TSMC米国投資は成功か 市民団体CCU代表が指摘する「半導体回帰の隠れたコスト」

12月17日、米国のアドボカシー団体「CHIPS Communities United(CCU)」のジュディス・バリッシュ氏が台北で公開講演し、米国が進める半導体製造回帰政策の現状と課題を検証した。(写真/王秋燕撮影)

米国政府が国家戦略として半導体製造の国内回帰を強力に推し進める中、TSMC(台湾積体電路製造)が最も象徴的な外資企業として注目を集めている。工場建設や先端プロセスの導入スピードは高い評価を受ける一方で、産業政策の「足元」が十分に整っているのかを問う声も出始めている。

米国の市民連合「CHIPS Communities United(CCU)」のエグゼクティブディレクター、ジュディス・バリッシュ氏(Judith Barish)は、台北で行った公開講演で、米国の半導体製造回帰政策を検証。巨額の補助金と超党派の政治的合意により、産業は歴史的な好機を迎えているとしつつも、「労働、環境、地域社会という構造的課題が同時に解決されなければ、過去のリスクが再び表面化する」と警告した。

バリッシュ氏は12月17日、台北外国人記者クラブとグリーンピースが共催した討論会「AI帝国の隠されたコスト(The Empire of AI’s Hidden Cost)」に登壇。AI産業の急成長がもたらす気候・環境負荷について議論が交わされる中、半導体産業の歴史的課題を俯瞰的に示した。CCUは、米国内の複数の労働組合、環境保護団体、アドボカシー団体で構成される連合体で、半導体産業の「持続可能性」と「公平性」を確保することを目的としている。安定した雇用条件の確立、環境保全、地域社会の参画を柱とし、「Avoid the mistakes of the past(過去の過ちを繰り返さない)」を中核理念に掲げる。バリッシュ氏は「今日、特定の企業を批判しているわけではない。長年にわたり産業全体に組み込まれてきた構造を問題にしている」と強調した。

講演では、TSMCがアリゾナ州フェニックスで進める大規模投資が、台湾の聴衆にとって分かりやすい事例として度々取り上げられた。ただし、バリッシュ氏は「課題は一社に限られない」とし、サムスン電子、インテル、グローバルファウンドリーズ、マイクロン、SKハイニックスなど、米国および多国籍半導体企業を名指し。問題は産業全体に広く存在すると指摘した。

1960〜90年代の繁栄と影 汚染が残した代償

米国半導体産業の歴史を振り返る中で、バリッシュ氏は、チップ技術が1940〜50年代に米国で誕生し、1960〜90年代に国内製造が最盛期を迎えたと説明。その一方で、同時期に深刻な社会的・環境的コストが積み上がったと述べた。

シリコンバレーは、米国の「スーパーファンド(有害廃棄物浄化制度)」指定地が最も集中する地域の一つであり、初期の半導体製造に伴う化学物質漏出や地下水汚染と深く結び付いている。生産現場では、労働者が有毒物質に長期曝露し、流産や死産、先天異常といった健康リスクが報告されてきた。

1990年代に入ると、労働者のストライキや地域住民による環境規制要求が強まり、一部企業は工場閉鎖を選択。生産拠点をアジアへ移転させた。バリッシュ氏は、これを「規制や労働権の要求に直面した際の、産業の典型的な対応だった」と位置付ける。

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