舞台裏》台湾・新竹市長の高虹安氏、汚職無罪を聞いた瞬間に漏れた二言 「高飛車」批判の渦中で抱えた1年の恐怖

2025-12-19 16:02
新竹市長の高虹安氏は汚職事件をめぐり停職処分となっていたが、二審で汚職部分は無罪とされた。高虹安氏は12月18日、新竹市政府に復職する。(写真/顏麟宇撮影)
新竹市長の高虹安氏は汚職事件をめぐり停職処分となっていたが、二審で汚職部分は無罪とされた。高虹安氏は12月18日、新竹市政府に復職する。(写真/顏麟宇撮影)

1年5か月に及ぶ司法手続きを経て、2025年12月16日、汚職事件で停職中だった台湾・高虹安新竹市長は、汚職部分について二審で無罪判決を受けた。残る偽造文書罪については懲役6か月、罰金への代替が認められている。判決から2日後、高氏は新竹市政府に復職。支持者や里長、市政府幹部に迎えられ、市庁舎ロビーに姿を現した。会場では高氏が好んで歌う楽曲「心花開」が流れ、司会者は「鴻(虹)図大展(大きく羽ばたくの意)」とスローガンを叫んだ。

復職セレモニーで高虹安氏は、この1年を「人生で強制的に一時停止を押されたような、あまりに長い時間だった」と振り返った。まるで一つの世代が過ぎ去ったかのようだったと述べ、「今は以前にも増して『責任』という言葉の重さを理解している」と語った。その後の取材では、台湾民衆党の創設者である柯文哲氏に向け、「何より心身の健康が大切だ」とエールを送った。かつて涙ながらに柯氏へ「新竹市長にはなりたくない」と訴えていた高氏は、この1年で何が変わったのか。

20251218-新竹市長高虹安(中)18日返回新竹市政府復職。(顏麟宇攝)
高虹安氏(中央)が市長職に復帰し、支持者に囲まれながら登庁した。民衆党創設者の柯文哲氏にも激励の言葉を送った。(写真/顏麟宇撮影)

涙の直訴から市長就任へ 激動の政治キャリア

関係者によると、柯文哲氏にとって高虹安氏は、黄国昌氏、黄珊珊氏(いずれも台湾民衆党の中核人物)と並ぶ「看板級」の存在だった。柯氏が高氏に新竹市長選への出馬を打診した際、高氏は涙を浮かべ「行きたくない」と拒んだという。これに対し柯氏は「自分の地盤だから心配するな」と説得したとされる。しかし選挙戦では、与党・民進党から激しい攻撃を受け、ネット上では「鼻の穴が大きい」などと揶揄される画像も拡散。高氏は4か月で体重が8キロ減少した。柯氏は後に、私的な場で「彼女には申し訳なかった」と漏らしていたという。

2024年3月、高虹安氏は『風傳媒』のインタビューで、市長選出馬を後悔しているかと問われ、「2022年当時の状況では、正直どうしようもなかった」と語っている。もともとは立法委員として新竹を責任区に持ち、地域サービスに専念していたが、「柯文哲氏に指名され、気づいたら市長選に出ていた」と率直に明かした。2026年の再選についても当時は、「新竹に来た時点で、市長になるつもりはなかった。ただ、目の前の仕事をきちんとやりたかっただけ」と述べている。

2024年7月、高虹安氏は秘書費(助理費)を巡る汚職事件で一審有罪判決を受け、法律に基づき市長職を停職。同時に台湾民衆党からの離党を表明した。その後、市民によるリコール運動も起こり、政治生命は一気に暗転する。しかし2025年7月、リコール投票では「不同意」が約12万票に達し、当選時の得票数(約9万票)を上回った。高氏は職を守り、同年12月16日には二審で汚職無罪が確定。18日から正式に新竹市長へ復帰した。

20221015-民眾黨主席柯文哲15日出席民眾黨新竹市長參選人高虹安「新竹找安,團結之夜」晚會。(顏麟宇攝)
柯文哲氏(左)が高虹安氏(右)に新竹市長選への出馬を要請した際、高虹安氏は涙ながらに「行きたくない」と訴えたという。(写真/顏麟宇撮影)

エリートの影 「傲慢」との批判も

復職当日の朝、市内の里長60人以上(全体の約3分の1)と、民衆党支持者「小草」(若年層中心の支持者の呼称)が市政府前に集まった。新竹内天后宮の董事長で、台湾眼鏡業界の重鎮でもある林振森氏も訪れ、高氏や局長らとあいさつを交わした。正午には大型商業施設「巨城(ビッグシティ)」で消防関連行事に出席。国民党所属の市議6人も姿を見せ、遠東グループ創業者・徐旭東氏の側近である巨城総経理の羅仕清氏も祝意を示した。市長室前には立法院長の韓国瑜氏から「善人一生平安」と書かれた花籠が届き、将来の市長候補とも目されていた国民党立法委員・鄭正鈐氏からは「満血回帰、引き続き奮闘を」との言葉が添えられた。

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