台北「通り魔」事件 なぜ犯人は放火し、無差別殺傷に及び、転落死したのか 精神科医が読み解く犯行心理

台北市で19日に発生した無差別傷人事件は全台湾の民衆を驚愕させた。写真はMRT中山駅前の大型横断歩道。(写真/顏麟宇撮影)
台北市で19日に発生した無差別傷人事件は全台湾の民衆を驚愕させた。写真はMRT中山駅前の大型横断歩道。(写真/顏麟宇撮影)

台北市で19日、台湾社会を震撼させる無差別殺傷事件が起きた。27歳の張文容疑者が台北メトロ台北駅で煙幕弾を投げ、中山駅近くの誠品百貨南西商圏で通行人を無差別に傷つけた後、建物から転落し、搬送先の病院で死亡が確認された。この事件では計4人が死亡し、6人が重軽傷を負った。これについて、日本を旅行中の精神科医・沈政男氏は20日、フェイスブックで「日本メディアも台北の無差別殺傷事件を報じている」とした上で、日本ではこの種の犯行者を「通り魔」と呼ぶと紹介し、容疑者には共通する特徴があると指摘した。鄭捷事件にも似た点があるという(鄭捷事件は2014年、台北メトロで起きた無差別殺傷事件)。

張文容疑者は兵役逃れに関わる容疑で指名手配されていた。事件が起きたのは金曜日で、台北駅と中山駅周辺は人出が多く、現場の様子を撮影した映像がネット上で拡散し、ショッキングな場面が広く共有された。張文容疑者の両親は北部で事情聴取を受けており、動機は検察・警察が捜査を進めている段階だ。沈氏は、日本で2008年に起きた秋葉原の「通り魔事件」と今回の台北の事件には共通点があり、それは同種の無差別殺傷事件に共通する特徴でもあると述べた。

沈氏が挙げたのは、若い男性による犯行、単独での実行、社会的孤立によって親族や知人との交流が乏しいこと、仕事が不安定なこと、被害者に特定の性別や年齢の偏りがないこと、の5点だ。さらに沈氏は、容疑者が転落して死亡しているため現時点で動機の特定は難しいとしつつ、一般にこうした事件では自らの境遇への不満と報復の傾向が見られると説明し、鄭捷事件も同様の特徴に当てはまるとした。一方で張文容疑者の特徴として、犯行前に複数の場所で放火し、借りていた住居まで焼いたこと、殺傷に及ぶ前に煙幕弾を使用したことを挙げ、社会に動揺を広げようとした可能性があるとみた。

沈氏は、メディアでは放火は警察の注意をそらすためだと伝えられているが、自分は「そもそも生きる意思がなく、大きくやってしまおうとしたのではないか」とみていると述べた。借家まで焼いた点からも、その可能性がうかがえるという。こうした犯行者には「世の中を憎む感情」と「生きることへの嫌悪」という二つの感情が同居しやすく、ひとつは自分が生きたくないという思い、もうひとつは社会への憎しみや報復心から、不特定多数に大規模な攻撃を向けることがあると説明した。沈氏は数年前に「鄭捷をもっと理解すべきだ」と述べたことがあるが、それは動機を理解してこそ予防の手がかりになる、という意味だとしている。

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編集:田中佳奈 

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