生活闘争において3年連続で5%以上の賃上げを目指す方針を示すとともに、労働時間規制の緩和には断固反対する立場を明らかにした。(写真/FCCJ提供)

芳野会長は冒頭、近年の物価上昇に言及し、食料品や年末年始の需要に関連する商品の価格上昇が続いている一方で、実質賃金は依然としてマイナス基調にあると指摘した。その上で、「物価が上がるなら賃金も上がらなければならない」と述べ、賃金と物価のバランスが崩れれば経済の縮小につながり、再び「失われた30年」に逆戻りするとの認識を示した。

2026年春闘については、3年連続で5%以上の賃上げを目指す方針を改めて表明した。企業規模間格差の是正に向けては、格差是正分1%以上を加えた6%、金額では1万8千円以上を目安とする考えを示したほか、雇用形態間格差については7%を目安に、少なくとも地域別で3%以上の賃上げを目標に掲げた。最低賃金の引き上げ率を上回る賃金引き上げを進め、実質賃金を年1%上昇軌道に乗せることを目指すとした。

中小企業の賃上げ環境については、価格転嫁の重要性を強調した。サプライチェーン全体で生み出された付加価値の適正配分、労務費を含めた適切な価格転嫁、適正取引の推進を訴え、地方版政労使会議が中小企業や地域の賃上げに有効であるとの認識を示した。

米国による関税引き上げの影響については、現時点では不透明としつつも、今後の業績評価や事業環境の認識合わせを通じて見えてくるとの見方を示した。その上で、影響が想定される状況にあっても、賃上げのモメンタムを後退させるべきではないと述べ、労使交渉を着実に進める考えを示した。

労働時間制度をめぐっては、政府が示した規制緩和を含む検討方針に対し、強い懸念を表明した。2017年に締結された時間外労働の上限規制に関する労使合意を「働き方改革の出発点」と位置づけ、長時間労働に依存した企業文化の是正や、過労死・過労自死ゼロの実現が依然として課題であると指摘した。規制緩和ではなく、規制強化こそが必要であり、連合としては労働時間規制の緩和に断固反対する立場で取り組むと明言した。

質疑応答では、中小企業の賃上げ支援、海外に進出する日本企業の賃金対応、政党との関係、選択的夫婦別姓制度、円安や金利上昇、強制的な転勤の問題など、多岐にわたる質問が寄せられた。芳野会長は、選択的夫婦別姓について「女性の人権に関わる問題」であり、国際的にも日本の制度が理解されにくい状況にあるとして、導入に向けた働きかけを継続する考えを示した。

また、転勤問題については、労働組合がある職場では本人同意を必要とする労使協定が存在する例がある一方、組合のない職場では業務命令として受け入れざるを得ない現状があると説明した。共働き世帯の増加など家族形態の変化を踏まえ、連合としても課題として検討していく必要があるとの認識を示した。

会見の最後に芳野会長は、働く時間だけでなく、自分や家族、社会のための時間とのバランスが取れた働き方の重要性を改めて強調し、「働く人の命と健康を守ること」を最優先に政策と運動の両面で取り組んでいくと述べ、会見を締めくくった。

編集:小田菜々香

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